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田村亮 × 清水綋治 × 原知佐子 トークショー(実相寺昭雄展 ウルトラマンからオペラ『魔笛』まで)レポート(1)

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  2006年、実相寺昭雄が逝去。それから5年になる今年、川崎市民ミュージアムにて “実相寺昭雄展” が開催されている。 映画・テレビの監督、エッセイ・小説などの文筆、コンサート・オペラの演出、書画など実相寺の多彩すぎる仕事の足跡や蔵書、チラシ、ぬいぐるみといった趣味のコレクションが展示中。

 7月30日、実相寺昭雄展の行われる川崎市民ミュージアムにて監督映画『宵闇せまれば』(1969)、『無常』(1970)が上映され、出演者の田村亮、清水綋治、実相寺夫人の原知佐子の3人によるトークショーが行われた。 

 『宵闇せまれば』(1969)は実相寺監督がTBSの社員だった時期に撮った44分の短編。大島渚がテレビドラマのために書いた脚本を映画化した(DVD『青い沼の女』に収録)。 

 夕暮れどきに、退屈していた四人の大学生(三留由美子、斎藤憐、清水綋治、樋浦勉)。女子学生(三留)が言う。 

 

宵闇せまるときは嫌い。窓に夕陽が射すと、人が生きていることが、わびしくて頼りないことに思えてくるの。窓から飛び降りて死んでしまいたくなる」 

 

 ひとりの学生が誤ってガス栓を抜いてしまった。そのとき、男子学生のひとり(清水)が危険なゲームを提案する。偶然外れたガス管によって部屋に立ちこめるガスに、どれだけ耐えられるかの我慢比べをしようと…。  

 危険な状況で議論し合うのが、いかにも1970年前後の政治の季節を感じさせる。緊張感はあるし、密室で変なアングルから撮る実相寺演出が炸裂しているので面白い。

 『無常』は姉(司美智子)と弟(田村亮)の禁断の関係を軸に、旧家の陰惨な人間模様を描く。ラストに至って超現実的な展開になるのが印象的(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際の発言と異なる部分もございます)。 

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清水「『宵闇せまれば』から40(しじゅう)年ですよ。何ということでしょう(一同笑)」 

 「『宵闇』と『無常』には、私は出ていなくて、スタッフだったんです。車を運転したり、洗濯物を取りに行ったり(笑)」 

田村「(清水氏のマイクが妙な音を立てるので)あれ、ガス漏れ?(一同笑)」

 

【さまざまなエピソード】 

田村「実相寺監督とは『無常』(1970)が出会いだったんですが、最初にお会いした喫茶店では5分も話さないうちに、あっという間に帰っていかれました。だから自分でいいのかなって。

 撮影が始まっても、役者にあんまり説明しないんです。後々までそうでしたね。ただ『無常』のときだけは、役者に手本を見せるために、急に走り出すこともありました」 

「『無常』は若かったからね」  

 実相寺監督は、1967年に『ウルトラセブン』を撮っていたころ、一旦離脱して京都の時代劇『風』(1967)へ異動するように命じられた。清水氏との出会いはそのときであるという。 

 

清水「私はテレビの『風』っていう時代劇が(実相寺監督との)出会いでした。もう変な人で(一同笑)。なんかこう、よそ見しながら、役者を観察してるんです。うまい下手では見ていないで、ただ観察して突き放している。ほんとに仙人みたいに茫洋としてるんだけど、そんなふうに見えて俗っぽいところは俗っぽい。

 撮影現場では突然石ころで遊び始めたり、ほんと変な人でしたね(一同笑)。

 ワンシーンを撮るのに十日くらいかけたりする。息が長いというか」 

「肺活量があるって気がするね。文章でも一気に長い文を書く人でしたよ」 

清水「『曼荼羅』(1971)のとき、亮ちゃんといっしょに長い台詞を覚えたのに、後ろからしか撮らないんだ(笑)。そうかと思えば、顔のものすごいアップとか(一同笑)」 

田村「目のアップとかね。 

 『無常』(1970)のとき、石仏を削るシーンをやってて、いつまで経ってもカットがかからないんです。おかしいな、おれの芝居が悪いのかなと思ったら、カメラの横で監督が寝てて(一同笑)。こっちは思わず、ごほんと咳払い(笑)。

 『無常』で嵐山で撮るのに宿舎は滋賀で、通うのが大変で。撮影は夜遅くまでかかるので、きつかったですよ。このころの監督はコーヒーだけで、お酒飲まなかったから」 

「若いときはね。酒乱になるのが怖いからって言ってました。でも年とったら飲むようになって、現場は必ず5時に終わってお酒」 

田村「いいな~(一同笑)」 (つづく

 

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