私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

切通理作 インタビュー “クリエイティブな世界では和光の評判はおおむね高い。群れないけれど、力は発揮する卒業生がいたるところにいる”(2005)(1)

 映画・ドラマなど多彩な批評活動を行い、映画『青春夜話 Amazing Place』(2017)の脚本・監督や古書店・ネオ書房の運営などもしている批評家・切通理作。2005年7月に和光大学のサイトに掲載された切通氏のインタビューを以下に引用したい。

 

 切通さんは、和光高校、和光大学の卒業生。『怪獣使いと少年』(宝島社)、『宮崎駿の<世界>』(筑摩書房)をはじめ、若者文化や映画を中心とした批評家・文筆者として、沢山のご著書をお持ちですし、今は高校、大学で非常勤講師もして居られます。今回は卒業生として、また教師として、和光についていろ いろと体験談やご意見を伺いたいと思います。(聞き手:和光大学表現学部教授 小関和弘)

――今のお仕事について、まず少し聞かせてください。

 

切通:単行本をこの夏に仕上げなければ、といった感じです。学校がない時期はそれだけに集中したいのですが、レギュラーはともかく雑誌の仕事をつい請けてしまいます。取材の仕事などは最近物故される人も多いので、会える時にと思うと後回しにも出来ません。単行本の内容は、いまここで言ってしまって、もし出せないと恥ずかしいので、出てのお楽しみということで。和光の四年生でこの夏、卒論を書く学生とは「一緒にがんばろう」と言っています(笑)

 

――アニメや映画に強いだけじゃなく、社会批評的な発言もなさって居られますが、そうした広い関心はどうやって培っているんですか?

 

切通:作家の橋本治さんは現実がこれだけ厳しい時代、映画の娯楽には社会との接点など要らないと語っていますが、そう考えると、僕が社会との接点でものを語ってしまうのは己の未熟さでしょう。でも「過度期の言葉」として僕の文章も必要な人がいるかもしれないと言い聞かせています。

 

――そうした関心の広さや好奇心の強さは、小さい頃からなんでしょうね。

 

切通:映画でも漫画でもやくざや不良同士の抗争を描いたものやスポーツものには(一部の例外を除き)ほとんど関心が向きません。「勝手にやってください」と思ってしまいます。ファンタジイでも最初から全部別世界というものには入っていきにくい。どうしても社会との接点や、見たり読んだりしている自分の現実感を揺るがせたり亀裂を走らせるものに興味が向きます。きっと僕自身が「いつか退屈な日々が変わって欲しい」と思っているような怠け者だったからだと思います。

 

――高校生時代や大学時代、切通さん御自身、どんな学生だったか、その辺をちょっと詳しく聞かせていただけませんか。

 

切通:退屈な日々の中で「何か大きいことが起こらないかなあ」と思っていたのでしょう。でも今からすれば、その「退屈」を懐かしく思います。 

――学生時代、(幻の)同人誌「猫の結核」っていうのを出してましたよね?「ウルトラマン」の脚本家のひとり、市川森一さんに会いに行っちゃったり…。

 

切通:批評中心の同人誌でした。ただの文集では読み物として面白くないと思って特集やインタビュー、対談を入れたり。ある意味、今の原点となっています。創作同人誌を出しても知り合い以外はなかなか読んでもらえない時代でした。市川森一さんは子ども番組から大河ドラマまで、僕の世代が大人になるのと並行して活動場所を広げてきた作家さんで、誰でも知ってるドラマをたくさん手がけていました。何かの物事や作品をめぐっての話題の方がヘタなオリジナル創作より共通の関心を持ってもらえると思って出した雑誌です。僕はその姿勢のままプロになったようなものですが、実は創作の方が「当たると大きい」ということがわかっていまはちょっと後悔しています。

 

――学内広報紙(?)「ブンブン通信」なんていう壁新聞を出したりして、行動派っていう感じがありましたけど。つづく