私の中の見えない炎

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金子修介 × 佐伯日菜子 トークショー レポート・『毎日が夏休み』(1)

  中学生・スギナ(佐伯日菜子)は母(風吹ジュン)や再婚相手の成雪(佐野史郎)と暮らしている。真面目に学校に通うふりをしているが、実は登校拒否していた。しかし成雪も秘密で会社を退職しており、ふたりは自宅で何でも屋を開業する。

 大島弓子の原作を映画化した金子修介監督『毎日が夏休み』(1994)はコミカルで清冽な印象を残す佳品。金子監督としては代表作のひとつ『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)を発表する前年である。9月、金子監督と主演・佐伯日菜子氏とのトークが浅草にて行われた。当日は大ぶりの雨(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

金子「『毎日が夏休み』の初日も雨だったんですよ」

佐伯「そうですね。雨男と雨女ですね(笑)」

 

【企画とキャスティング】

 佐伯氏は劇中と同じTシャツで登場。

 

金子「ぼく、30年以上も映画監督をやってるんですけど、自分で企画を立てて実現したのは『1999年の夏休み』(1988)と『毎日が夏休み』の2本だけ」

佐伯「そうなんですか」

金子大島弓子さんの原作を読んで出版社に電話したんです。原作を誰も取っていないからということで、脚本を書いてサンダンス・カンパニーに出したら「上手く書けてますね」って」

佐伯「小学生みたいな誉められ方(笑)」

金子「日菜子ちゃんは原作にぴったりなんだけど、原作のお父さんは草刈正雄さんみたいにハンサム。だけど佐野史郎さんに。当時は冬彦さんで、変わった感じのお父さんでキャスティングしたらうまくいって、草刈さんには申しわけない(笑)」

佐伯「当時は演技経験がなくって、モデルの仕事をしていて、映画が好きだったけど自分が出ることになるとは」

金子「面接して、かわいいけど喋り方はどうかなみたいな。本番のときまでに直しといてくれみたいな話だったんだけど(笑)。撮影が始まって、これが日菜子ちゃんの味だって判るまで時間がかかった」

佐伯「味…いい言葉(笑)」

 

 戸田恵子は『それいけ!アンパンマン』(1988~)のアンパンマンの声で知られるが、三谷幸喜監督の映画『ラジオの時間』(1997)に顔出し出演する以前に『毎日が夏休み』で先生役を演じている。

 

金子戸田恵子さんは『中学生日記』(1973)とかに出演されてて、そのころから注目してたのと、あゆ朱美ってアイドルになってギターで唄ってました。すごく色気のある人だったですよ」

佐伯「覚えてます。まさかアンパンマンとは」

金子「戸田さんは『毎日が夏休み』が初出演だとよくおっしゃってますね。でもその前に『中学生日記』に出てたんですね」

【現場の想い出 (1)】

金子「日菜子ちゃんはどうしようかなって感じだった。3日目くらいに突然お芝居が上手くなった感じがした」

佐伯「場に慣れたんでしょうね」

金子「それから上手くいったと思ってたんだけど、日菜子ちゃんはぼくに叱られた記憶があると」

佐伯「叱られてばっかりでしたよ。佐野史郎さんがアドリブをすごく入れるじゃないですか。増えるわかめであやとりをするとか、突然なんで笑っちゃうんですよ。箸が転げてもおかしい年齢だったんで。そしたら「遊んでるんじゃないんだから!」って怒られました(笑)」

金子「フィルムが貴重だったから」

佐伯「そうそう、フィルムで撮ってるんですけれど「フィルムは高いんだよ!」って(笑)。16歳に言うのはどうかと思いますよ。いまは判ります」

金子「いまは(デジタル化)でいっぱい撮れる時代になったけど」

佐伯「でもフィルム独特の色合いってありますよね」(つづく