私の中の見えない炎

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金子修介 × 佐伯日菜子 トークショー レポート・『毎日が夏休み』(2)

【現場の想い出 (2)】

金子「(『毎日が夏休み』〈1994〉では)学校の廊下をバレエしながら走っていくシーンで、空中でくるっと一回転してスカートだけど見えない。超人のようで見事でした」

佐伯「あれは無茶ぶりで「バレエやってたんでしょ。踊ってみて」って」

金子「ぼくが言った?」

佐伯「「ちょっとスキップもしてみて、うんうん」。それで撮影が行われました」

金子「最初から予定してたわけじゃなかったんだ。その場で決めた…? 前からそうさせようと思ってたのなら、ちゃんと練習させるもんね」

佐伯「(笑)」

金子「すごい技術ですね。フレームの中で正確に一回転して」

佐伯「金子監督、お嬢さんもバレエやられてるんですよね」

金子「ああ、ほんの一瞬。ほんとに恐れ入りました。29年ぶりに」

 

 金子監督の『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001)での佐伯氏は、ロープウェイで怪獣バラゴンに襲われる。

 

佐伯「監督が緻密な絵コンテを描いてくださって、前日にご自分で寸劇まで。絵コンテを見ながら「これがバラゴンだから。バラゴンが来る。ロープウェイに乗っててうわあって言って」と」

【作品をめぐる現状】

 『毎日が夏休み』のソフトは廃盤で、見ることが難しい。

 

金子「自分が監督になり出したころは、ちょうどビデオがスタートしたころで、その前の世代の監督よりも映画を商品化するという思いがあったんだけど。それがこんなに見られなくなるとは思わなかったです。どうしたらいいんだろうと思います。

 (廃盤になった自作が)多いんですよ。上映できなくなったのも多くて『ガメラ』シリーズや『デスノート』(2006)はやれるんですけど、他のはなかなか。

 『毎日が夏休み』は(最初のソフトが)パイオニアLDCレーザーディスクつくる会社で、やがてLDCジェネオンになって、ジェネオンがユニバーサルになって。権利は移動していっています」

佐伯「『毎日が夏休み』はいまのほうが時代に合ってるなって思います。当時もいい話だと思ってんですけれど、最近はマンガ原作(の映画)も多いのでいままた上映してほしいです。国立映画アーカイブであって見たんですけど、会場の温度が2~3度上がった気がしました。みんな笑ってくれて。ひっそりと見に行ったんですけれど、気づいて話しかけてくださった人もいて。いい映画でデビューさせていただいてありがとうございます」

【ホラーについて】

 金子作品以外での佐伯氏は、テレビ『エコエコアザラク』(1997)や映画『らせん』(1998)などホラー的な役柄が多い。

 

金子「ちょっととまどいました」

佐伯「とまどい…(笑)」

金子「ホラークイーンを生んだつもりはないみたいな」

佐伯「私、中学校のころから伊藤潤二先生とか御茶漬海苔先生とか、ホラーのマンガは好きでした。その世界に入りたいとは思ってなかったですけど、非現実的な役はやりたいなと。デビュー時は「今後はどんな役をやってみたいですか」って訊かれるので、ほんとおこがましいですけど「妖精とか人間以外の役がいいです」って話をしたら、何故か『ねらわれた学園』(1997)の役をいただいて、それが円谷(円谷映像)さんとの出会いだったんですけれど。その後に『エコエコアザラク』をやってみませんかって言われて、それがよかったみたいでありがたく…」

 

 『ウルトラマンX』(2015)の第3話「夜を呼ぶ歌」では怪獣テレスドンを操る地底人役。

 

金子「それは見てないな(笑)」

佐伯「結構愉しく。田口清隆監督です」

金子「今度はホラーな役で何か。あんまりホラーは上手くないんだけど(笑)」

佐伯「自虐的ですね(笑)」