私の中の見えない炎

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山際永三 × 沖田駿一 × 白石雅彦 × 上野明雄 トークショー レポート・『ウルトラマンエース』(1)

 謎の異次元人ヤプールが超獣を操り、地球侵攻を開始した。勇敢な北斗星司(高峰圭二)と南夕子(星光子)は合体変身でウルトラマンエースに変身し、侵略に立ち向かう。

 今年で放送50周年を迎える『ウルトラマンエース』(1972)は、男女の変身や超獣といった凝った設定や東宝撮影所を使った大規模な特撮などユニークな趣向を持つ意欲作。7月に『エース』の山際永三監督、山中隊員役の沖田駿一、『「ウルトラマンA」の葛藤』(双葉社)の著者・白石雅彦の各氏によるトークが行われた(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

山際「50年も経ってしまってびっくりです。沖田さんとも久しぶりに会えて喜んでいます」

沖田「(笑)監督とはこないだ5月3日にも50周年記念でお会いして、監督はもう既に忘れてますけど(一同笑)」

【沖田氏のデビューと『エース』】

沖田「日活7期のニューフェイスで、高校3年で入りました。東京オリンピックの前の年、昭和38年ですね。当時は本名でした。未成年だったので母親といっしょに撮影所に行きました。『東京流れ者』(1966)でクラブのボーイ役でピアノを弾いたり。店が終わった後にピアノだけで、台詞を言わずに眼だけで松原智恵子に「愛してるよ」というのを表してくれと。顔が引きつっちゃって(笑)ぴくぴくしちゃって。何回やってもできなくて、カメラマンや(鈴木清順)監督に「表へ行って、水道で顔洗ってこい」なんて言われて、その間はスタッフにはみな待っててもらって。最後に監督に「犬のほうがもっと上手く笑うぞ」とか言われたのを覚えてます(笑)」

白石「キャバレーのシーンは真っ白なホリゾントで何もないですね。清順監督なんで不思議な効果ですけど。沖田さんの顔を見ても名前が違うんでぴんとこなくて」

沖田「日活時代は本名の吉田(吉田毅)だったんで。19歳だったかな。日活が路線を変えてポルノをやり出して、その前に辞めましたね。西さん(美川隊員役の西恵子)は私より後に辞めたと思います。東映東宝の本編とか、三船プロの本編やったり。結構いろんな作品をやらせてもらいました」

沖田「『エース』はマネージャーが決めて、こういう役だからいついつに衣装合わせに行ってくれと。(隊員服が飾られているが)隊員服やヘルメットや銃は(終了後に)みんな円谷に返しました。カラーの濃いめと薄い目とで2枚あったと思いますね」

白石「監督は第3話からの登板で、それ以前は『シルバー仮面』(1971)をやられてましたね」

山際「そうでしたか(一同笑)。最近は忘れっぽくて」

 

 『エース』の第1話は筧正典と満田かずほの共同監督。当初ヒロイン役だった関かおりが事故で急遽降板して、星光子に交代した。

 

沖田「(交代劇は)知らなくて、撮影に入ったときはもう星さんがやってましたね。しばらく経ってから関さんが当初は撮影してたと。怪我して急遽変わったと後で聞きました」

山際「筧さんのころに交代の話があって大変だったというのは、ちらっと思い出すけど、ぼく自身は関係なかったから。第3~4話からでしたから」

白石「山際監督は『シルバー仮面』で関さんと仕事もされてます」

山際「記憶にない…(笑)。もうじき80歳、いや90歳で」

白石「サバ読みましたね(一同笑)」

山際「最近は曜日を忘れてね、日曜日なのにごみを出して「そうかあしただ」って持って帰って(一同笑)」

白石「第1話は東宝の筧監督と円谷プロの満田監督ですが、満田さんはあまり…」

沖田「やってないですね。筧さんと山際さんが交代でした」

白石「第1話は昔のウルトラマンが出てくるので、筧さんは知らないから、橋本さん(橋本洋二プロデューサー)が満田さんに「お前、いっしょにやれ」ということでアドバイザー的に」

 

 小学館クリエイティブ社長などを務めた上野明雄氏も飛び入り発言。

 

上野「怪獣じゃなくて超獣が出てくるので、図鑑の上でどういう差をつけるか。最初がベロクロンかな。勝手に超獣にされても困るな(笑)。パワーアップするのが大変でした」

 

【『エース』序盤の想い出 (1)】

沖田「(第1話の脚本を見て)強烈なキャラクターで、もう少し強めに出したほうがいいかなと思って台詞もきつめに言ったり。そういうところは気をつけました。北斗との対比を出したかったんで」

白石「他の隊員はおっとり目ですね」

沖田「教育係的な感じですね。いきなりパン屋から来たもんだから(一同笑)」

白石「パン屋から来て飛行機を操縦するってすごいですね」

沖田「北斗は車を運転してたけど、無免許だったですから(一同笑)。撮影中に教習所に通ったっていう」

白石「二丁拳銃の使い手という」

沖田「相当練習しました。結構重かったんですけど、左右同時にくるくる。出番のないとき、撮影の合間に回して。それくらいかっこよくやらないと、ということで。走るシーンはとめるベルトがなくて銃がぐらぐらしちゃって走りにくくて。そのうちにヒモをつけて固定してもらってらくになりました。(発砲シーンでは)火花が出なかったり、音が出なかったり。二挺持ってるからどっちか出なくてもNGで、はるさん(はるき)って担当(装飾)の人に「はるさん、玉出ないよ!」ってしょっちゅう言ってましたね。握ってるバランスは悪くなかったですけど。(つづく