私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

山際永三 × 沖田駿一 × 白石雅彦 × 上野明雄 トークショー レポート・『ウルトラマンエース』(2)

【『エース』序盤の想い出 (2)】

山中「日活の映画からスタートしたもんで(『ウルトラマンエース』〈1972〉では)違和感はありましたね。ウルトラマン自体も見てなかったし。東京映画というところで撮ってて、TACの本部やタックアローのセットが組んであって他はロケーションでね」

白石「柿生で撮ってたとか。うちの近所です」

沖田「ああ、柿生は行きました。野原で民家がぽつんぽつんとあって」

白石「山際監督の第3話「燃えろ!超獣地獄」は柿生です。いまのよみうりランドのや柿生は畑や田んぼしかなかったです。撮影所があって、東映のの生スタジオ。そのあたりで東映仮面ライダーと円谷のウルトラマンを同時に撮ってた。

 山際監督は第3話が田口(田口成光)脚本、第4話(「3億年超獣出現!」)が市川(市川森一)脚本です」

山際「田口さんは円谷で修業を積んだ方で、子どもの持ってる残虐さとかを最初から描いててぼくはなかなかいいホンだと思いましたね。市川さんは手慣れていて(笑)江戸川乱步という感じで喜んでやりました」

白石「第4話では清水(清水綋治)さんのマンガ家がヤプールに乗り移られて美川隊員(西恵子)を軟禁して、他にも軟禁してたらしくて部屋にガイコツがある。腐っていくのを見ていたのかな(笑)。そういう演出の意図はさすがにないですよね」

山際「ありますよ! みんな「こんなのやって大丈夫ですかね」って言うから、いや江戸川乱步の少年探偵団でさんざんやってんだからいいんだって主張して。そういうだましのテクニックを使いました」

白石「きわどいシーンもありますね。緊縛というか縛られて」

山際「太ももが」

沖田「嬉しそうじゃないですか(一同笑)」

山際「沖田さんの出番は少なかったですね。3話は高峰(高峰圭二)さんと星(星光子)さんの回で、4話は美川隊員と佐野(佐野光洋)ちゃんがちょっと」

沖田「佐野ちゃんのアクションが下手でね(一同笑)。彼はデビュー作だから」

山際「ぼくが怒ったって佐野ちゃんはいまでも覚えてる。彼は運転もできなかった。大邸宅の前で車が停まって、吹替の人が降りる。佐野ちゃんがいないからぼくは「見てなきゃだめだ。どういう降り方したか、アップで撮るんだから見てろ」って怒った。いまでも彼は覚えてて、50年も経ったのに(笑)」

白石「TAC隊員はふたりも運転できない」

沖田「もう免許は持ってたし、バイク乗るシーンでも実際に乗ってます。美川隊員と隊長(瑳川哲朗)が免許を持ってたのかな。あとは無免許。

 星さんも初めてだったんじゃないですか」

白石「印象はいかがですか」

沖田「特に何とも思わないですね(一同笑)」

白石「新人が来たなと」

沖田スクリプターにはしごかれてたんじゃないですかね。ベテランのスクリプターがふたりいましたから。星さんとか佐野ちゃんとか、つながりだとかは注意されてたんじゃないですか」 

【中盤以降の『エース』(1)】

沖田山形勲さんがゲストで出た回(第14話「銀河に散った5つの星」)で、見た方は山中隊員の印象がよくなったみたいですね。いい人じゃんみたいな(笑)」

白石「第7話「超獣対怪獣対宇宙人」では山中隊員の婚約者(関かおり)がメトロン星人に乗っ取られる。前後編で前半の脚本は市川さん、後半(第8話「太陽の命 エースの命」)は上原(上原正三)さんです。前編は市川さんらしい大切な人を失うっていう市川さんが得意なテーマで、後編は上原さんが得意な復讐譚」

沖田「山中隊員の歯止めがきかなくなる」

白石「「たるんどる!」って台詞のニュアンスはいいですね」

沖田「台本にはそんなにしょっちゅう出てくる台詞じゃないんですね。そう何回も言ってない。後半は夕子がいなくなって、北斗と行動をともにするようになる」

白石「シリーズ前半は北斗と夕子(がメイン)で隊員たちは後ろに下がってるような作劇が多いです」 

山際「第9話「超獣十万匹奇襲計画」は写真家の話だね。市川さんと時代劇『千葉周作 剣道まっしぐら』(1970)を京都でやったときに江夏夕子さんが出てて、剣道の道場の娘でやんちゃな江戸っ子にぴったりだった。その調子でやってくださいってことで今度は雑誌のカメラマン。入っちゃいけないエリアまで入っちゃう」

山際「『帰ってきたウルトラマン』(1971)も『エース』も、宇宙の話でなく人間の話になってる。視聴率を気にする人たちは落ちた落ちたって騒ぐんですよ。ぼくらは落ちないほうがいいんですけど、落ちたっていいやってことで知らんぷりして「残念ですね」って言って(一同笑)。テレビでまだ監督が自由に言える、いまとなっては不思議な時代だったですね」

沖田「『エース』の視聴率はどうだったんですか」

白石「平均が20パーセントを切ってます。だんだん落ちていってテコ入れしています。『帰ってきた』には及んでない」

山際「何でかな(一同笑)」

白石「やることが多すぎた。子どもだったですけど、設定が複雑でどう愉しんでいいのかわからない。冒頭でつくり過ぎたというか」

山際「つくる側の人たちは努力したんですけど、ちょっと無理は多かったのかな。『ウルトラマンタロウ』(1973)は最初から(対象)年齢を下げようということで。ただ大人も見られるようにと言われてね、じゃあどうすりゃいいんですかと(笑)。そこを処理するのがぼくらの役目ですけど。いまは『タロウ』を評価する人もいるよね」(つづく