私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

中野昭慶 × 樋口真嗣 × 森遊机 トークショー レポート・『火の鳥』(1)

f:id:namerukarada:20220112051901j:plain

 生き血で永遠の命が得られるという火の鳥をめぐって、人びとは争っていた。クマソの国の少年ナギ(尾美としのり)は、ヒミコ(高峰三枝子)率いるヤマタイ国の軍勢に村を滅ぼされる。ナギは、村の人びとを殺した猿田彦若山富三郎)のもとで弓の修行を積むが、オロ(風吹ジュン)とヒミコの命を狙ったために猿田彦とともに追われてしまう。

 手塚治虫の代表作『火の鳥 黎明編』(秋田文庫)を映画化した、市川崑監督『火の鳥』(1978)。まだマンガの実写化が多くない時代に、よりによって古代を舞台にした作品を題材とする果敢なチャレンジ精神には驚かされる。火の鳥や「UFO」を踊る山犬などは、実写映像にアニメーションを合成。『犬神家の一族』(1976)など市川監督の金田一耕助シリーズがヒットしていた時期なので、そのキャストが大挙して出演しているのも愉しい。

 地上波やCSなどテレビ放送や配信はあったものの、公開から40年以上を経て2021年に初めてソフト化された。

 1月に池袋にてリバイバル上映が行われ特技監督を務めた中野昭慶、公開当時には中学生だった樋口真嗣、ブルーレイ化に尽力した森遊机復刊ドットコム)の各氏のトークもあった。中野監督は杖をつかれて登壇。樋口氏は急遽参加が決まったという(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

「私の悲願でしたが、遂に初ソフト化が実現いたしました。私は市川崑研究、手塚治虫研究の一環として『火の鳥』をDVDにしようということで東宝さんに交渉していたんですが、権利的に複雑な作品で12年もかかってしまいました。何とか形になって12月に出ました。樋口監督はご自分の『サンダーバードGOGO』(2022)の初日だというのに来ていただいて(一同笑)何という男気かと。

 特撮パートはものすごく手間がかかってるわりに当時の報道はあまりなくて、謎めいたところがありました。火の鳥は、手塚治虫さんは実写でやりたいと、鶴にクジャクの羽をつけるとおぼろげに考えていらっしゃったようですが鶴は演技ができない(笑)。結局アニメになりました」

中野「とにかく綺麗な映画を撮りたいと思ったんですよ。この当時、映画に色がついて歴史がなかった。これ以上綺麗な映画はないぞという思いで『火の鳥』に臨んだ。ぼくの頭の中では7~8種類の火の鳥をつくろう、目の部分や顔の部分や手足をそれぞれつくってうまく合成しようと。特撮じゃない火の鳥をやってみたいというか、つくりものじゃないような。もっとカラフルに、色で勝負しようと思った。イメージで言えば極楽鳥みたいなね。色で感動させる鳥を狙ってました」

 

【『火の鳥』の時代(1)】

樋口「当時『スター・ウォーズ』(1977)と『惑星大戦争』(1977)の次の東宝のラインアップがすごかったんですよ。『火の鳥』、ネッシー、「銀河帝国の興亡」、「続日本沈没」(笑)。中学生ながら東宝はすごい風呂敷を広げてきたなと。レイテ作戦とかもあったな」

「「UFOブルークリスマス」も。これは『ブルークリスマス』(1978)ですね。さっき車の中で中野監督に、このラインアップ全部に監督が関わってるんじゃないですかってお聞きしたら「そうです」っておっしゃって(笑) 」

樋口「このラインアップには来たなって感じがしました(笑)。ぼくらにとっての敵は『スター・ウォーズ』ですね。なんぼのもんじゃいみたいな。当時からずっとナショナリストだったので(笑)。クラスではまだそんなの(邦画)見てるのかみたいに言われて畜生、お前らぶっ殺すみたいな(一同笑)。

 『惑星大戦争』は企画の成り立ちすらも、早くつくれという東宝のやり方。後にぼくも昭慶さんと同じ目に遭っています。やたら早くつくらされる」

中野「早くつくらないかんということ。つくればつくるほど儲かるからね。「ネッシー」は3週間ぐらいでホンも仕上げて準備もして、ロケ地も詰めて。ネス湖も(3週間のうちに)何回行ったかな。日本って夢がないなと思った。ネス湖の周囲には各国の研究所があるんですね。しゃれた木造の建物で、各国の研究者がネッシーを待ってる。いっぱいあって、ないのは日本だけ」(つづく