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塚地武雅 トークショー レポート・『間宮兄弟』(1)

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 30を過ぎても仲よく同居して、何かとつるむ間宮兄弟佐々木蔵之介塚地武雅)。美しい先生(常盤貴子)や女子大生の姉妹(沢尻エリカ北川景子)が現れて、ふたりを翻弄する。

 『家族ゲーム』(1983)や『それから』(1985)、『失楽園』(1997)などの森田芳光監督が江國香織の同名小説を映画化した『間宮兄弟』(2006)。とぼけたコメディタッチで、ラストでは季節の過ぎ去ったもの悲しさを感じさせるあたり、森田監督のデビュー作『の・ようなもの』(1981)を連想させる。ガラケーやMDウォークマンレンタルショップなど2000年代前半の風俗もなつかしい。

 11月に池袋にて『間宮兄弟』のリバイバル上映が行われ、塚地武雅氏のトークショーもあった。聞き手はフリーアナウンサー笠井信輔氏が務める。

 客席でごらんになっていた塚地氏は「ここをこうこうこう。きょうはよろしくお願いします」と壇上に登場(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

【森田監督や現場の想い出 (1)】

塚地「むちゃくちゃいろんなこと思い出しましたね。ちょこっと出してもらう作品はあったんですけど、がっつり出たのは初めて。

 (会社側は)猛反対だったみたいですよ。どこの馬の骨か判らん、馬の骨ってほどシュっとしてない芸人(一同笑)をいきなりダブル主演のひとりにするのは。

 撮影は校庭で水撒きをするシーンからインだったんですよ。スタッフさんに聞いたら、初日は緊張するだろうから台詞のないシーンから慣らしていって、小学校の校務員になるためだったと。ぼくは新人ですし、蔵さんもこうなる(主演級になる)前。

 ぼったくりバーでだまされて怒るシーン。ぼくは、俳優はほぼほぼしたこともない段階やから、終わってからも怒りが収まらない。次のシーンでも「ああ!」ってなってた(一同笑)。いらいらしちゃって切り替えができなかったのを覚えてます。まだ怒ってるな、おれ。

 森田監督の中にある構図とかいろんなものって、監督の頭を割ってみないと判らない。着ぐるみを着ているシーンは、でき上がってみると何となくイメージ的にこのふたりはかわいらしい着ぐるみに近いキャラクターだみたいなのも判るじゃないですか。説明してくれないんですよ。行ったら着ぐるみ置いてあって「これ着て部屋の中ですわっててほしい」とか。台本にもないですよ。ぼくらも「これ、どういうことやろな?」」

 

 エンドクレジットの後で、塚地氏の頭にたらいが落っこちてくる。

 

塚地「たらいも撮影のときは、説明はなかったかな。「たらいが落ちてくるからリアクションしてください。気を失うくらい」と。後々に訊いたら、映画の世界から現実に戻すためみたいな。「さあ、この映画は終わりましたよ」ということを表現したかったと言ってました。

 モノポリーはほんとにやってます。そんとき喋ってるのも使ってる。エリカちゃんに関しては素やと思いますね。「え、何!?」「ちょっとこれ!」とか。このときは「別に」の前ですけど(一同笑)。個性が投影されたシーンですね。そんなのいっぱいあって、ゆみの彼氏の玉木役(横田鉄平)は家に来たのがいちばん最初やったかな。彼が紹介されたときの「どうも」「こんちは」みたいなのは、ほんとに素でわれわれに言ってるんですよ(一同笑)。お芝居じゃない。森田監督がなんかのファッション誌を見てて、街中のおしゃれな人をスナップショットで並べている中にいた子を玉木にしたいと。素人でモデルですらないわけですよ。

 ささやくシーンは距離が近いから自然にああなったのか」

笠井「『家族ゲーム』の宮川一朗太さんに訊いたら、松田優作さんはこんなに近くで喋ってるのに声が全然聞こえなかったと。え何言ってるの? 何言ってるの?というのが芝居になってると言ってた」

塚地「距離感で言えば喫茶店でさおり(戸田菜穂)に会うシーンは、最初はテーブル挟んで喋ってるんですよ。そのうち寄りになったらテーブルはけてて、何にも置かないで話してる。画面としてはすごく近いけど、あまり違和感はない。こんだけ心の距離が近づいてる、ということでああなさった」(つづく

 

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