【森田監督や現場の想い出 (2)】
『間宮兄弟』（2006）では間宮兄弟が客たちにカレーを振る舞う。
塚地「カレーは、われわれがつくったわけではないですけどおいしかったです。当時は貧乏芸人で金融会社に借金もあるような人間だったので、家に出てくるカレーしか知らなかったですよ。何なんだ、この味は！ タッパに詰めて持って帰ってましたね。みんなおいしがって、消えもののカレーに行列ができてた。
基本的にアフレコが多かったです。最後の自転車でクイズ出し合うシーンとか。（ベッドで寝ながらの）反省会のシーンは東映の一室でアフレコしてたんですが、雰囲気を出すために録音の部屋に布団しいて、そのシーンを思い浮かべて。矢継ぎ早に回想が入るので「兄ちゃんはどうすんの」とか。自転車のシーンは部屋に自転車を持ち込んだと思います。漕ぎながらふたりで話して録音（笑）。気持ちを入りやすくする配慮かなと思いますね」
【共演者について (1)】
塚地「（共演者たちは）怖くてしょうがなかったですよ。場違いというか。われわれは板の上でねたつくってライブする感じやから、会う女性は北陽さんとかオアシズとかいわゆる女芸人なわけですよ（一同笑）。その人たちには緊張せず喋れるけど、いきなり飛び込んだ場所に綺麗な方々がいて。でも当時は、北川景子ちゃんはまだ新人で意気投合して「こわない？」「めっちゃ怖いです」みたいな。「頑張るしかないな」って同志みたいな感じ。とはいえぼくのほうがメディアには出てたから、準備の仕方とか話してたらあれよあれよと彼女はトップに（一同笑）。この後に『ハンサム スーツ』（2008）っていうのもいっしょやったんすよ。そこでも恋人的な役回りやったから、2本連続ってこれ絶対のちに結婚するやつやん（一同笑）。思ってたんですけど全然…いじられて終わりですよ。ひざかっくんとかされた、転んでるのを見て「あっはっは」て」
塚地「玉木役の彼はRIP SLYMEのスタイリストになって、いまは星野源とかOKAMOTO'Sのスタイリストになっててサクセスストーリーですよ。パリ行ってるくらいで映画（劇中の出来事）と同じようになって侮れんな！ こないだNHKの『Switch』ってハマ・オカモトくんとの対談番組に行ったらいるんですよ。「塚地さーん」って（笑）。
初日に顔合わせて本読みするというときに、蔵（佐々木蔵之介）さんが全然来ないんですよ。1時間半くらい遅刻して、別の場所だと思ってそこでスタンバってた。遅れて「すいません」から始まってるから、いきなりいいラインから行けた（一同笑）。あれがなかったら、おれずっと下のまんまやった。森田（森田芳光）監督のやりたいことやユーモアみたいなのは（映画の）話の流れを無視してでも入ってきて、着ぐるみとか兄が大きな歩幅で歩くとか、ぼくは何となく判るけど俳優さんは意味を求める。蔵さんは「何で大きな幅なんですか」とか。監督は「それが兄なんです」みたいなアバウトな説明（一同笑）。おれはコントの人間だからなのか納得できるけど、蔵さんは「判らん」「判らん」と。初日の本読みの後で「塚地くん、ちょっと飯行かないか」って。「判らん」「苦戦するかもしれん…」って（笑）。ぼくはこうなんじゃないですかって言う、その立ち位置が間宮兄弟っぽいんですよ」
佐々木蔵之介氏のビデオメッセージも上映された。
佐々木「私にとって『間宮兄弟』は自分の映画人生においての原点であり、宝物です。塚っちゃんとどうしたら監督が喜んでくださるか、笑ってくださるかをいつも話していました。監督は現場でよく演出の発明をされるんです。「こうなんだよ」って言われて。塚っちゃんがぼったくりバーから帰ってきてぼくがなだめて塩むすびを握ってあげるというときに、相撲の稽古のようにぶつかっていくという演出で、それが最初は判らなかったですけど（一同笑）。でき上がって見たらダイナミックでなるほどね、これが兄弟の関係性なんだと後から判りました。
静岡ロケに行って、あしたはお母さん役の中島みゆきさんに会うっていうときに居酒屋で飲んでたら「地上の星」が流れてきて、気分良くなってそのままウミガメの産卵を塚っちゃんと見に行ったり（一同笑）。
森田組で教わったのはおもてなしでした。間宮兄弟はカレーでみんなをもてなす。森田組でもおもてなしをしていただき、心にしみて宝物だなという気持ちです。塚っちゃん、劇場にいらっしゃるみなさまを引きつづきトークでおもてなししてください。佐々木蔵之介でした」（つづく）
