——堀北さんは、初の悪女役でしたが悪女についてはどう思われますか?
堀北 自分のレベルがどこかじゃなくて、自分が誰かに勝っていたいという気持ちは女性なら誰にでもあるんじゃないかなって思います。
雪穂はその思いが特に強くて、誰よりも上に行きたい、上に行くためには小さなことから始めようって思ったのでは?
雪穂の心理は、それを口に出してしまったら自分が悪女と言われるから言えないけれど、女性ならわかる部分が多いんじゃないかなって思います。
——高良さんはインタビューで “人を騙すのは嫌い” とおっしゃっていますが、役者という仕事はある意味では、人を騙しているのでは?
高良 確かに騙しているとは思うけど、芝居をしている上ではなるべく嘘はつきたくないって思っています。もちろん芝居はフィクションだし、自分が思っていることとは違うセリフを言わなくてはいけないこともあるけれど、なるべく気持ちで嘘をつきたくないって思っているんです。
しかし、今回演じた亮司は自分さえも騙している気がしました。それだけ自分が役に入り込んでいる感じなんです。だから『白夜行』の撮影でそういう思いはなかったです。
——実際、撮影現場でご一緒する機会は少なかったと思いますが、完成した映像を見てお互いに持たれた印象を教えてください。
堀北 現場ではご一緒している時間があまりなかったんですけれど、周りの人から辛い思いをされているみたいって聞いていたので大丈夫かな…って思っていました。
亮司と雪穂が同じ闇を抱えているように、私が抱えている辛いことは高良くんも辛いんじゃないかなって思っていました。そこを励ましあえないのが辛かったですね。
出来上がった映像を見て、亮司が本当に心から苦しんだものはスクリーンから出てきていたし、亮司が持っている闇や苦しみは、お客様にも伝わると思いました。苦しみの迫力は本当にすごかったと思います。
高良 そうですね…でも堀北真希さんでしかないんですよ。
もちろん、芝居上では徹底した雪穂だったし、ラストシーンでまっすぐ前を見て歩いていくシーンなんか悲しかったけど、どこか嬉しい気持ちもありました。
——実際に演じられて大変だったシーンを完成された映像でご覧になった時の感想を聞かせてください
堀北 ラストシーンは(深川栄洋)監督と何度も話して「やってみないとわからないよね」って結論になったんです。これと決めずに撮ったんですが、撮影自体も最後の方だったので、それまで雪穂を演じて蓄積してきたものを、その時の瞬発力というか、集中力を出せた貴重なシーンになったと自分では思っています。
きっと今同じことをやってみてって言われても、どこから役に入り込んで良いのかもわからないですし、あの時にしか撮れなかったシーンだと思っています。
高良 監督から「ここは亮司の感情を見せないから」って言われたシーンがいくつかあったんです。演じていてだんだん感情が出てくるとパッとカットがかかる。なぜカットなんだろう?って思うと、「このシーンでは亮司を見せないから」って言われたんです。亮司の感じをつかめそうな瞬間にカットがかかるんです。個人的にはもっと先があるだろうから、その先を見たいなって思うこともあったけれど、完成した映像を観るとそれで映画は成り立っているので、面白かったです。船越(船越英一郎)さんとのラストシーンも本当によく見ないと亮司の表情は分からないんです。寄りでも撮っているんだけれど、引きで撮ったものが使われてる。もちろん寄りで撮るから、引きで撮るからってぼくがやることは変わらないんですけれどね。
映画『白夜行』はテレビ版に比して、印象は強くないのだが、力作であったとは思う。
以上 “シネトレ” より引用。