私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

寺脇研 ブログ “人生タノシミスト”(2008)(5)

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 2008/7/29 『崖の上のポニョ』と世代を超えた友人 

 『崖の上のポニョ』、もうご覧になりましたか?宮崎アニメ本来の温かい空気がいっぱいで、心和む作品です。食べることや眠ることの快感が伝わってくるような生活感が、また魅力的ですね。それより何より、全体に通う「共生」の思想がすばらしい。主人公の五歳児・宗介くんが暮らす現実世界と、ポニョが生まれた海の世界。全く異なる価値観や文化を持つ両者が、みごとに共生していきます。同時に、五歳児と老人たちとの世代を越えた友情にも心うたれます。

 わたしには、小学生から八十代の方まで数多くの友人がいて、しょっちゅういろんな友達と飲み会です(もちろん成人の場合)。わたしにとって話していて楽しい相手は、できるだけ自分と違った立場や価値観の人です。したがって友人も、自分よりうんと年上だったり年下だったりが多くなります。

 職場、わたしにとっては文部科学省でできた友人も、同年代よりも、若い同僚の方が圧倒的に多い。部下だったり後輩だったりするわけですが、わたしが勤めを辞めて一個人になれば、友人ということになります。辞めて1年と9ヶ月になるのに、今でも、そうした職場時代の友人たちが声をかけてくれます。今週は3回も、彼らとの楽しい宴席がありました。平均すれば週に1回以上はこういうことがあります。

 職場を離れても付き合いが続くというのは、とても有り難いことです。仕事だけのつながりでなく、友人としてのつながりがあったということですから。若い友人たちから、結婚や出産、育児の話を聞くのは、うれしいものです。それらは、わたしには今さら体験できない。でも、話を聞いていると自分もそこに立ち会っている気になります。

 職場を、単なる仕事の場と割り切るのも悪いことではありません。しかし、そこで人と出会い、友人としてのつながりを作れるとすれば、自分の人生も豊かになるというものです。そうした友達は、わたしの大きな財産だと思っています。 

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 2008/12/2 劇団 燐光群『戦争と市民』

 今週も芝居を観ました。

 今度は、坂手洋二率いる劇団「燐光群」の新作「戦争と市民」です。この劇団の作品も、可能な限り観に行くことにしています。坂手さんの作品には、平田オリザさん同様、現在の世界を描こうとする強い意思が感じられます。もちろん作風は平田さんとは違うので、また別のトーンのお芝居を観る楽しみがあります。

 「戦争と市民」というタイトル通り、第二次世界大戦のときに空襲を受けた経験を持ち、今もその町に住む初老の人々を中心に据え、戦争の記憶をきちんと語り継ぐことをテーマにしています。ただ、それだけではなく、捕鯨を伝統産業として守っている町と捕鯨反対団体やIWC国際捕鯨委員会との関係、周辺と合併した市の再開発と市長選挙といった現在の現実を感じさせる要素もちゃんと入っていて、現在のわれわれの生き方についても考えさせてくれます。

 また、「北の国」から実験だか攻撃だかわからない不気味な形でこの町にミサイルが撃ち込まれます。この問題は、わたしが最近、姜尚中東大教授と対談をした本「憲法ってこういうものだったのか!」(ユビキタ・スタジオ刊)で、憲法9条の問題を議論した部分で論じられていることです。日本は、自衛行動しか行えない国ですから、ミサイルが飛んできて、しかもそれが攻撃だという場合にだけ、迎撃することが可能です。平和憲法を持つというのはそういうことであり、われわれは自衛行動しかとらないのであって、他国のミサイル基地が危険だからといって先制攻撃をすることはできないのです。

 そのことを、この芝居は改めて認識させてくれます。ヒロインを演じるのは、大ベテラン女優の渡辺美佐子さん。彼女自身、東京大空襲に遭った体験を持つというだけあって、戦争や空襲の恐ろしさを切実に表現してくれます。

 この芝居は、12月7日まで東京下北沢の下北沢ザ・スズナリで上演された後、仙台、盛岡、名古屋、福岡、伊丹でも公演があります。お近くの方は、ぜひ観て、考えてほしいと思います。 

 2008/12/30 2008年を振り返って

 わたしにとって、怒濤のように過ぎた2008年が終わります。

 なにしろ、観た映画の本数だけでも325本。これは、わたしの人生での最高記録です。よく、学生時代に映画を300本とか400本、どうかすると500本観たなんていう人は少なくありませんから、325本という数自体はそれほどでもないでしょう。実はわたしは学生時代はそんなに多くの映画を観ていません。高校時代が年150本くらい、大学だと120本くらいでしょう。映画ばかり観るのでなく、本を読まなければならないと思っていたからです。

 今年の325本は、それが56歳の中年男の記録だから「事件」なのでしょう。観劇の機会も、今年は例年になく多数で、本も、学生時代ほどではないにしろたくさん読みました。56歳にして、ずいぶん「充電」できたことになります。08年のわたしの映画ベストテンは、次回年頭のコラムでご紹介しましょう。

 自分が「充電」しておかないと大学で教えている学生をはじめ、若い人たちに何かを訴えることができません。毎年同じ講義を繰り返している先生なんて、わたしには到底信じられません。自分自身がつまらなくなってしまわないのでしょうか。

 …というので、来年もまたいろいろな新しい刺激を得て、そこから考えたことを皆さんにお伝えしていきたいと思います。

 このコラムのタイトルは、ブログを主宰するフリーター協会の若い人がつけてくれたものです。人生タノシミストとは、人生を楽しんで生きる人のことをイメージしているのでしょう。そのイメージに反しないように、新たな楽しみを見つけていきたいと思っています。

 今年一年、このコラムを読んでいただいてありがとうございます。よいお年を。

 以上、ブログ “人生タノシミスト”より引用。 

 

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