【本編の撮影現場】
仁科貴氏は金子修介監督『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)にも出演していた。
仁科「最初はガメラ1のエキストラ。ギャオスがALTAの上空にいて「何あれ」っていう。そこにいます。24歳だったですね。お会いしたのは2年後で、姉の交遊の中に金子さんがいて。大学に行かずにバイトして(笑)カラオケボックスでみんなで会うときに金子さんにお会いして、ガメラをこれからつくると話していて。
父が役者をやってたんですが(一同笑)舞台をやったときに金子さんの奥さまもお出になってて。
『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999)ではイリスの繭まで中山忍さんを案内する隊員役です。GMK(『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』〈2001〉)では金子さんからお話をいただいて、いい役でびっくりしました」
品田「喋り方とか、にじみ出るものがお父さんに似てますね」
仁科「親父が仁科家に婿養子に入っていて、旧姓が川谷なんですよ。
(金子監督は)結構好きにやらせてくださいました。たまにここはこうしてって明確な指示がありましたけど」
仁科氏の上司役は、ゴジラファンとしても知られる佐野史郎氏。佐野氏は『ゴジラ2000ミレニアム』(1999)につづく出演。
品田「佐野さんなんかは、ほんとに自由に(笑)」
仁科「佐野さんは『三大怪獣地球最大の決戦』(1964)のDVD持ってきて、他の出演者に見せつける。「ここはこう!」って。新山(新山千春)さんは「ああ…」(一同笑)」
品田「ありがた迷惑(笑)。佐野さんは冷静沈着な役が多いのに『ミレニアム』では明らかにテンション高いですね」
仁科「かつらもご自分で。
ゴジラはロバート・デ・ニーロより有名で、その人と共演する感覚ですね。劇中で(ゴジラに)会ってないんですけど、ものすごいプレッシャー感じながらやってました。新山さんも女優さんってイメージはこのあたりからですね」
長谷川「新山さんに関しては脚本のイメージに合わせてて。脚本では男勝りで、難関を乗り切る。はねっかえりなイメージ。それを一生懸命演じてますね。(本人は)お嬢さまっぽい」
仁科「竜童(宇崎竜童)さんとはお会いしてない印象なんですが」
長谷川「もうひとりの武田(小林正寛)がライバルかな」
仁科「ふたりとも(ヒロインに)相手にされてないのに、意識してると」
品田「ヒロインは微塵もそんなのなさそう。武田が現場担当で、天本(天本英世)さんとかにも接触して。スタジオ担当が仁科さん(笑)」
長谷川「武田は現場でいろいろ。仁科さんは佐野さんと(笑)」
富士の樹海で、新山氏や仁科氏が謎の牙を目撃するシーンがある。意味がよく判らなかったのだが…。
品田「富士の樹海で金色の牙が3本というのは、アンギラスの設定がそのまま残ってる」
仁科「ぼくは現場で何だろうと思って見てました」
品田「あれはアンギラスのとげだと。
金子監督はわりととぼけてて、喋ると「えっ」ていうことを言われるけど、的を射ている。表情に出ない。樋口(樋口真嗣)監督は大笑いするトリックスターで、金子監督は熟慮タイプ。こうでなきゃいけないというのがあって的確です。
バラゴンの声はほんとは違う。アフレコのときに金子監督が「ネロンガの声だよ」って。いやもともとバラゴンの声なんだけど。いやもともとバラゴンの声なんだけど。それで新しくつくった。ご自分の中で醸造した怪獣観があって手強い」
【特撮のエピソード (1)】
品田「ゴジラに関しては、白目とか好きにやらせてもらいました。ゴジラについてはリベラルで自由。監督が決めていい感じもありました。
『ゴジラvsビオランテ』(1989)は川北(川北紘一)さんで一本化。川北さんがセルフでガイドラインをつくって、多少の違いはあってもぶれない。若狭(若狭新一)さんになってからは、若狭さんが自由に。
最初は本編も特撮も金子監督の予定で。神谷さんが入ったら「何でゴジラこんなに大きいの?」って。大変で現場でみんな苦労して。不評でした。撮影の最初ではモスラつくってて、その足で現場行って。重いので切れて、そのせいで撮影できなくなって「即刻来てください」と。神谷さん現場で矢面に立たされて。ごめん、大きくしたのは私です。
人間は踏ん張ると直立する。『怪獣総進撃』(1968)のゴロザウルスは直立してた。『キングコングの逆襲』(1967)では吊ってたから自然だけど『総進撃』では吊ってない。GMKでは前傾で耐えきれない重さになってて。
背びれがモーターで動いてるんですけど、画面上はほとんど判らない。金子監督から神谷監督に代わったので、演出プランに入ってない。
上まぶたと下まぶたが同時に動く。ここに骨がないのにこだわって、上下で動くようにしています」
前半に足のみ登場する場面は期待をあおる。
品田「民宿を踏みつぶす足は84ゴジラ(『ゴジラ』〈1984〉)。由緒ある足です。もとは『怪獣大戦争』(1965)。でかい足で藁葺き屋根をつぶす。それを改造して84年に使って、さらにGMKで。
ブルドーザーは『キングコング対ゴジラ』(1962)の埋没作戦とか『妖星ゴラス』(1961)でも使われてて。川北さん物持ちよくて、自分のものを持ってくる。『グランセイザー』(2003)のときはなめものを家から持ってきて、終わると持って帰る」(つづく)