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金子修介 × 大森一樹 × 富山省吾 トークショー “怪獣からKAIJUへ” レポート(3)

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【富山省吾プロデューサー (2)】

富山「ハリウッドの生み出した怪獣が天才ギーガー(H・R・ギーガー)の『エイリアン』(1979)。そのギーガーを映画界に招いたのがホドロフスキーアレハンドロ・ホドロフスキー)の「DUNE」(未映像化)だったと聞いてびっくりしました。ホドロフスキーとギーガーがやったら、どれほどすごかっただろう。ぼくらの頭の中で見るしかない。

 ふたつ目は日本人の手先の器用さ。寿司や盆栽、テクノロジーならソニーウォークマンSDガンダムゆるキャラ。共通のキーワードはデフォルメ。日本人の器用さでデフォルメするという、スーパーデフォルメの感性と技術。

 3つ目は特撮。1954年に着ぐるみとミニチュアセットによる撮影を行った。これが円谷(円谷英二)さんの発明です。レジェンダリー版はCGゴジラで6000万人が見た。それでも着ぐるみを、という声は根強い。ぼくの見方からするとCGは熱量、質量がない。着ぐるみは皮膚感、体感がある。作りもの感を消し去るのが見立てです。宝塚の女役だったり、歌舞伎だったり、この見立ての手法を併せ持つことで着ぐるみの臨場感が生まれる。

 4つ目は1954年の『ゴジラ』をアメリカが買ったこと。映画をビジネスと考えると、アメリカと手を組むことがどれだけ重要か。『バイオハザード』(2002)はうまくいって、『ドラゴンボール』は実写化(『DRAGONBALL EVOLUTION』〈2009〉)が失敗して(一同笑)アニメが行こうとしている。アメリカを通して世界に走り出して、うまくいった例はあまりない。

 人形は顔が命っていうけど怪獣も顔かな。『パシフィック・リム』(2013)は正面から顔を撮ってほしかった。

 『シン・ゴジラ』(2016)は去年の年末にストーリーを読んで意見を言えって言われて、すごく意見を言ったんですが(笑)。リセットして新しいゴジラ世界が始まるそうで、日本のよさがどれだけ世界に受け入れられるか。アメリカ人プロデューサーが日本人監督をフィーチャーするか。

 東宝のプールはなくなったけどマレーシアに巨大なプールがあるんで、特撮はあそこで撮ればいいんですよ」

 

【パネルトーク

 10月にKADOKAWAガメラ50周年の記念映像を公開した。

 

金子ガメラの(新しい)映像には問題があってガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999)の世界観を踏襲しているかのように見える。大映からガメラを引き継いだKADOKAWAがつくるのは問題ないけど、監督が著作隣接権を持ってる。本来はストーリーの代表者たる私の許諾の必要がある。解決する唯一の方法は、私に新しい作品の監督を依頼するという(一同笑)。そうやって会社と監督は助け合う」

大森「金子さんはぼくのガメラゴジラみたいに言うけど、ゴジラはみんながつくっていて、権利は誰にあるかはよく判らない。田中友幸さん(プロデューサー)かな」

 

 井上伸一郎氏が、大森・金子両監督の作品で以前の怪獣映画に比べて女性が活躍している点について質問した。

 

大森ゴジラは1本目を除けばファミリーピクチャー。それが大事じゃないかな。だから(庵野秀明・樋口真嗣監督の)次のゴジラは期待できない。あのふたりがやって、ファミリーピクチャーになるわけない(一同笑)。お父さんと子どもが見て、あわよくばお母さんも見る。それを狙って女性キャラが出てきたんじゃないかな。ファミリーだって意識は田中さんにあり、東宝にもあった」

富山庵野・樋口コンビだから相当ダークなワールドになっていくでしょうね。田中友幸は、ゴジラは怖いけどかわいいものだと。それがファミリーピクチャーを表してますね」

井上(ファミリー人気の高い)モスラはmotherのアナグラムですね」

富山女性の象徴でもあり、ゴジラの唯一勝てない怪獣がモスラです」

金子「ぼくがガメラを私物化したような…そういうことは思っていない。監督の作家意識というか。美しい人を選んでしなやかに撮りたいという、それだけ(一同笑)。

 理屈を組み立てていて、怪獣と少女は少年の夢。怪獣が巨大であるからこそ少女が生きる。エロティシズムはあるけど接合できない。

 怪人になるとエロティシズムがすごくなってきて(『ガメラ3 』の)イリスはエロティックですらある。前田愛には、ボタンを外すシーンがはずかしいと、いまだに言われる。なぜ外せないか、判りきったことだけど。巨大怪獣と少女には健全なエロティシズムがある(一同笑)」

大森「ファミリーピクチャーにエロはいらない(一同笑)」

金子「エロティシズムを、お母さんに判らないように入れる。私の得意技です(一同笑)」

 大森監督の最新作『ベトナムの風に吹かれて』(2015)は松坂慶子主演。

 

大森「久々に松坂さんといっしょにやって、映画はスターだなってつくづく思いました。海外ロケで付き人もなくやってて、そういう意識はなかったけど、できてみるとスターだなと。松坂さんとゴジラをいっしょにしちゃいけないけど、ゴジラもスターだな。CGで本当らしくしなくても、着ぐるみで箱庭の中でやっていてよくできてるのが怪獣映画。

 この間、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)には感動して、ゴジラもああいうふうにできないかな。監督のジョージ・ミラーは70。私もあと7年、70でまたゴジラやりたい(拍手)」

金子アメリカ映画の物量に対抗するには、金の投入の問題ではない。だから怪獣の意味を考えたほうがいいですね」

富山ゴジラブラックホールで、少女も入るし戦争も入る。国家、人種、宗教を超えてゴジラが世界をつなぐ。がんばってほしいですね。そのためにはこの本(自著『ゴジラのマネジメント』〈KADOKAWA〉)を読まないと(一同笑)」