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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

片渕須直監督 トークショー レポート・『この世界の片隅に』

映画

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 昨年11月に公開され、大きな反響を呼んでいるアニメーション映画『この世界の片隅に』(2016)。筆者は既に原作を読み、2011年に放送された実写ドラマ版も見ていたゆえ筋も設定も概ね頭に入っていると高をくくっていたのだが、実際に見てみて映画版の表現力に瞠目した。

 片渕須直監督の舞台挨拶やトークショーに行きたいと思っていたのだけれどもタイミングが合わず、3月に池袋にてようやく聴講することができた。片渕監督は7月までトークの予定が入っているという。聞き手は『宮崎駿全書』(フィルムアート社)などの著書のある叶精二氏が務めており、アニメの技術的な話が中心となった(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 片渕と申します。よろしくお願いします。

 アニメアワードのディレクターの竹内孝次さん。昔ぼくが『名探偵ホームズ』(1984)でシナリオを書いたとき、竹内さんが制作進行でした。

 アニメーションブートキャンプという、学生さんを山へ誘い込んで絵を描かせる。竹内さんがディレクターで、ぼくなんかその講師で。竹内さんと話してたとき、アニメーションブートキャンプでは大学や専門学校で教えるのと違って、現場でこうやってつくってる、動きをつくるという考えを持ってやってるんだって伝える。現場寄りの考え方で、学生さんに理解してもらおうと。それを(映画で)実践したのが『この世界の片隅に』です。

 アニメーションの動きって、例えば同じ大きさの丸い球で、ひとつは重い、ひとつは軽い、それを描き分けるとか。ボーリングの球ならどうやってバウンドするか、とか。動きで重さをつくり出す。目で見た感覚で。いっしょにブートキャンプの講師やってるのはプロダクションIGスタジオジブリでやってた人、『おそ松さん』(2015)の人とか。みんな同じ考えでやってる。おろそかにしないでやろうって。

 すずさんの重さ・軽さ、持ってる物の重さ・軽さを動きで描けないかなと。ほんとは重いはずなのに軽々やるとかジャンプするとかもアニメーションの魅力ですけど、ちゃんと重さがある物のリアルな存在感をつくり出せたらいいなと。大真面目に信じ込んでやっていました。タイミングを入れ直すだけで、同じ動きだけど、速くしたりゆっくりしたり体感的に出来上がってくる。ちょっと動いて止まるっていうのを繰りかえさないで、いっぺん動くと重さがあったら止まらない。慣性の法則もありますし。

 叶さんは初号のころから大塚康生さんに見せたいと言ってて。でもまだ見てくれてないと(笑)。『アルプスの少女ハイジ』(1974)の作画監督小田部羊一さんにも見ていただきたくて、叶さんもそう言ってて。小田部さんには見ていただけたんですよね。3コマ打ち(1秒間8コマ)のアニメーションだと間引いたような動きで、人間の体重のが出ない動きになってしまう。でも3コマ打ちでもこんな動きができるんだなって小田部さんには言っていただけて、嬉しかったですね。小田部さんは昭和11年生まれで(劇中の)晴美ちゃんぐらいですね。何十年もアニメーションをやられてきた方が歩きはうまくいっているかチェックするように見ていて、それもすごいなと。

 いきなり足をバタッと上げたりバタバタしてみると、重さの問題で、体重を支えてるように見えない。今回はあまり足を高く上げなかったんですよ。着物の人が多くて、それで体重の乗ってる動きが自分でもできたかなと。

 すずさんという地味な人を主人公に選んだのが(自然な動きに)つながったのかなと。すずさんはバタバタ動いたりしない。ジタバタするようなところでも、もっちりしてるところがあって。安藤(安藤雅司)くんも言ってましたけど、ゆっくり動いてるからできてるのかもしれない。もっと速く歩かせてたら違うかもしれません。すずさんの性格とキャラクターが、われわれが進んでいく道しるべになったのかなと。周りの普通の人びともすずさんに合わせて。あれがあの時代の雰囲気かなと。せかせかしてる人もいるけど、茫洋と歩いている。

 いろんな意味で、すずさんを動きの上で表現できたのはすごく大きい気がします。アニメーションって、鉛筆で絵を描いてパソコンに取り込んで動かす。どんなふうに動いてどんな印象か試してみて、ちゃんと芝居してくれたなって心の中で見極めて。実写ならもう1回やってと言えるけど、アニメーションは描き直してみましょうってなるからおそろしい。寝る時間もなくなってきて(笑)。結局コンピューターで自動でできるところはなく。この前、富野(富野由悠季)さんに着物はコンピューターで貼りつけてるんだろうって言われて、違いますと。かつてなく着物の柄があふれたアニメーションになってしまった(笑)。

 来週は舞台挨拶が2つ(笑)。11月12日公開の映画にしては幸せです。きょうで丸4か月ですね。

 監督の出る幕じゃないですけど、まだまだ見ていただきたくて、映画につきまとって出てくるかもしれませんが、よろしくお願いします(拍手)。

この世界の片隅に 劇場アニメ絵コンテ集

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