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富野由悠季監督 トークショー “戦後アニメーションは何を描いてきたか” レポート (1)

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 宮崎駿富野由悠季押井守というアニメーションの巨匠監督を通して戦後日本を論じた『母性のディストピア』(角川書店)。その刊行を記念して、富野監督を囲むシンポジウムが立教大学にて行われた。

 富野監督の他に、著者の宇野常寛、哲学者の國分功一郎、文芸評論家の福嶋亮大の各氏が出席したが、筆者の能力の限界により、富野監督の発言に絞ってレポしたい(メモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 宇野さんが言ったように、戦後のロボットアニメという言い方はもう20年前に終わってるんです。それは現場で仕事をしていればつくづく感じる。評論でしか食べていけない人と同じようにぐだぐだ言いながら、20年恥をかきながら作品をつくるんですよってことをやってきました。

 もうじき死ねるかもしれないってなったときにどうするかっていうのは、この7〜8年の課題です。死ぬことを想定して何を残すかって考えると、言葉遣いや文脈じゃないなってうっすら判ってきました。

 公共の電波を使って作品を発表できてなおかつCMですが、22分くらいだとメッセージを付け加えざるを得ない。造語を捏造することをやった。世界のことは考えてなくて(メッセージは)ロボット物の起承転結を収めるための手段でしかなかったです。生活をしていかなくてはいけないからです。40年くらい経つと、アニメでも考えているのかなっていう視点が出てきて、世代が違うからそういう目線を持ってくれています。われわれの世代でアニメに作品論があると考えた人はひとりもいません。

 

 仕事として作品をつくると何が起こったか。今回の本で、自分自身についてのところは抜き書きしてみました。自分の作品を見返したことが一切ないんです。反吐みたいなものだから。ブルーレイ化するってことで見ざるを得ないというときくらい。過去に戻ると老ける、あしたを生きられなくなるから。今回抜き書きしてみたら、びっくりすることがあった。つまり純然たる仕事として対応したときに、劣化する。リアリズムに対応すると、情実が入ってきてしまって劣化していく。ぼやぼやしてるとヘイトスピーチになる。ロボットアニメがありがたかったのは、ヘイトスピーチにならずに済んだ。命拾いできたお仕事だったと思います。後年の仕事はガンダムのパート2とかパート3とかふざけたものだけど、食ってくためだもん。それを宇野あたりにぐたぐた言われる筋合いはない(一同笑)。人間ってのは劣化する。ぼくは、押井作品は2、3本しか見てないんですが、宮崎さんもそういう経路ですね。あれだけの巨匠で天才ですけど劣化していくっていう道筋は、宇野さんがきちんと書いていらっしゃる。生きるっていうのは、なまじのものではない。『ブレンパワード』(1998)のことは忘れてたけど、“頼まれなくたって生きてやる” (キャッチコピー)。生きろ(『もののけ姫』〈1997〉のコピー)とか、そういうコマーシャル的なかっこいいことじゃやっていけないんだよね。ああいうコピーにすがったときに、宮崎駿は劣化したことも判りました。だからぼくに喋らせるなと(笑)。

 職業人として、仕事をやりつづけなければならない。スピルバーグも何百人のスタッフを食わせなくちゃいけない。だからおれが陣頭指揮をとってるという、企業人でディレクターじゃないんです。『リンカーン』(2012)なんて、あんなにモブシーンやってんだから誉めてやってよ(一同笑)。 

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 押井くんは、映画はアニメになっていくと言ってる。ぼくが言ったのを宇野くんが翻訳してくれているのが、アニメは高性能だと。宇野くんが書いているのは、純粋でピュアな媒体であると。ひとりの意思で作品をつくることができる。キャラクターは他の人が描いて、背景も気に入らない奴が描いていたりするけど、実写ほどこの役者を使わなきゃいけないとかいうのがない。ただ(実写は)違う役者を使うことで、異種格闘技になって化けるみたいなこともあります。全面的に実写を否定するわけではないんですけれど、ただ意思を持ってる人にとってアニメは高性能です。

 

 ディズニーは飽きもせずに、ああいう形で子ども向けにつくってる。受け入れられてるマーケット、ポピュリズムがある。世界の人口の3分の1くらいが享受している。極めて女性的で、甘っちょろいものかもしれないけど、甘っちょろくて何が悪いか。ディズニーランドも集客力を持っている。(つづく)