【調査について (2)】
片渕「『NEMO/ニモ』(1989)のプロデューサーは藤岡豊さんで、アメリカに持って行って配給したいと。
合作先は、ジョージ・ルーカスは乗ってくれなくて、ゲーリー・カーツプロデューサーに。藤岡さんは、2作目は黒澤(黒澤明)さんとやりたいと言ってて、黒澤さんはアニメやったことないけど時代考証ならやってやると。その2作目というのがかぐや姫で(後に『かぐや姫の物語』〈2013〉を監督する)高畑(高畑勲)さんも入ってました。ああ、調査研究するんだと…」
【声優について】
片渕「『アリーテ姫』(2001)はアフレコが2日しかなくて、1日やったところで(アンプル役の)小山(小山剛志)が…いいんですよ、呼び捨てにしても。桑島法子ちゃん、高山みなみさんと飲み誘って景気づけしようとしたら、小山は寝られなくなって声が出ない。そっから先は声でなくていいんだと、どんどんそうなった。アンプルは追い込まれていくけど、本人もそういう状態で、それがよい印象になって。
こわもてでにやにやして、麻雀やる人で、本人も芝居として頑張るけど、芝居以上のものが重なってきて面白かったんですね。
2本出ると、3本目も出さないと悪いかなって気がして。『この世界の片隅に』(2016)で、小山どこにしよう。登場人物見て、あっこのへんかなと。だからオーディションなしですね。
『アリーテ』はオーディションしてもらって、テープを送ってもらって聴いて。桑島法子が最初からアリーテって感じで、すぐ決めて」
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片渕「『マイマイ新子と千年の魔法』(2009)は録音の演出もやろうかなと。それでどのへんから人(声優)をつれてくればいいかなと。舞台を、当たりをつけて見に行って。子役は真剣にオーディションをやって、諸星すみれとか。こんなちっちゃい子から。貴伊子役は70人オーディションやって、うまくひっかからなくて、69人目が水沢奈子。それで決まらなかったら、それまでの人でつじつま合わせるけど、69人目にいた。できるだけ中学生以下で配役したくて、少し年齢高くても中学生くらい。なかなか大変で。主人公は決まってて、他の子役は洋画の吹き替えやってる子でさがすようになって。
『この世界の片隅に』(2016)は準備期間が長くて、ひとりずつイメージをつくっていって。周作の細谷(細谷佳正)が最初で、コトリンゴさん、小山とか。のんさんは『あまちゃん』(2013)見て、これだなと。新谷真弓さんはロフトのイベントにお客で来ていて、新谷さんの仕事場が阿佐ヶ谷にあって、作画監督がコーヒー飲みに行くとよくいる。ロフトでイベントやるって言ったら、毎回来るようになって。それで、全部の台詞を広島弁にして吹き込むのをやってもらえないかと。
主に吹き替え系が多いけど、オーディションでは芝居の優劣じゃなくてはまり具合でさがす。結構大変でした。
アニメでは画をつくる監督と音をつくる監督とがいて、何故ふたつに分ける必要があるのか。他の人を介さなくても役者さんに伝えればいい、通訳みたいな人を介する必要はないかなと。画をつくるのが忙しいから任せるというのもあるだろうけど、ぼくは音も込みで画をつくってるから、インターメディエーターみたいなのが入らないほうがいいかなと」
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【その他の発言】
片渕「(『アリーテ』の始まりの)よんどしい(現:STUDIO4℃)の立ち上げのときは三鷹の民家で、台所が制作部。はじっこに森本晃司さんがいて、ユーロビート聴いてて迷惑で(笑)。その後で『MEMORIES』(1995)の班つくって、吉祥寺へ行きました。
吉祥寺のアパートで六畳一間で作画監督、キャラクターデザインと3人で。クーラーもついてなくて夏で、窓の向こうは専門学校。
『この世界』は(製作スタジオが)畳敷きのマンションで、ペット可。丸山さんが自分のマンションで犬飼ってて追い出されて、やがてぼくらが追い出されて、丸山さんがいま住んでて家になってる。畳ばっかり、畳の上で仕事して24年(笑)。
阿佐ヶ谷の第2スタジオは1〜3階が和楽器屋さんで、2階は演奏するステージだったかな。板の間張りで、そこを貸すって言われて借りました。上と下が和楽器で、お琴に囲まれて。
リテイクは荻窪。『マイマイ』をつくってたところに戻ってきたという。不動産の話題でした(笑)」
オールナイトの上映は、制作順だった。
片渕「順番は?って訊かれて、いつも『アリーテ』は3本目で明け方だったんで、『アリーテ』は目が覚めてるころに。つくった順番にやっていこうと。つくった人が何を考えながらつくってるかが、見えてしまうかもしれません。テーマ的な発展って言っていいか判りませんけど。『アリーテ』がいちばん眠くなるの間違いないので、最初がいいかなと(笑)」
【関連記事】片渕須直監督 トークショー(第41回日本カトリック映画賞授賞式)レポート・『この世界の片隅に』(1)
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