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ひし美ゆり子 × 三輪ひとみ × 中堀正夫 トークショー(実相寺昭雄 特撮オールナイト)レポート(1)

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 2006年12月に逝去した実相寺昭雄監督。昨年12月に没後10周年のオールナイトが好評を博し、早くも3月に第2弾が開催された。筆者は12月には都合により行けず、今回は参加できたのだった。

 上映開始前に実相寺監督の代表作『ウルトラセブン』(1967)のヒロイン・アンヌ隊員役を演じたひし美ゆり子、映画『D坂の殺人事件』(1998)やテレビ『ウルトラマンティガ』(1997)に出演した三輪ひとみ、長年組んだカメラマンの中堀正夫の各氏によるトークショーが行われた(中堀氏はトークの中途で飛び入り参加)。昨年、『実相寺昭雄 才気の伽藍』(アルファベータブックス)を刊行した樋口尚文氏が進行役を務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。)。

 

樋口「(前回のオールナイトは)あの日いろいろ事故があって、『シルバー仮面』(1971)の2話を2回見たという(笑)。5時か6時に終了の予定が7時半になって。その日の夕方にもう1回やろうと」

 

 今回は実相寺監督のテレビ『ウルトラマン』(1966)を再編集して撮り足した映画『ウルトラマン』(1979)、テレビ『怪奇大作戦』(1967)と『シルバー仮面』。

 

樋口「(今回のラインアップは)本来最初にやるべき作品。ひし美さん、三輪さんの作品は前回上映していて、きょうはやらないという(笑)。前回のトークは30分だけで、大家(大家由祐子)さんは“実相寺さんは変態です”ってひとこと言って終わりでした(一同笑)」

 

 【女優たちと実相寺】

 ひし美ゆり子氏は、樋口氏に「実相寺監督に愛されたミューズ」と紹介された。

 

ひし美「私は愛されてなかった(一同笑)」

樋口「愛の屈折表現ですよ」

ひし美「実相寺さんからね、最初逃げてたんですよ。蝮(毒蝮三太夫)さんもおどすもんだから、鬼才だって。20歳の足りない女の子だったから、鬼才って何、鬼みたいな? でも優しい方で、というか芝居つけたりしないんですよ。カメラのぞいたりしてて。

 (『セブン』の第8話)「ねらわれた街」で、ダン(森次晃嗣)とタバコの販売機を喫茶店の2階から見てて、あれは向ヶ丘遊園ですね。ダンにグラスを上げたとか下げたとか(指示して)。そういう、画を気になさってる方で。

 小学館さんから20年ぶりにエッセイを出すんですが、ブログも10年以上書いてるから、それに加筆したり。それで『セブン』を1話からずっと見直したんです。(第43話の)「第四惑星の悪夢」は前から見てなくて。ベトナム戦争とかあったから、あの公開処刑が苦手で。もう大人になったから、ああ古稀か(一同笑)。ちょっと大人になって、見ようと思って、面白いじゃん!(笑) いま気づいたんですよ。飴なめて鞭持ってるおじさんとか、アメとムチって意味なのかな。すごさがいま判ったんです」

  三輪ひとみ氏は、江戸川乱歩原作の映画『D坂の殺人事件』の小林少年役に起用された。その後、『ウルトラマンティガ』の第37話「花」では宇宙人役(公開順は逆となった)。

 

三輪「私もいっしょで、あんまり芝居をつけるタイプではなかったような。『D坂の殺人事件』が映画デビュー作で、映画ってこういうものかと思ってたら、他の現場行ったら全然違って(笑)。

 監督って芝居をつけないと思ってたら、ふわっと来て“ここに来て筆とか触って3秒で振り向く”とか。このシーンの感情が、とか言うような監督ではなかった。変態ぶりを拝見したことはないですね。

 私、男の子役で、男っぽくしなくちゃいけないと考えて行ったんですけど、普通にそのままでって言われて。むしろ待ち時間が長くて、緊張してスタジオの端にいたんですけど、監督がみんなの前につれて行って、紹介していただくという。優しい方で。“小林少年はぼくの少年時代にそっくりだ。三輪くんはぼくの若いころに似てる”って。私は、ああそうなんですねと。でもみんなから“はあ?”って猛烈に突っ込みを受けてましたね(笑)。

 その後もお会いする度にグッズをいただいて。ウルトラマンのとか。私の車には、いただいたけろけろけろっぴがあります」

D坂の殺人事件 [DVD]

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三輪「(「花」は)小さい子が判るかなって思いながらやってましたけど。すごく綺麗なセットが組んであって、感動しました。奥さま(原知佐子氏)が乳母の役で、待ち時間にいろいろ教えていただいて。抑揚、イントネーションが難しくて、どうしても直らないというところを教えていただく。(最後にセットで)品物持って写真撮ろうって。

 なんか役者って言うより、ひとつのオブジェというか、そういうイメージでしたね。綺麗な絵の中に入る。どこを切り取っても絵になる」

ひし美「(三輪氏のコメントに)お若いのにね。私、感心しちゃう」

 

 中堀正夫氏は『ウルトラマン』に助手として出会い、40年ものつき合い。

 

中堀「(女優さんが来ると)監督、緊張してるんですよ。そういう雰囲気の監督だった。『帝都物語』(1988)の原田美枝子さんはかわいそうで、訊きに行っても監督はごめんなさいだけ。よく原さんと結婚したなって思いましたね。女優は近づけないみたいな人」(つづく

 

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