私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

森本レオ × 山賀博之 × 渡辺繁 トークショー レポート・『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1)

 オネアミス王国にある宇宙軍の士官・シロツグ(声:森本レオ)は街で知り合った女性(声:弥生みつき)に誉められたのをきっかけに、ロケット搭乗を志願。技術者が事故死したり暗殺者に襲われたりする苦難を経て、遂にロケット打ち上げが実現しようとするとき、隣国との戦争が始まってしまう。

 映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987)は当時まだ実績のなかった若いスタッフたちが挑んだアニメーション作品。当時は興行的に不入りだったが、現在は高い評価を得ている。昨年10月に4Kリマスター版が上映されて、新宿で監督の山賀博之、声を演じた森本レオ、プロデューサーの渡辺繁の各氏によるトークもあった。司会はライターの小林治氏が務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

山賀「こんな大きな劇場だとは思いませんでした。この映画の封切りのとき、ぼくは全く呼ばれなかったので、こういう挨拶は初めてです」

森本「なんかさ…20~30人で吉祥寺でやるような会だって聞いてたんだけど(一同笑)。この映画、声優をやらせていただいたときは、自分でも何をやっているのか判らなかったんで。それをときどきすれ違う人が、NHKのディレクターとかが「あれはすごい」って熱っぽく語ってくれるんですけど、ぼくは「ふーん」て。それで怒られたりしたこともあるけど、こんないっぱいの人に来ていただけるなんて思いもしませんでした」

 

【4K化について】

渡辺「1 年前の7月に当時のバンダイナムコアーツの河野聡社長と久々に会う機会があって、ぼくはバンダイビジュアルを辞めてから10年以上経ってたんですけど。来年は『王立』35周年なんで何かやったらどうですかと。展覧会をやりましょうかって提案したんですけど、コロナ禍ですし、それで4K化ですね。マスターは去年の12月からプレスを始めて、完成したのは今年の9月の頭です。スタッフがきめの細かい作業をやってくださって、お見せできるクオリティになったと思っています」

山賀「4Kが高画質であることぐらいは判ってたんですけど、ありがたいことで。見てみると、ぼくの想像以上にあの当時の作業環境の素材そのままのものが。(上映すると)フィルムってどうやったってぼけるんですよ。回転式のシャッターで、どうしても画面がぶれるし、ピンも甘くなる。音も聞こえてこないし。いまのテクノロジーで(上映する前の)37年前の現場でこんなだったなというのがまざまざと甦るんですね」

森本「4Kの意味がよく判ってない…」

山賀「いま上映しようとするとフィルムをデジタル化する必要があるわけです。昔は粒子の情報量が多いとお金がかかっちゃったんですが、だんだん安くなってきて。いまはフィルムの粒子のかなりの部分をデジタルで拾えるようになったんです。発色も音もよくなって、4Kは破格に画質と音質がいい。改めてぼくは見るとびっくり」

森本「そうなんですか。あの当時、ぼくの仲間うちでも「ディズニー越えとるぞ」みたいな感じで騒いでましたけどね。映像がめっちゃ綺麗だし」

山賀「でもぼくらが作業していて、特に音の作業ではかなり細かいところまで音響監督や効果音のスタッフがこだわってたのに、映画館に行ってみると入れたのに聞こえてないな。ニュアンスが伝わんないんだよなと」

森本「そうなんですか。ぼくらの高円寺の仲間はみんなワイワイ言ってましたけど(一同笑)。普段は難しいのばっかり見てる連中が「めっちゃ面白い」って。ディズニーも軽く越えてるっていうのがみんなの一致した感じでした」

山賀「ありがたいお話ですね(笑)。ただあの当時はアナログでしたから、綺麗な画質だとセル画のあらも見えちゃうんですね。特に美術はすごく描き込んでいるんで、4Kだとかなり当時の色がそのまま出ているのでぼくは感動しました」

森本「誰かが「リアルを越えとる」って言ってましたね」

山賀「35年というのは物事が劣化する年数ですね。それがよりリアルになるというのはちょっと変な感じですね。当時は(台詞や効果音を)磁気テープに録音しているのでどんどん劣化しているはずなんです。それを救っていくテクノロジーもすごい」(つづく