私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

森次晃嗣 × 樋口真嗣 × 黒木ひかり × 関智一 トークショー レポート・『ウルトラセブン』(2)

【55年前の想い出】

 ここで『ウルトラセブン』(1967)に主演した森次晃嗣氏が登場。

 

森次「いつも応援いただいてありがとうございます。私はきょうが『ウルトラセブン』の初めて放送された日だという認識がなくて、そうなんだと。それだけ時代が流れてきて55年経ったんだ。20代でやった作品がこれだけ愛されて、その後も壇上に立つなんて夢にも思っていませんでした。いつまでお会いすることができるか約束はできませんけど、いつまでも元気でいたいと思っています(拍手)。

 55年っていうと昔のことですね。毎朝5時に起きて、小田急に乗って、美術センターっていう撮影所に通っていた1年ですね。若かったからできたんでしょう。休みだというとひとりでイベント行ってますね。バッグに隊員服とヘルメットと靴を入れて、九州とか北海道に行ってました。当時はマネージャーなんかいないよ」

「行ってこいという命令が来るわけですか」

森次「来るわけです。撮影が休みの日に切符を渡されて。そういうスケジュールで、ぼくひとり休みがない。ずっと1年間『ウルトラセブン』の仕事をしてましたね。リフレッシュする時間もない。いいことばで言えばのめりこんでいたとかうちこんでいたとか。ぼくにとっては役者人生でこんなハードな仕事はなかったですよ。55年以上やってますけどね。

 蝮さん(フルハシ隊員役の毒蝮三太夫氏)は『笑点』の座布団係やってたから、ロケ行くと旅館やホテルに舞台があって、蝮さんが座布団で面白おかしくやってましたね。日立のロケに行ったときに、みんなでお酒持ち込んでゲイバー遊びをやりました」

 

【セブンの役づくり】

「ダンが子どもっぽい表情を見せるところもありますね」

森次「それは地だね。かわいいところあるのよ、ぼく(一同笑)。映画館ででっかいせんべい食ったり、そういうのを出そうと思ったの。ウルトラセブンと普段のモロボシダンとのギャップはあってもいいかなと。本人にそういう要素があるんだね。

 隊員の中ではどっかで離れていようと思った部分もありました。早く終わったら飲みに誘われるんだけど。セット撮影は遅くても定時で8時くらいまでに終わるのよ。みんな、ぼくがお金ないの判ってるし、誘ってくれるけどあんまり仲良くしないほうがいいのかなと。普段のものって意外と映像に出るんだよね。冷たいけど、宇宙人的な雰囲気にできるんじゃないかなと思いましたね。

 こんなに愛されてる作品もほかにないですよ。いまだって、ぼくは歩いてて「あ、ダンだ」って言われるんだよね。追っかけてきて写真を撮られるのよ。ダンじゃねえよって言いたいけど、いまでもそんな感じなんだよね。発見されたら逃げる(一同笑)。居酒屋とかで発見されると、サラリーマンの方だと上着を脱いでワイシャツ姿でサインしろと。それがひとりじゃくて騒ぎになるから、発見されそうだとすぐ帰る。うちで飲んでますよ」

【上映作品について】

 第7話「宇宙囚人303」、第26話「超兵器R1号」、第37話「盗まれたウルトラ・アイ」第48話「史上最大の侵略(前編)」、最終話「史上最大の侵略(後編)」が上映される。

 

樋口「名作揃いの中、今回の上映はキュラソ星人(「宇宙囚人303」)というニッチなところを攻めましたね。印象に残るのは「ガソリンヲクダサイ」って言う女の人(キャシー・ホーラン)。『吸血鬼ゴケミドロ』(1968)にも出ていてご主人がベトナム戦争で死んでしまったという未亡人役なんですが、でも『セブン』ではあっという間にやられちゃう。あの人がキュラソ星人だったんじゃないかと(一同笑)」

樋口「「盗まれたウルトラ・アイ」は(ゲストの)女の子がかわいいですね。俳優座の香野百合子さん。俳優座に入る前ですね」

森次「覚えてますよ。この回の最後にぼくが隊員服で夜の新宿を歩いてくるシーンははずかしかったですね。ロングで隠し撮り。隊員服でヘルメットを抱えてまっすぐ歩いていってくださいって。『ウルトラマン』(1966)みたいにオレンジ(の隊員服)じゃなくてシックだったからまだいいけど。

 55年経つとだんだん記憶が薄れてくる。あの回は何だったかなって思いだすのに時間がかかってくるね。ぼくの中で印象的なのは「史上最大の侵略」で、ドラマチックだったし覚えてるかな。

西の空に明けの明星が輝くころ、ひとつの光が宇宙へ飛んでゆく。それがぼくなんだよ

 いちばん体にしみ込んでる台詞だね(拍手)」

【その他の発言】

森次「監督も小さいころに見たんだ(笑)」

樋口「3歳とかですね」

森次「3歳でぼくを見たの」

樋口「その後に再放送でもずっと見る。何故かガブラの回(第23話「明日を捜せ!」)だけ毎回見られない。そのときだけ家の用事とかが入っちゃって、大人になってやっと見ました(一同笑)」

森次「きょうが監督と初対面だよね。すれ違ったりしてるんだろうけど、こうやってお話させてもらったのは初めて」

「監督、緊張されてましたね」

樋口「杉並公開堂のトイレで並んだことはあるんですよ(一同笑)」

森次「監督はおれに会えて嬉しいって言ってるんだよ。照れるよね」

 ウルトラセブンも登場。

 

黒木「こんなに背が高いんですね! 足が長い」

樋口「キングジョーの回で英一(きくち英一)さんの入ったバージョンかな」

 

 最後にメッセージ。

 

森次「きょうが55周年の10月1日で、60周年10月1日まで元気でいたいと思います。周りの仲間たちがひとりひとり亡くなっていって、そんな淋しい日々を送っています。ただ『セブン』がある限り元気でいたいと思っております。55周年ありがとうございます(拍手)」