■ ベネチア映画祭は、実相寺監督だって行けなかったんだから!!
——最終的に(『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』〈2008〉の)興行収入はどうでした?
河崎 いやあ、興収で制作費回収は無理でしたね。P&A(プリント代&広告費)に大分つぎこんだというところもあるし。でもDVD収入と、海外販売でなんとか元をとれればな、と。
——リバートップも出資されてますよね。
河崎 もちろん。10%出資してますよ。
——それはエライと思いますよ。
河崎 エライとかそういうんじゃなくて、今回勝負したからね。バカ当たりさせたいし。
——出資する立場としては…。
河崎 でもね、何からなにまでオレがやったことですから。すべて自己責任ですよ。
——色んなこと言われたって、やっちゃったモン勝ちなんですよ。
河崎 そういうことだよね。作品は残るし、怪獣映画は特に残りますからね。
——ベネチア映画祭にも招待されたし。
河崎 ベネチア、でかかったですよ。親が喜びましたから。だって黒澤明、溝口健二…。
河崎 もう自慢しないと(笑)。いかにマルコ・ミューラーがオタクでも。
——彼は怪獣映画とか好きなんですか?
河崎 北野武の映画が好きだと。それでたけし(ビートたけし)が出ているってことでギララ見たら「なんじゃ、こりゃ?」って(笑)。それから全部調べさせたんだって。「タケちゃんマン」も『日本以外全部沈没』も見て、「なるほど!!あんたは面白い!!」って呼ばれたんですよ。
——なぜギララをコンペ部門に出さなかったんですかね? ポニョと戦ったら快挙ですよ。
河崎 グランプリが、ミッキー・ロークの『いかレスラー』みたいな話でしょ?(笑)。
——いかじゃないっ!!
河崎 まあスペインにも行ったしね。
——シッチェス。あそこはファンタスティック映画祭の名門でしょ。
河崎 金かけてましたよ。
——これから河崎作品は、ベネチア出品がちらついてくる。
河崎 ベネチアはもういいんで、あとはカンヌとベルリンをどう制覇するかだね(笑)。来月、シドニー映画祭に行くんですよ。『コアラ課長』とギララが招待されてて(笑)。オーストラリアだもん。コアラですよ。
マルコ・ミューラーとは、ベネチア映画祭のプログラミング・ディレクターのこと。大変な日本映画好きとして知られる男である。筆者は10月に都内で行われた、彼の講演を聞きに行ったのだが、クロサワ、オヅなどの名作だけではなく、60年代のプログラム・ピクチャーなどにも愛情が深いことに驚いた。
そんなマルコだからこそ、今年のベネチア映画祭のコンペ部門に北野、宮崎、押井(押井守)の新作が、またミッドナイト・シネマ部門に『ギララの逆襲』が上映されたのだろう。
■怪獣映画は、もうダメだね!
河崎 やっぱり監督も、キャラを出さないとダメよ。たけしさんが成功したのはそこだったから。「たけしが毒舌言うんだったらしょうがないな」って。凄いのは、それが映画にまで行っちゃったことですよ。みんな当たらないとか言ってるけど。たけしさんとオレの悩みは共通ですよ。オレだって、今回怪獣映画やってダメだったんだから。
——「怪獣映画だから」ダメなんですかね?
河崎 たぶんそうですよ。これが『ゴジラ/ファイナル・ウォーズ』の続きでも、「ガメラの逆襲」でもダメだったと思いますよ。
——『小さき勇者たち』みたいに、ファンタジーにしてもダメ?
河崎 そりゃダメでしょう。だから龍平(北村龍平)と田崎(田崎竜太)君の失敗を見て、「これだったらいける!!」と思ったけど、でもダメでしたね(笑)。
——怪獣そのものに嫌悪感があるのかな?
河崎 なんだか分からないから見に来ないんですよ。『相棒』とか『花より男子』しか当たらない。「あとでDVDで見ればいいや」ってことになっちゃうんですよ。みうらじゅんとかがやってるサブカルなものを、メジャーに持ってきても無理だってことですよ。
——でも最初、新宿ピカデリーで9月にレイト上映の予定だったのに、夏休み公開に早まり、しかも拡大上映になっちゃった(笑)。
河崎 我々も全力でやったんですけどねえ。ベネチア映画祭、これがすべて(笑)。だってウルトラマンやってるヤツらなんて、ベネチア映画祭行けたことないんですから。そうでしょう。実相寺(実相寺昭雄)監督だって行ってない。(つづく)
以上、斉藤守彦氏のサイトより引用。