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河崎実監督 ロング・インタヴュー “『ギララの逆襲』顛末記。あるいは怪獣映画への異常な愛情。”(2009)(3)

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■三島由起夫の「美しい星」を、 おバカ映画として撮りたいね!!

 『ギララの逆襲』『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』〈2008〉)は、興行的には不成功だったが、ベネチア映画祭に招待された。その功績を河崎監督は「こんなヤツ、他にいないでしょ?」と強調するが、果たして彼は、そのことを本当に納得しているのだろうか?

 かつて怪獣映画をディープに愛した、この日本の観客たちが、今、怪獣映画には見向きもしない。それなのにベネチア映画祭では、否コンペ部門(ミッドナイト・シネマ部門)とはいえ、『ギララの逆襲』を上映した。国内での失敗と海外からの注目。そのアンビバレンツな現実に、今後河崎実はどう立ち向かっていくのだろうか?

 

——今、私の周辺でも特撮映画やりたいってプロデューサーや監督って多いんですよ。

 

河崎 うーん。オレは特撮バカっていうか、ウィリアム・キャッスルみたいに、色々含めてのバカだから。映画作るだけじゃなくて、宣伝とかも含めてやってるから。普通そうじゃないでしょ、監督って。映画撮って、あとはプロデューサーがオロオロしてるだけ。そういうこと、一切ないですから。

 この枠しかないから、これでやっちゃえー!!って。だから他の監督とは、違うリスクを背負ってやってますよ。こっちはもう、1日撮影伸びただけで、100万円出ていったりしますからね。

 

——そのあたりは、プロデューサー的感覚。

 

河崎 もう特撮ファンだけ喜んでるものは、やりたくないんですよ。たけしビートたけしだとかザ・ニュースペーパーだとか、特撮ファンを超えてるでしょ。一般に向けてやったわけだから。

 

——狭いのはダメですね。

 

河崎 逆に狭かったほうが良かったな、とも思いますが(笑)。

 

——結局リバートップは事務所的に潤ったんですか?

 

河崎 いやあ、『沈没』(『日本以外全部沈没』)の儲けをギララではき出しましたよ。DVDで戻ってこないと。

 

——『猫ラーメン大将』に続く次回作は?

 

河崎 いや、ちょっと今、女とも別れて…。

 

——よくやりますね。映画作りながら(笑)。

 

河崎 深く進行中なんですけど、困ってるんですよ。プレゼンでしたらいくらでも出来ますけど。今、日本映画で三池三池崇史さんと堤堤幸彦さん、佐々部佐々部清さんしか撮ってないじゃないですか。

 

——河崎監督だって、撮ってるじゃないですか、たくさん。

 

河崎 いや、オレは1億円行ってない作品ばっかだし。

 

——でも自由に撮ってるじゃないですか。それはみんな、うらやましいと思ってますよ。

 

河崎 それはいつかも書いてもらいましたけど。

 

——何が楽しいんですか、委員会にがんじがらめにされて。企画から何から決められて、そんな中で撮って。

 

河崎 マーケット・リサーチして「これが受ける」って言ったら、もう自明の理ですから、しょうがないですよ。 

 

——そういう話が来たらどうしますか? いわゆる製作委員会で、10億円の予算があって、「委員会の言う通りにやってください」って話が来たら。

 

河崎 来ないもん、まず。

 

——もし来たら?

 

河崎 やるんじゃないですか。つまり自分の誇りを捨ててまでやるかっていったら、そこが問題であって。

 

——怪獣映画だったらやりますか?

 

河崎 やるね(きっぱり)。 

——先日の読売新聞のインタヴューで、「三島由紀夫の『美しい星』を映画化したい」と言ってたでしょ?

 

河崎 アメリカでインタヴュー受けても、みんな三島由紀夫って言うと食いつくし。そりゃもう、「美しい星」やりたいんだけど。

 

——それは、おバカ映画として(笑)?

 

河崎 宇宙人全員、縫いぐるみ(笑)。5000万円あれば余裕で出来ますよ。

 

——三島原作なら、河崎監督で「潮騒」やって欲しい。かぶり物満載(笑)。

 

河崎 久保明ね(笑)。タイトルがいいでしょ、「美しい星」って。実相寺実相寺昭雄監督がやりたかったんですよ。結局「美しい星」って『ウルトラセブン』の「狙われた街」なんですよ。三島+河崎+宇宙人ものといえば、みんな買いますから(笑)。

 

 現実的に「美しい星」が河崎監督の手で映画化する可能性は、現在のところ決して高くはないだろう。しかし行動力抜群の彼のことだ。あれよあれよという間に、関係者を説得して、実現させてしまうかもしれない。そのバイタリティこそが、この男の真骨頂だ。

 侮るなかれ、河崎実 

 

 以上、斉藤守彦氏のサイトより引用。

 このインタビューのころは受難の時期だったと河崎監督は述懐する。

 

ところが2008年『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』を撮ったあとから、運を使いきっちゃったのかね。急激に下り坂になっていった。

 『ギララ』は7月に公開して、正直、数字的にはコケた。プライベートでも女子と別れたりして、どんどんヘコんでいく。9月にヴェネチア映画祭に招待されたのが最後の輝きかな」(『河崎実監督の絶対やせる爆笑痛快人生読本』〈山中企画出版部〉)

 

 やがて河崎氏は復活を遂げて『大怪獣モノ』(2016)、『三大怪獣グルメ』(2020)、『遊星王子2021』(2021)などコンスタントに撮りつづけている。