私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

浦沢義雄 発言(インタビュー)録(4)

——もう一本の『なんでそうなるの』は?

 

浦沢 55号のコントを書くんです。これはこれで、凄く楽しかった。

 

——この2番組の後のお仕事は…?

 

浦沢 他の番組に興味なかったんですよ。それで『なんでそうなるの』をやっていたパジャマ党の人達にお世話になって、欽ちゃん(引用者註:萩本欽一とかの番組とか手伝って。でも、その頃は仕事をほとんどしないで、お金だけもらったり。そんな泥棒みたいな生活をしてた(笑)。もう放送関係の仕事は、辞めるつもりでいたんだけど、その時にね、ある作家の人が「『ルパン三世』を書かないか?」って言ってきたんですよ。

 

——はあはあ。

 

浦沢 特に『ルパン』が好きだったわけじゃないんですけど、暇な時に再放送を観てたから、『ルパン』は知ってた。

 

——それは、旧作の方?

 

浦沢 一番最初の。新作の方は、鈴木清順さんの監修、大和屋竺さんがシリーズ構成をやってるって知ったんです。その二人のファンだったんです。

 それで鈴木さんと大和屋さんに会えるなら行ってみようかなと思って。それで、『ルパン』のホンを作ってるところに行ったんです。それで初めてアニメーションに関わったんですよ。

 

——当時の『ルパン』の脚本って、作家部屋みたいなのがあって、脚本家やブレーンが集まっていたそうですね。

 

浦沢 そこで脚本を書いたんです。

 

——その最初が「カジノ島・逆転また逆転」なんですね。

 

浦沢 あれができるまでが大変だったんですよ。5稿ぐらいまで書いた。

 

——昔から不思議でしょうがなかったんですけれども、あの回って洋画風の洒落たセリフがいっぱい出てきますよね。「それも教授が教えてくれたのかい」とか。

 

浦沢 そうそう。

 

——『ルパン三世』にしても珍しいテイストでしたよね。あれは浦沢さんが「こう書くぞ」と思って書いたんですか?

 

浦沢 いや、脚本を書いたの、初めてじゃないですか。その時、僕を『ルパン三世』に紹介してくれた人が、「こう書け、書け」ってうるさかったんですよ。その人は責任を持って、色々教えてくれていたわけだけど、その人と喧嘩しちゃってね(笑)。「もう何も言わなくていいです。自分で書きますから」って言っちゃった。それで、ああいう洒落たセリフを入れる作風にすればいいと思って、5稿を書いたんじゃないかな。

 

——5稿目で、いきなりああなった?

 

浦沢 うん…やけくそで『ルパン』って、ああいうのあまりなかったな…という気がしてたし。5稿目でああなったんですよ。

 

——その後、あの作風でお書きになったものはないですよね。

 

浦沢 あの話は特にコメディじゃないから。普通の『ルパン』のオーソドックスな話として考えたから。 

カジノ島・逆転また逆転

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——その後、別人のような作風で、コメディの方に行きますよね。

 

浦沢 あの話を書いて、そこそこ評価を受けたんですよ。それで次のホンの時は「僕に任せてください。好きなようにやりますから」って。そう言って書いたのが…「ロボットの瞳に…

 

——ダイヤが光る」ですね。

 

浦沢 あれは、第1稿でオッケーですもん。誰にも文句は言わせない。 

ロボットの瞳にダイヤが光る

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——あの話から、浦沢さんがお書きになった『ルパン三世』は「ブロードウェイシリーズ」と言われるようになりますね。

 

浦沢 あれね、一応、ニューヨークのブロードウェイの裏の話という設定なんです。

 

——あのシリーズが?

 

浦沢 うん。売れない女優とか、そういう人達がたくさん出てくる話を書くつもりでいたんです。

(中略)

——ああいうモノが主役の話(引用者註:『ペットントン』などでの無生物が活躍する物語。無生物路線)は、浦沢さんのオリジナルですよね。

 

浦沢 僕は、人間のお芝居が嫌いなんですよ。

 

——あはは、それはヒドイ(笑)。

 

浦沢 (笑)でしょう…お芝居がダメなんですよ。

 

——何故ですか?

 

浦沢 理由は分かんないんだけど、自分が、芝居ができないからかもしれない。

 

——でも、実際に、普通の人間に芝居をさせる脚本を書いてるわけじゃないですか。

 

浦沢 でも、僕、人間にはほとんど芝居させないと思うよ。

 

——なるほど。いわゆる「お芝居」はさせていない。

 

浦沢 「僕のホンで、芝居なんて、しないでくれ」って言いますもの。「セリフは淡々と言え!」って。

 

——そういう意味で言うと『ペットントン』って、浦沢さんらしかったですよね。ドラマも、子供も、どこかクールで。

 

浦沢 特に。子供がね。あの時も芝居をさせないでくれ…と思ったから。

(中略)

——『ペットントン』や『どきんちょ!ネムリン』での浦沢さんのお仕事は相当インパクトがあって。ここで浦沢さんの作風が完成した印象がありますね。

 

浦沢 そうですね。今思うと、その頃の事は後悔してるんだけど。

 

——え?

 

浦沢 その頃、結構売れてきて、アニメの仕事も来るようになったんですよ。でも、15分番組を紹介されたのに、勘違いして、30分の脚本を書いていっちゃったりして。…朝のシリーズでワガママな仕事をしていたから。

 

——ああ、『ペットントン』で好き放題にやっていたから。

 

浦沢 その調子で他の作品に行っちゃうと…ちょっと具合悪いんだよね。僕は、誰かがいた方がいいんだよね。

 

——誰か、というのは?

 

浦沢 読広(読売広告社)の木村京太郎みたいなのがいないと。

 

——丁々発止のやりとりができるプロデューサーという事ですか?

 

浦沢 それから、登場人物の名前とか全部決めちゃって、後はホンを書くだけという状態にしてくれるとか。僕はそういう事に興味がないから。

 

——設定とかにあまり興味がない。

 

浦沢 そう。周囲の事は決まっていて、「ホンを書いてください」って言われて書くのが好きですね。作品の狙いとか、企画意図とかを考えるのは、どちらかと言うと不得意。

 

——でも、企画や作品の成り立ちから関わる場合もありますよね?

 

浦沢 ストーリーを考えるのはいいんです。ホームドラマに変なものが出てきて…という事は考えられる。だけど、企画書に書く「企画意図」とか、ああいうのはよく分からないです。そういう事を考える習慣がないから。

 

——木村さんとのお仕事は長いですよね。

 

浦沢 うん。東映の朝のシリーズで、木村さんが途中からプロデューサーになったんですよ。それで、彼の紹介でアニメーションもやろうかと。

 以上、「アニメージュ」2001年3月号より引用。(つづく 

たまご和尚

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  • 作者:浦沢 義雄
  • 発売日: 2003/05/01
  • メディア: 単行本