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恩地日出夫 × 荒井晴彦 トークショー レポート・『めぐりあい』『昭和元禄 TOKYO196X年』『傷だらけの天使』(3)

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【監督歴の回想 (2)】

 『めぐりあい』(1968)での雨のトラックのシーンはよく知られている。

 

恩地「『めぐりあい』で雨降ってくるのは脚本になかったと思う。ぽつぽつ降り出すってのが大変だったけどね。トラック2台つないで、前のトラックにカメラとおれが乗って、後ろのに役者が乗って。246で、全然降ってないところに降らなきゃいけないんで、木の枝に水つけて何回もやり直して大変でした。水濡らすんで滑るんだよね、黒沢年雄もすべって大変だった。トラックが来てカメラの真正面で止まるんだけど、トラックも滑るから(想定より)うわっと来て、あと1mくらいのところまで来て。あれは怖かったな(笑)」

 

 『めぐりあい』と同年に発表したのが、倉本聰脚本の異色作『昭和元禄 TOKYO196X年』(1968)。

 

恩地倉本聰がまだ有名じゃなくて“倉本です!よろしくお願いします!”って来て、いまは偉そうになっちゃったけど(笑)。あいつの企画で、脚本なしで映画をつくると。大筋の構成はあるけど、現場に倉本にずっとついてて役者が話すのを聞いてその場で台詞をつくるという変なやり方でしたね。いいと思ってもいなかったけど、変わったことやってみたかったのかな。藤本さんもそういうの好きで“そのかわり2000万以上使うな”って。当時ATGがあって1000万で撮ってて、じゃあ東宝は2000万だと。でも東宝から月給もらってるスタッフ使うんだから、ステージも東宝のを使うし、全然違うんだよね。興行的には失敗でしたね。お客は来なかった。まあ来ないよね、面白くなかったしね(一同笑)」

荒井「森谷(森谷司郎)さんの『「されどわれらが日々」より 別れの詩』(1971)、やりたくなかったですか」

恩地「やりたかったけど、向こうに行っちゃったね。あのころの専属監督ってのは、この映画をやりたいから何年もねばるってそういう感じじゃないんだよね。専属料もらってるから、生活していけるし」

荒井六全協ショックというのを経験されているわけだし」

恩地「経験しているから、むしろできなかったかもしれないね。おれの中で決着がついてなかった」

荒井「森谷さんのはつまんなかったですよ」

恩地「見てないんだ」

荒井「どうしてあっちは大作の監督になって、恩地さんはドキュメンタリーがどうだとか(笑)」

恩地「あいつは黒澤(黒澤明)さんについてたからね。黒澤さんっぽくなろうと思ったんじゃないの。なれなかったけどね」

荒井「山とか行ってるから早死にしちゃいましたね」

恩地「あいつ、寒いとこでじっと待ってるのが好きなんだよ(一同笑)。痔だったしね。早死にしやがって。いま生きてたら大監督になってるんじゃないかね。会社の言うことにプラスアルファして、マスコミ受けするの上手かったね。いい奴だったよ。ただ痔だった(一同笑)。おれの1作目でチーフ(助監督)やってくれたんだけど、カメラの横で尻押さえてて“おれ痔なんだよ”。カチンコは出目(出目昌伸)がやってくれて、みんななあなあ。

 西村潔もチーフやってくれて、水中撮影班だったから泳ぎ上手いはずなのに、何故か葉山で海入って死んじゃったね。自殺だけど。薬飲んで入ったんだろうね。それでないと泳いじゃうもんね(一同笑)」 

新装版 されどわれらが日々 (文春文庫)

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  • 作者:柴田 翔
  • 発売日: 2007/11/09
  • メディア: 文庫

【テレビでの仕事】

 土曜ワイド劇場『戦後最大の誘拐 吉展ちゃん事件』(1979)は評価が高い。原作は本田靖春『誘拐』(ちくま文庫)。犯人役は泉谷しげるが演じた。

 

恩地「本田が中学高校の同級生で、あいつは早稲田行ってぼくは慶応行ったんだけど。あいつは新聞学科で読売新聞行って、おれは新聞部だったけど何故か助監督に。ある日、作品を書きたくなったらしい。その1本を読んですぐ、これはおれが撮るって思ったんだね。東映にもう権利売っちゃったって言うんで、バカ買い戻せって言って(一同笑)。

 向田邦子がそのころ“ちょっと面白い子いるわよ”ってレコードのジャケット見せてくれて、広い部屋で(泉谷しげると)面接した。びっこひいて入って来て、びっこの役なんでもう演技してるのか。“お前、びっこはいいけど足が(設定と)反対だぞ”って言ったら“ほんとにびっこなんです”って言われて(一同笑)。びっこなのに高いところに上がって飛び降りて、普通はできないと思うけど、ほんとにびっこでできちゃうんだからな(笑)」 

誘拐 (ちくま文庫)

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  • 作者:本田 靖春
  • 発売日: 2005/10/05
  • メディア: 文庫

 恩地監督は『傷だらけの天使』(1975)のオープニング演出でも知られる。

 

恩地「芝居のバックが動いてるのが好きなんだよね。都電とか。きょうの(『女体』)でも外向けのシーンだけロケで、あとはセットなんだよね。バックに車や電車が走ってるのが好きで。

 テレビシリーズの『傷だらけの天使』はセットを代々木の屋上にしたんだよね。後ろに中央線と山手線がしょっちゅう通る。それだけの理由で。4階建ての屋上でエレベーターがない。セット建てるのも大変だったみたいだね(笑)。喫茶店でふたりが喋ってる向こうは数寄屋橋で、車があるとか、動いてないと落ち着かない」

 

 80代半ばの人とは思えない、全編パワフルなトークだった。