三池「『怪獣総進撃』(1968)は有川(有川貞昌)さんが特技監督で、円谷(円谷英二)さんが監修です。怪獣ランドの島に怪獣を閉じ込めてて、島の周りは寒天ですね。月面も井上さんがプランが出してて、その通りになってます。海外で怪獣が暴れるシーン、国連ビルにゴジラが光線を吐いてます。このときゴジラの顔の向きと爆発が合ってないんで、無理やり光線をカーブして合わせたらしいです。怪獣の顔の向きと弾着はそんなにシンクロできない。そこで仕方なくキングギドラやメーサー車の光線は合わせるためにギザギザにしたって、飯塚定雄さんがおっしゃってました。キングギドラもポスターでは火みたいだったんですが、無視してでもギザギザにしなきゃいけなかったんですね」
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三池「『緯度0大作戦』(1969)は円谷さん晩年の作品ですね。(主人公側の)潜水艦アルファ号は井上さんのデザインです。台本にない設定をご自身で書いたメモもあります。井上さんが亡くなられた後で出てきました。敵側の黒鮫号は豊島(豊島睦)さんですね。水槽に絵の具を落として火山の爆発にする。背景をひっくり返して、カメラもひっくり返して撮ると、下から噴煙が上がるみたいになります。発案は円谷さんで、つくったのは井上さんと聞いてます」
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三池「『日本海大海戦』(1969)は円谷監督の映画の遺作です。円谷さんは井上さんに、自分の横に来なさいと言ったそうで、最後まで頼りにしていたんですね。緻密な絵コンテを井上さんが描かれていて、かなりの枚数が残っています。大プールは屋外なので昼間に撮って、夜のシーンはセットプール。船は昼間は大プールで、夜は持ってこなきゃいけない。ものすごい数で大きい。主役の三笠は7メートル。船の中に重りが入ってて、御影石って石とか特注の鉄とか。重心がないと傾くから喫水まで下げる。それを運ぶという、気が遠くなる重労働です。“特撮博物館”をやったときは、三笠のミニチュアが発見されて、熊本の巡回だけ展示できました」
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三池「円谷監督が亡くなられて、有川さんが東宝を出て、中野昭慶さんが後を継ぎます。ただ『ゴジラ対へドラ』(1971)は坂野(坂野義光)監督の一班体制。円谷監督が亡くなられた後は、辞めた方も多くて、特殊技術部は冷遇されていたようです。へドラのデザインも井上さんですね。工事現場の足場を抜けるとか、人が襲われる、花が枯れるとかも井上さんがコンテを描いてて、ラストバトルも描いていらっしゃいます。規模の大きな街のセットはつくれなかったですけど、バトルはみっちりやってます。井上さんはそれまでミニチュア専門でしたけど、この作品では本編も井上さんで、ダンスホールの平面図も残っています。ヘドラはかなり巨大で、平成ゴジラにも入る薩摩剣八郎さんが入っていて、この頭の上の部分の重さに耐えてるんですね。ゴジラは中島春雄さんで、この次の『ゴジラ対ガイガン』(1972)が中島さんの最後です」
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三池「『日本沈没』(1973)は田中友幸プロデューサーが東宝の特撮を売りにしたいということで、井上さんに直々に依頼があったということです。井上さんは東宝を出られてアルファ企画という会社をつくってたんですが、田中プロデューサーに言われて取り組みました。街や高速道路の崩壊は、井上さんのイメージ通りに画面がつくられたます。
『日本沈没』が大ヒットして、年に1本くらい特撮大作がつくられます。『連合艦隊』(1981)は、戦艦大和が主人公。造船所に頼んで、13メートルの20分の1の大和をつくりました。宣伝目的もありますね。円谷組より規模が縮小している感じもしますね。13メートルを実際の海に持っていて浮かべてますね。
『ゴジラ』(1984)は井上さん最後のゴジラで、スーパーXは井上さんのデザインです。アルファ企画で設計・制作しました。大御所になられてからも井上さんは自ら動かれて、高層ビルの窓の電飾も井上さんがやられてますね。ビルのひびも井上さんが入れています。メカのゴジラもつくられて、スーツのゴジラをつくった安丸さんが監修したはずなんですが、顔が違いますね(一同笑)。首も短いかな。メカ仕掛けで動くはずがトラブって、ピクピクしか動かない。ただこれも宣伝目的もあって全国を回ったので、役割としてはよかったかな。私も潜り込んで、のぞかせてもらいました」
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三池「『零戦燃ゆ』(1984)は、夕景にミニチェア飛ばして劇的な画になりました。背景は島倉二千六さんという巨匠で、素晴らしいです。B29 の爆撃シーンの、上から見た東京も島倉さん。地面も雲も手描きです。
『竹取物語』(1987)と『首都消失』(1987)で、井上さんは日本アカデミー賞特別賞を受賞されました。『竹取』の円盤は光ファイバーで、ものすごい数の電飾を仕込んだミニチュアです。最後に手がけられた映画は『アナザーウェイ』(1991)という潜水艦の映画です。井上さん自ら作業されてました」
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三池「円谷さんの時代からずっと井上さんが支えてきたということです。それぐらい大きな貢献をされたんですね。日本の特撮はミニチェアが売りで、ぼくらも子どものときに見ていてあこがれました。CGの時代ですが、ぼくはミニチェアが好きでこの世界に入りましたので、次の世代に渡していきたい。日本のミニチェアは永久不滅だと思っております(拍手)」
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