『学校の怪談2』(1996)の前田亜季は男子を相手に、「炬燵出しちゃうぞ」「お相撲さんにサインもらっちゃうぞ」などとたたみかける不思議ちゃん。
奥寺「何であんな台詞を書いたのか、覚えてないです」
平山「シュールな台詞を子どもに言わせる。それで子どもは何の迷いもなく、サラサラ喋る。これ何ですかとか言わずに、丸ごと捉えて喋る。それがすごいというか」
奥寺「公開処刑ですか。いたたまれない(笑)。もっと演出の話を」
奥寺氏本人は苦笑していたが、この前田亜季はすこぶる印象に残る。『学校の怪談』(1995)では教諭役だった野村宏伸が、『怪談2』では泥棒役。
奥寺「適当にバカな台詞が書けましたけど、構成には苦労しました」
平山「シリーズものにはつきものですが、同じことをするか、違うものをやるか。(『怪談2』では)書き出してもらうまでに時間がかかりました。同じキャラを野村がやるか」
奥寺「野村さんがやると決まって、1作目と2作目で同じ人物にするかどうか。これ泥棒でいいじゃないかってアイディアが出て、そういう方向でいくかとつかんだ」
平山「いかにバカなことをやるかと」
奥寺「人面犬とか。きたろうさんですね」
平山「きたろうさんに出ていただいた他の作品(『笑う蛙』〈2002〉)があるんですが、人面犬と同じお芝居でしたね(笑)。笛吹く子どもはどうして笛吹くのって訊いたら、そういう同級生がいたって。それで、うんやるかってなった(笑)。
時代が流れて、アニメーションのほうの奥寺さんになって。(当時は)自分もみんなも若かったなという気がします。20年前だけど、いまもテレビで同じようなの(怪談物)がある。子どもがいる限り、怖がったりするのはつづく」
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その後、平山 × 奥寺コンビは『魔界転生』(2003)に登板。
平山「『魔界』はぼくのほうが後追いで。東映から(のオファー)です」
奥寺「前の深作版(深作欣二監督の『魔界転生』〈1981〉)が好きでしたけど、今回はもうちょっと原作寄りでやりたいと(言われた)。時代劇はやったことなくて、挑戦してみたいと引き受けたんですけど」
平山「京都(の撮影所)へ行ってみたいと。関東者が行くと上からライトが落ちてくるというところで自分が監督できるのか。そのスリルも含めて、愉しみたかった。『エヴェレスト 神々の山嶺』(2016)でも500メートルのところへ行って、ものをつくるという」
つづいて、落語家が主人公の『しゃべれども、しゃべれども』(2007)。
平山「ぼくは落語ファンではありましたけど。(新宿の)末廣亭で打ち合わせして、飲み屋に入る。そういうの多かったですね。今年、湯布院でもやって(上映して)もらって」
奥寺「取材期間は愉しかったです(笑)」
平山「奥寺さんとやってて、とっちらかったことはないですね。作品によっては、ライターにこうやってって言うことも、ないことはないけど。奥寺脚本では、書いてくださいって言って、口は出さない」
奥寺「感謝しかありません。平山監督とは、毎回愉しいですね」
平山「『薔薇の殺意 虚無への供物』(1997)なんて、わけわかんないのもありましたね(笑)」
平山演出 × 奥寺脚本の『薔薇の殺意』はNHKBSにて放送されたミステリードラマで、伝説化している(筆者は未見)。
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平山「映画になってないけど。(奥寺氏が)台本書いて刷ったけどダメになったのが3本くらいあります。日本映画にはよくある。節操がない企画をやろうとして、もっときついホラーとかやろうとしてたんだけど。成立しなかった企画は、何らかの理由がある。自分だけじゃなくて。
実はいまも動いてるんです。いつもスッと右から左へ行くようにつくっていければいいんですけど。映画は波というか、99%勝算がなくとも1%のうねりがあればいっちゃえって成立することもある。それで失敗したりするけど」
奥寺「いつも仕事をいただいて。ありがとうございます(笑)」
平山「いまや奥寺先生ですよ(笑)」
奥寺「(アニメと実写に)違いはないですね。アニメーションのほうが、テンポ速いですけど。絵で情報が伝わるのが速い。だから冗長にならないように。でも、どちらも2時間で起承転結というふうに書いています」
平山 × 奥寺コンビがいま進めている企画は、極秘だという。
平山「そういうの平山らしくない、やめろってあちこちから言われてる(笑)」
奥寺「私は頼まれたらやると。だから『魔女の宅急便』(2014)とかも。バカじゃないのって言われたんですが(笑)」
平山「ぼくも断らない。途中でダメになることはあるけど」
10月に、平山監督のロングインタビュー『呑むか撮るか 平山秀幸映画屋(カツドウヤ)街道』(ワイズ出版)が刊行された。
平山「出版社の人に言われて写真を見せたら、飲んでる写真か現場の写真しかなかったと(笑)」
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