“日曜日には映画を殺せ”というサイトでは、さまざなな人びとの選ぶベスト映画が紹介されていて、こちらも真似してみたくなった。
テレビ『青い鳥』(1997)や小説『破線のマリス』(講談社文庫)、『深紅』(同)、『恋愛時代』(幻冬舎文庫)などで知られる故・野沢尚。以下に引用するのは野沢氏の選ぶベストである。
◎映画人が選んだオールタイムベスト(洋画)
1 『セルピコ』
2 『ゲッタウェイ』(72)
3 『ポセイドン・アドベンチャー』
4 『暗黒街のふたり』
5 『夜をみつめて』
6 『エクソシスト』
7 『わらの犬』
8 『俺たちに明日はない』
9 『ダーティハリー』
10 『卒業』
七〇年代、この十本との出逢いによって人生が決まってしまった気がする。
『ゲッタウェイ』は、その頃憧れていた二歳年上のお姉さんに連れてってもらった、初めての「大人の映画」だった。その時、予告篇で流れていた『ポセイドン・アドベンチャー』を今度は一人で見に行った。初めて自分の目で選んだ外国映画だった。
『セルピコ』を見て、観客へメッセージを投げかける創作の仕事に憧れを抱いた。
『夜をみつめて』は、あのラストのドンデン返しに「ハッハッハッ」と過呼吸になるほどショックを受けた。作り手になった今、あれほどストーリーに驚き、目を見開いてスクリーンに釘付けになることは、もうない。映画を職業にしてしまったことで、失ってしまったことが沢山あるような気がする。
『暗黒街のふたり』も『俺たちに明日はない』も、主人公の死に感情移入してしまい、一晩眠れなかった。映画に心から感動できた幸せな時代だった。
(「キネマ旬報」1999年10月上旬号)
◎映画人が選んだオールタイムベスト(邦画)
1 『激動の昭和史・沖縄決戦』
2 『青春の殺人者』
3 『砂の器』
4 『悪魔の手鞠唄』(市川崑)
5 『津軽じょんがら節』
6 『赤ちょうちん』
7 『妹』
8 『青春の蹉跌』
10 『駅 STASION』
十代のころにこの映画と出逢ってたことで、自分は創作の道に進むことになった。そう言える十本を選んでみた。
『沖縄決戦』は、親父に連れられて見た初めての一般映画だった。
『青春の殺人者』も『妹』も『青春の蹉跌』も『津軽じょんがら節』も、映画館で衝撃を受けた後、家に帰って部屋に閉じこもり、そっくりの習作シナリオを書いて興奮を鎮めたという思い出がある。模倣こそ創作の第一歩なのだ。
『悪魔の手鞠唄』を見た年、学校で連続殺人事件が起きるという八ミリの自主映画を作り、村井邦彦さんのサントラ音楽を使わせてもらった。高校二年の文化祭で上映して拍手喝采を浴び創作の醍醐味に取り憑かれてしまった。その後は一直線だった。大学時代に見た、『野獣死すべし』と『駅 STASION』… 自分の作家としての志向性が、この二本で育てられたような気がする。
(「キネマ旬報」1999年10月下旬号)