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長谷川和彦監督 トークショー レポート・『にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活』 (3)

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【『にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活』(2)】

長谷川「(ニュース映像に出てくる)皇太子ご成婚に石を投げた青年を追っかけたら、当時新宿の喫茶店でマスターをやってた。でもそっちの方向を今平は投げたな。

 (主人公の)夫をさがしてきたのは、武重(武重邦夫)さんという今年亡くなられた方。その方の勧誘の能力だな。交渉は今平さんにはできない。強引すぎるから。 

 主人公のその後は、武重さんに聞けば情報持ってたかもしれないが、ぼくは全く知りません。ぼくも(いまは)この子たちどうなってるのかな、かなりの歳だよなって思いながら見てました。

 ああしてみると女はえれえというか、主人公も母ちゃんも堂々としてて、男はこそこそしてる。男は姑息で女は強いというのが好きなんだな。そのくせ自分は家父長をやりたがる。おれの苦手な山田洋次に似てる。自分が正しいと思ってる。どうしてあんなに自分が正しいと思って生きていけるのか。

 劇映画以外では(撮影は)ほとんど山だったな」

 

 長谷川氏は、今村プロを離脱した後も今村監督とのつきあいがあった。

 

長谷川「おれは麻雀は強い。あるとき小沢昭一もいて、給料2万だから負けるわけにいかない。ゴジは“だからゴジは呼ぶなって言っただろ”。このプロやめようって。

 デビュー作(『青春の殺人者』〈1976〉)を今平プロデュースでやったのも不思議だよな。でも逃げたな。調布駅前の喫茶店で100万用意してくれないと、美術の建て込みが間に合わないって言ったら、今平も大塚和も来ない。おれは徹夜で金を集めて、“逃げるならもうやめてくれ。自分でデビュー作つくるから”って」

【その他の発言】 

長谷川おれは(今村作品では)『赤い殺意』(1964)が好きだった。能書きが少ない。『にあんちゃん』(1958)は真面目なのを撮っちゃって照れてるところもあるが、(本質が)よく出てる。学校つくりたい人だから。文部大臣賞もらうタイプだよ。『赤い殺意』はたがが緩んでて可笑しい。ファックしながらお父ちゃんお母ちゃんって言うところとか笑っちゃう。笑えるシリアス映画だな。

 『復讐するは我にあり』(1979)は、おれが『太陽を盗んだ男』(1979)を撮った年だから、えらい迷惑。敵はヒットして、おれはこけた。久しぶりに今村プロに呼ばれて、“映画見たから話そう”って言われて行ったら大入り袋があって、“面白かったぞ、ゴジ”って。こけがはっきりしたころだな。

 (『神々の深き欲望』に出演した)秀子(沖山秀子)は自殺しても死なない。そのたくましい女にあこがれがありながら、今平の奥さんはしっかりしてる。今平は淑女を欲してる。おれの方がフェアかな。おれは息子が20歳で家庭を解散したが、今平は息子にインタビューされてる。どっちが偉いかな?」

  今村監督には『未帰還兵を追って』(1971)などテレビドキュメンタリーの仕事があるが、長谷川氏もテレビでは『悪魔のようなあいつ』(1975)の脚本や『七人の刑事』(1978)の原案・脚本を手がけている。

 

山崎「今平さんは、テレビではフィクションはやらないと」

長谷川「テレビの表現はインローで、おれはアウトロー感が強い。刑務所は1回しか行ってないけど、あんときもおまわりにぺこぺこしてれば刑務所行くほどじゃなかったけど、かっこつけてるんじゃなくてできない。テレビはそれを許さないっていうか。マンガ原作でアウトローを描いてるのもあるけど、オリジナルで何かやろうとすると広い意味でインローでないと許さない。テレビドラマを見て面白いって思うこともあるが。『悪魔のようなあいつ』もいまやったらあぶないだろ。あれも視聴率悪くて打ちきりだもんな。(プロデューサー・演出の)久世(久世光彦)さんも『時間ですよ』(1971)のほうがいいかってなって。あの事件現場のシーンは山が撮ったんだよな。

 『七人の刑事』は、(TBSの)浅生憲章という駒場でいっしょに劇団やってた同い年の人間に、書いてと(依頼された)。書けねえって言って、原案だけ。あの段階で、おれは刑事物を書ける人間じゃねえなって。何か謝礼はもらったんだけど、あまり真面目にやってません。アイディアはぼくが出してますが。

 いまのテレビは、ぼくみたいなやつを入れて化学反応を見てみてダメだったら干すと、そういうことがなくなってるんじゃないかな」

 

 会場には脚本家の會川昇氏や映画評論家の山根貞男氏の姿もあった。

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