私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

石井隆監督 × 佐藤浩市 トークショー レポート・『GONIN』(2)

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樋口「佐藤さんと言えば、『南極物語』(1983)に出たかと思ったらATGの『蜜月』(1984)、『GONIN』のすぐ後に『美味しんぼ』(1996)、『マジックアワー』(2008)でナイフをなめたかと思ったら(一同笑)ダークな『闇の子供たち』(2008)と、フィルモグラフィーの振幅がすごく面白いと思うんですが、どういうお考えで作品を選ばれているんですか」 

佐藤「うーん、別にそんなに考えてないですけど。そのときそのときの気持ちですね。 ただ、32、3の頃、悪い人をやりたいという思いがすごく強くあった時期があって、そのとき『天上の青』(1994)をやったんです」 

 

 曽野綾子『天上の青』(新潮文庫)は、殺人鬼を主人公にした傑作小説だが、テレビ化されていたようである(無知で、知りませんでした)。 

 

佐藤「それがまたしんどくて、そんな時期に竹中さんから誘われて『GONIN』に出たというのを、いまでもよく覚えています」  

樋口「ここでそろそろ監督にも当時のことをお聞きしたいんですが…」 

石井「あ…。『GONIN』のキャスティングは、ほぼ竹中さんなんです。竹中さんが言うから、ぼくははいはいと(一同笑)。怒濤のごとくキャスティングして…喫茶店で会ったりして………はい………(一同笑)」 

樋口「佐藤さんの役名は万代(ばんだい)でしたね。これは何か由来のようなものが?」 

石井「あ、余貴美子さんの事務所の社長さんの名前なんです。それで、お伺いして…使ってもいいかと…で、いいよいいよと……(一同笑)。竹中さんのキャスティング力に助けられました。既成のスターさんは、ぼくが言っても断られるだけだし……はい…(一同笑)」 

 

 撮影初日は地下鉄サリン事件の日だった。 

 

佐藤「『GONIN』の現場は、何だかウェットな質感がありました。それは映画にも反映していますね。ナイトシーンでちあきなおみさんの曲が流れてきたり。そういうのに違和感を持つ部分もあったんですが、40過ぎてから、うまく言えませんが腑に落ちるようになったんです。

 電車待ちが結構あって。“電車が通らない映画がいいな~”とか言ってたら、聞こえてたみたいで監督がヌッと“すいませんね”(一同笑)。 

 石井さんと、深作(欣二)さんは夜型ですね。一度深作さんに“楽しいですか”って訊いたら“当たり前だろー”って怒られて。そりゃあなたは人を使う側だけど、こっちは使われる側ですからね(一同笑)」 

樋口「石井監督は、こんなバイオレンス作品を撮る人とは思えないほどキュートですよね。みなさん、意外さに驚かれたと思いますが(一同笑)」 

石井「………」 

樋口「現場でのダメだしは、どんな感じなんでしょうか」 

佐藤「きついことを言うときでもトーンは変わらないですよ。ただ、こちらが表層だけ、上辺だけの芝居をすると、しっかり見抜かれて指摘されましたね。本木君とキスするシーンがありますよね。バイセクシャルみたいな。あれは、バイという意味ではない?」 

石井「……はい………(その間に一同笑)。佐藤さんか本木くんか、どっちからキスするかで本木君がこだわって、もちろん本木君もいい役者ですから、ぼくはどーしよどーしよって……はい……(一同爆笑)」 

 

佐藤「(劇中で)ぼくが死んでから、終るまでまだ時間があるんですよ」 

石井「名前がいちばん前なのに、早く死んじゃうなあって言ってましたね」 

樋口「佐藤さんが死んでから、終るまで、10~15分くらいある。これも珍しいですね」 

佐藤「ちょっと『夜桜銀次』に似てるかな。あれも、菅原文太さんが死んでからまだ結構時間がありましたから」 

 

佐藤「このポスター、スタジオで全員が叫んでるのを撮ったんでうすが、これが厭でね(一同笑)」 

 

佐藤「当時はまだ珍しい真俯瞰から撮れるキャメラで、ぼくが殴られながら階段を下りていくシーンを撮ったんです。そのキャメラの性能が良くて、殴られてないのが見えるって監督がぶーぶー言うから、仕方なくほんとに殴られました(一同笑)。そういうところを見てほしいです(一同爆笑)」 

石井「タイミングを教えてもらったり、映画製作のいろんな局面で、いい役者さんには、助けられてます……はい……(一同笑)」 

佐藤「最近の映画はどれも似たような表情をしている中で、石井隆の映画は個性が強くて、“顔がある映画”だと思うんです。ぜひまた参加したいですね」 

 

 最近の石井作品は、『人が人を愛することのどうしようもなさ』(2007)、『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』(2010)など、いまひとつ納得できないものがあるのだけれども、それはともかく、年来のファンにはかなり面白いトークであった。 

 後で知ったのだが、この日は満員の客席のどこかに竹中直人氏が潜んでいたらしく、なんだ、サプライズゲストとして登場してくれたらもっと盛りあがったのに…。

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