高校生の主人公(上村侑)は『スター・ウォーズ』(1977)に影響されて文化祭に向けて仲間(福澤希空、桑山隆太)とSF映画をつくり始める。ヒロイン役は想いを寄せる女子(高石あかり)に引き受けてもらい、クラスメートの協力も得て順調に制作は進むが、ほろ苦い結果が待ち受けていた。
映画『Single 8』(2023)は小中和哉監督が自らの高校時代を描いた自伝的な青春ドラマで、小中氏の学生映画も劇中で使われている。小中氏はテレビ『ウルトラマンダイナ』(1997)や『ウルトラマンネクサス』(2004)なども撮っており、その縁で『ウルトラQ』(1966)や『ウルトラマン』(1966)でヒロイン役を務めた桜井浩子氏とのトークが2023年3月に行われた(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
【『Single 8』とウルトラシリーズ】
小中「桜井さんは『ウルトラQ』『ウルトラマン』でヒロインをされていて。この映画でもウルトラねたがあったんですけど、円谷プロで怪獣のソフビも使わせていただいて。
ぼくが高校1年で映画を撮ったときのことなんですけど、中学のときにも同じ話で男ふたりでつくったんです。いろいろ上手くいかなくて、次の年に高校の映研に入ってつくり直したんです。中学のときのは『ウルトラQ』のフォーマットになっていて、最初にナレーションで「あなたの体はあなたの心を離れ」って言って、音楽もそのまま使っています。高校1年では『スター・ウォーズ』(1977)を見て、ああいう宇宙船を撮りたいと思って。中学のときのでは円盤型だったんですけど、高校では宇宙船にして、宇宙船が撮りたいがためにリメイクした。高校のでは『スター・ウォーズ』要素が入ってきてるんですけど、もともと中学のときにはウルトラ要素でつくったんです」
桜井「いま(の小中監督は)はウルトラもつくってるからね(笑)」
小中「のちにね。ぼくの原点はウルトラやゴジラですね。その思いが『スター・ウォーズ』で違う進化を遂げた。今回の映画では(主人公が)『スター・ウォーズ』に触発されるところから始まるんですが、原点はウルトラ。
この映画の中で、女の子が宇宙人の分身として登場するシーンでどういう芝居をするのかというときに、主人公の演出が「(『ウルトラマン』で)バルタン星人に取り憑かれたアラシ隊員」と」
桜井「それ例えがよくないね(一同笑)」
小中「男の子たちは「それだ!」って盛り上がるんだけど、女の子には通用しない」
桜井「そうだよね。アラシじゃねえ(笑)」
桜井「小中さんがこういうさわやかな青春映画を撮る人だとは思わなかった」
小中「自分の話なんで撮るのに苦労しなかったというか」
桜井「肩の力が抜けててよかった、というと失礼だけど。飯島(飯島敏宏)監督に見せたいくらい。でも見たら悔しがると思う(笑)。ぼくだって青春時代があったんだからこういうのを撮りたいって言うんじゃない?
(『Single 8』は)見終わった感じがそこはかとなく、ほのぼのするのよ。ちょっと風が吹いてきたな、っていう。飯島監督ってそういうのを撮るじゃない? 小中さんも晩年の飯島監督とずっといっしょにいたから似ちゃったのかな(笑)。飯島監督は氷山の下にいろんなものがあるけど、作品はさらっと出す。
俳優さんたちが自然すぎて、こういう女の子いるな。微妙な芝居がものすごく上手い。(『ウルトラQ』で桜井氏が演じた)江戸川由利子は微妙な芝居ができてなくて、子役の芝居みたいで、いま見ると汗が出るんですけど。この主役の人(高石)はにっと笑ってそこから崩れる。この人に江戸川由利子をやってくれたらいいかなって思うくらい」
小中「役者さんたちにはカット割りを説明しないで、ワンシーン自由に動いていいからって。それをカメラのポジション変えながら追いかけました」
桜井「昔こういうのの女の子の役をやりたかった。『ウルトラQ』じゃなくて(笑)。でも小中さんが撮るのは信じられなくて、もっと小難しいのかなって(笑)」
【ウルトラシリーズの想い出 (1)】
小中「桜井さんはそれまで普通の作品に出られて、特撮物に関わられて怪獣や宇宙人に驚くというのは自然に入られましたか」
桜井「いやいや全然。(怪獣や宇宙人の)芝居は養成所で習わなかったもん(一同笑)。恩師が山本嘉次郎監督ですけど、習わなかったですよ。いっとう最初が『ウルトラQ』の「マンモスフラワー」(第4話)のお濠端で怪しい蔦にびっくりするシーン。どうしていいか判らないいわけ。(実際には)蔦なんかないじゃない? どうすんのか、困ったなと思ったら、佐原健二さんはベテランでもう本多(本多猪四郎)組でも主役もやっておられるから。そしたら一点をきちっと見て、あたかもそこに何かがいそうな。この人の中で何かを想像して演技してるのかな。一平くんの西條(西條康彦)さんは芝居がオーバーだったんだけど(笑)。私はこの間をやればいいのかなって」
小中「西條さんのキャラだとあれぐらいでいいと」
桜井「西條さん、ごめんね(笑)。ふたりの間でと思ってやったら、監督たちは何も言わなくてそれでずっと来ちゃったの」
小中「今回の映画の中で、バリアを触ろうとしてバリバリバリッとなって驚くんだけど、後で合成するから実際にはなくてイメージしなきゃいけない。主人公が「バリバリッ」って口で驚くきっかけを言うんだけど、わざと大きな声で(俳優を)驚かせようとする。あれは実は、8ミリ時代よりもウルトラの現場のほうで同じ経験をしています」