【特撮現場の飯島監督(2)】
『ウルトラマン』(1966)の第5話「ミロガンダの秘密」では植物怪獣が登場。
古谷「初日は目が見えなくて、なかなか慣れないし。カメラも35ミリででかいし、照明も熱かったしねえ。(最初の相手は)グリーンモンスで(植物怪獣だから)あまり動かない。飯島さんが殺陣をつけるわけではないし、高野(高野宏一)カメラマンでもないし、結局は誰が動きをやるのと。全然決まってないから現場の雰囲気が悪くて。やっぱり特撮の監督がやるべきじゃないかってことになったら、的場(的場徹)監督が「私はそれで呼ばれた覚えはないです」。途中でいなくなっちゃって(笑)飯島さんと高野さんと(合成の)中野稔さんも現場に来てて「どうしよう」「どうしよう」と言いながら、こんな動きでやってみようかとか」
稲垣「飯島さんは本編の監督でしたけど特撮にも全部つき合いましたね。いま言われて的場さんが特技監督だったんだなと思い出した。本編も特撮も両方やるって結構大変なんですよ。初めに撮った本編の編集もしなくちゃいけないし。編集で徹夜して寝てないのに特撮に来たり、すげえと思いましたよ。ふらふらなのに、とにかく愉しんでた。体力的には限界を越えちゃってるのに」
古谷「最初はのぞき穴が開いてなくて、全く見えない。成田(成田亨)さんが穴を開けて「これで敏ちゃん、見えるか」って。大きく開けるわけにはいかないから「いいですよ、このくらいで」と。最初は目を綺麗なダイヤカットで素通しのアクリルを使って見えるようにすると設計したと。完璧に見えるように透き通ってるアクリルを目の位置にはめ込むはずが、その作業を佐々木さんという方がさぼって(一同笑)。結局、佐々木さんが徹夜でやったけどできなくて、目が開いてないまま現場に来ちゃった。「ああ、佐々木は!」って成田さんが、仕方ないんで自分で開けたんですよ。後で修正する予定だったけど、結局は忙しくなっちゃってそのまま。佐々木さんは酒飲みだから。あれでよかったかも(笑)」
小中「スペシウム光線のポーズは有名ですね」
古谷「あれは全員でやったんです。ぼくがいろんなスタイルをやって、飯島さんはグーだと人間的だから絶対にやめようと。手を開くようにして、それでどんなポーズに結びつけるか。高野さんや中野さんとかと決めて。中野さんには、合成するから何分何秒の間「ちゃんと停止してろよな」と言われました。「だめだよ、動いたら。おれ描けねえよ」ってまた偉そうなんだよね(笑)」
稲垣「飯島さんの組のとき、中野さんが本気出してる。こんなにペン入れたやつは、そんなにないですよ。他であんなのは見たことない。面倒くさいですよ、あれは(一同笑)。中野さんは飯島さんとはいちばん合ったんじゃないでしょうかね」
小中「(『ウルトラQ』〈1966〉)「2020年の挑戦」で飛び込みしながら消えるカットは動きながらで、中野さんの本気度が伺えますね。当時は(何度も同じ動きができる)モーションコントロールカメラはないんで、同じ動きを何度も人力でやったわけですね」
稲垣「内海(内海正治)さんという東宝のカメラマンで上手いなあと」
田中「私がついていかれなかったのはバルタン星人(「侵略者を撃て」)。スクリプターは朝、現場で監督のカット割りを写させてもらうんですけど、バルタン星人が何体も分身して俳優さんがリアクションする。ああいうことは説明されてもわかんなかったですね。アフレコのときにあらこうなるんだ(笑)。すごいこと考えてたんだな」
古谷「稲垣さんもわかんなかったよね」
稲垣「わかんなかった」
田中「中野さんは判ってたと思いますけど」
小中「飯島監督は特技監督に近い面もありましたね」
稲垣「バルタン星人では中野さんも、TBSで徹夜して撮影するのにつき合いましたからね。廊下や階段に(バルタン星人が)出てくるロケ地はTBSだったんですよ。中野さんも撮影に立ち会って、どういう合成になるのかぼくらは判らないですね」
小中「中野さんが飯島監督に張りついてこれでOKみたいな会話をしていたんでしょうね」
田中「ふたりの中では完成図が出来あがっていたんですね」
古谷「あっちゃんはスクリプターなのに当時は判らなかったの?」
田中「いくら説明されてもああいう画像はいままで見たことなかったんですよ」
古谷「あっちゃんも判らないことがあるんだ(笑)」
小中「飯島監督の次回作になる映画を企画して田中さんにも動いていただいたりしたんですが」(つづく)