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金子修介 × 大森一樹 × 富山省吾 トークショー “怪獣からKAIJUへ” レポート (1)

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 ゴジラ』(1954)から61年。昨2014年にはアメリカのレジェンダリー・ピクチャーズ制作の『GODZILLA ゴジラ』が大ヒット。日本でも久々のシリーズ最新作『シン・ゴジラ』が2016年に公開されることも発表された。

 10月、文化庁映画週間のシンポジウム「怪獣からKAIJUへ」が飯田橋の神楽座にて開催された。金子修介監督、大森一樹監督、富山省吾プロデューサーが登壇。モデレーターは井上伸一郎KADOKAWA代表取締役専務が務める(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

井上「『三大怪獣地球最大の決戦』(1964)を見てからの怪獣ファン。今日はモデレーターとして3匹の怪獣を相手にする、そういう役割です(一同笑)」

 

 金子・大森・富山氏が登場。

 

金子「こんなに熱いまなざし…(一同笑)」

大森文化庁という国の機関が怪獣を取り上げる。ほんとかよと思ったのですが(笑)」

 

 金子監督は『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)に始まる平成ガメラ三部作を発表。2001年には『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』を撮り、ガメラシリーズとゴジラシリーズを撮った稀有な監督である(テレビ『ウルトラマンマックス』〈2005〉のメイン監督も担当)。 

 大森監督は『ヒポクラテスたち』(1980)や村上春樹原作『風の歌を聴け』(1981)、『わが心の銀河鉄道』(1996)など青春映画で知られる。ゴジラシリーズでは『ゴジラvsビオランテ』(1989)、『ゴジラvsキングギドラ』(1991)の2本を撮っており、特に前者はシリーズの人気投票で常に上位に来るほど評価が高い。近年は大阪芸術大学芸術学部映像学科教授も務める。 

 富山プロデューサーは『ゴジラvsビオランテ』から『ゴジラ FINAL WARS』(2004)まで平成のゴジラ映画をプロデュース(金子・大森監督のゴジラも富山氏が製作)。大森監督とは『恋する女たち』(1986)などでも組んでいるほか『誘拐』(1997)、『ハゲタカ』(2009)などを送り出し、2004年には株式会社東宝映画社長に就任した(2010年に退任)。

 

金子修介監督(1)】

金子「以前、大映に青春映画をつくらないかって言われたんだけど、そのとき『大魔神』(1966)の新作を企画してるって聞いて、大魔神じゃなくてガメラのほうがいいって言ったのが(ガメラを)監督するきっかけ。

 大森さんが(『ゴジラvsビオランテ』を)撮ったので、3歳くらい上で、ああ間に合わなかった。大森さんが2本撮って暮れに見に行ったら、予告編で次はモスラだと(『ゴジラvsモスラ』〈1992〉)。監督の名前がないので、これはやれるかもしれないと。モスラゴジラってのは自分の中で大きい。空中戦も地上戦もっていうのが魅力的で。大森さんがやらないならと思って富山さんに年賀状送った。でも監督は決まっていて、そしたら大映の人がゴジラの仇をとりましょうと。

 (ガメラゴジラの違いは)ゴジラのほうが、人気がある(一同笑)。ガメラは会社が思ってるほどではない。

 でもゴジラガメラが偉大だとつくっていて思ったのは、話を聞いたときからできることが決まっている。いろんな映画(の企画)が、俳優が拒否したりして沈む。監督にとって、これをつくるって決まっているのは大きい。つくるかつくらないか判らない企画をやって、消耗してその間の拘束の代償はない。それで監督は討ち死に。でもゴジラガメラは決まっていて、だから文句を言うこともできるし。

 (『ガメラ 大怪獣空中決戦』では)ガメラは子どもの味方だと言われて、いやそれはダメだと言っても降ろされなかった。企画者の言ってることを頭から否定したわけで、若かったのもあるけど。

 伊藤(伊藤和典)さんの台本ができて、クランクイン直前にこの脚本だと「生体兵器」だと言ってる。当時の大映の営業から、ロボット兵器から怪獣に戻してくれと。監禁されて、この設定を変えろ、いや変えていただけませんかと(一同笑)。降ろされそうな態度をしても、降ろされない。制作は1994年ですね」

井上「当時はバイオ兵器が発達していなくて。兵器というとロボットでしたね」

金子「怪獣映画って何かと考えるに、日本は戦争をしないと決めていてこんなに流行ったと思いますね。戦争映画をつくると反省と後悔ばかりでエンタテインメントにならない。その代わりに怪獣映画がつくられている。『ガメラ2 レギオン襲来』(1996)は特にそうですね。こんなに怪獣がいっぱい生まれた、怪獣文化の原因は、戦争を封印したこと。だから花ひらいたんですね。いまは流行らないと思います。

 この国は戦争しないと決めてたのが大きい。戦争ウィルスが怪獣として現れ、自衛隊や戦闘部隊、ウルトラマン、わけのわからないのがやっつけてる。レジェンダリー版ゴジラオバマ政権の厭戦気分と関係があるんじゃないか。日本の次のゴジラは樋口(樋口真嗣)さんだけど(その内容は)社会的じゃなく極私的になっていくんじゃないかな。だからガメラには、ビジュアル重視じゃなく社会的視点を持つ演出家が必要かなと」 

 ここで金子監督の『少女は異世界で戦った』(2014)の導入部が上映される。この作品では、核兵器や銃の存在しない世界観が冒頭で説明される(それゆえ若いヒロインたちが剣で戦う)。アメリカのブッシュ前大統領もねたにされている。

 

大森「怪獣と何の関係があるん?(一同笑) 単なる金子ワールドでしょ」

金子「美少女を愛でるというか(一同笑)」

大森文化庁の行事で…」

金子「やっぱり大学教授だからな(一同笑)」(つづく

 

【関連記事】金子修介監督 インタビュー(1999)・『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1)