宇宙怪獣キングギドラ撃退のためにゴジラ・ラドンを貸与してほしい、その代わりにがんの特効薬を提供すると地球に持ちかけてきたX星人。その裏には、おそるべき陰謀があった。
『怪獣大戦争』(1965)は、怪獣アクション満載で侵略宇宙人との戦いを描いたサービス満点の娯楽作。かつて『ゴジラ』(1954)や『空の大怪獣ラドン』(1956)をシリアス描いた本多猪四郎監督 × 円谷英二特技監督のコンビが、コメディータッチで快調にドラマをつづっている。特に愉快なのが発明家の三枚目青年(久保明)の部分で、金もなさそうなのに美しい彼女(沢井桂子)がいるあたりなどいろいろ想像してしまう(脚本の関沢新一の功績も大きい)。笑いもありながら、宇宙飛行士(ニック・アダムス)とX星人の女性(水野久美)との愛など強烈なエピソードも描かれている。
2月に、横浜市にて沢井桂子氏と特撮助監督を務めた中野昭慶氏のトークショーがあった(当初は久保明氏も来られる予定だったが、体調不良でご欠席)。その日は、午前中は雨降りで、開始時刻には晴れ上がった。
沢井「わりと晴れ女(一同笑)。
久保さんとは2、3年前、池部良さんをを偲ぶ会でお会いして、ちょっとお元気ないと思ってましたけど」
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【沢井桂子氏 デビューのころ】
沢井「私は物心ついたころから女優さんになりたくて、母や祖母に映画や舞台につれてってもらって、小さいときからなりたいって図々しく思ってました。
(東宝ニュータレント)第4期で、黒沢年雄さん、高橋紀子さん、いい方がいましたね。映画界へ行くって言ったら反対されて、怖い人もいるし。東宝さんはサラリーマン映画とか明るい感じでいいなって。ちょうど募集があって、全国から何千人。審査員の方が30人くらい、俳優さんや監督さんが30人くらいひな壇にいて “あ、あそこに○○さん” って。映画でしか見なかった方が。養成所は帝国劇場、いまの帝劇です。山本嘉次郎先生が校長で、そこで半年勉強して。(配属先が)映画と決まって、スタジオを見学。私は、映画がいいと思っていました。山本先生が『狸の花道』(1964)というのを撮っていらして、黒沢年雄さんも高橋紀子さんもみんなちょっとした役でした。1回NGを出すと、100円。大俳優さんが30回くらいNGを出されて(一同笑)、こっちもドキドキして。止めるとお金がかかると言われて」
中野「フィルムにお金がかかる。テープなら無制限だけど。フィルム時代は女優さんも、まずNG出さないってのが条件。東宝でNG出さないのは、三船敏郎と小林桂樹。そういう厳しい時代でしたね、俳優さんにとっちゃ」
沢井「テレビ『のれん太平記』(1964)では、乙羽信子さん、沢村貞子さん、錚々たる方々が出ていらして、その娘役で役名がつきました。あの時代はテレビもよくなってきて、最初はテレビに出してどのくらいできるかと。でもテレビに出るって言ったら、下になるから止めなさいって言う人もいましたね」
中野「電気紙芝居って言ってた。テレビに出ると落ちこぼれみたいな(笑)」
沢井「重役の方に、テレビでちゃんとやったら映画に出すって言われて、がんばろうって」
中野「特撮に出た女優さんは売れますよってジンクスがあった。沢井さんも含めて、片っ端から出なさいと」
沢井「小林桂樹さんは、撮影所で私たち後輩の面倒をよく見てくださって。重役の方がつけてあげてよって言って、木へんが入ってる名前がこれからはいいと。2、3日して、芸名決まりましたよって連絡があって、沢井桂子に。
『海の若大将』(1965)では、泳げないのに島の娘役で泳ぐ役(笑)。古澤(古澤憲吾)監督はすごく怖い人で、泳げて潜れるようにしろと。でも結局吹き替えで。水着もはずかしくて、スパッツもないし。加山(加山雄三)さんも “厭がってるから” って」
中野「ニック・アダムスも泳げない(笑)」
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本多監督 × 円谷特技監督のコンビによる『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(1965)に、沢井氏は原爆症の女性役で出演。ニック・アダムス、水野久美と『大戦争』以前に共演している。特撮のチーフ助監督はやはり中野氏。その後、沢井氏は本多監督の『お嫁においで』(1967)にも出演。
沢井「『フランケンシュタイン』では死ぬ役。本多監督と聞いてほっとして。優しいですから。優しくて、ちゃんと指導してくれる。『お嫁においで』も忘れられないですね。
ニックさんは博多言葉で変な言葉を覚えてきて、みんなを笑わせてました」
中野「あれはスタッフ。はずかしい日本語をいっぱい教えた。本人はいい言葉を教えてくれたって言ってた(一同笑)」
沢井「本多さんの3本は、あまり間がなかったですね。『お嫁においで』も水着で厭だった(笑)」
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沢井氏はテレビ『ウルトラQ』(1966)にもゲスト出演。『ウルトラQ』には、主演の佐原健二をはじめ東宝系の俳優が多数出ていた。
沢井「『ウルトラQ』はこの前ですね。黒部進さんと。蜂の話? ああモグラでしたか(第8話)。大きなモグラを前にするとか、よく判らなかったですけど。『ウルトラQ』は、いますごく有名ですよね。佐原健二さんもいらして、東宝の方は気さくでしたね。スタッフもいろいろ教えてくださって。ほんとに東宝には感謝しています」(つづく)
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