私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

山際永三 × 沖田駿一 × 白石雅彦 × 上野明雄 トークショー レポート・『ウルトラマンエース』(3)

【中盤以降の『エース』(2)】

白石「『仮面ライダー』(1971)の敵と違って(『ウルトラマンエース』〈1972〉の)ヤプールは何がしたいんだかもよく判らない。そのあたりは演じていていかがでしたか」

沖田「いろんな超獣が出たんだけど1回も会ったことはないんでね(一同笑)。棒に布切れを巻いて「目線こっち!」「この先、目線でーす」みたいな。

 アフレコの帰りにみんなで、東宝撮影所の特撮のところをのぞきに行って。結構広いセットだったですね。超獣と戦うシーンとか。ミニチェアがたくさんあって一発でNGなしでやるのは大変だなあって。手をかけて、いろんな人が携わっているんだなあと思いましたね」

山際「特撮もカメラ2、3台だったのかな」

白石「壊し物のシーンだけは2キャメ回してたと思いますけど。普通の格闘シーンはワンキャメですね。東宝の映画での川北(川北紘一)組は通常が2キャメで、壊し物は4キャメでしたけどテレビはそこまで時間的な余裕がない。どうやって効率的にやるか。

 特撮は一発OKがあまりなくて、殺陣とか操演とかどっかずれる。テレビは妥協しながらやってるかもしれません」

沖田「(本編では)弾着をよく撮りましたよね。環八の近くの空き地とかで、車の走る周りに弾着を仕込んで。爆発からあんまり離れてると迫力がないから、結構ギリギリのところを走って。いまだったら都内じゃ無理ですけどね」

白石「刑事ドラマと違って人をあまり撃たないんで。人を撃って血が出るのは人体弾着っていうんですが手間がかかる。特撮はそれがないですね。空とかを撃つ(笑)」

沖田「忙しくて(当時の)放映は見てないですね。アフレコで見ただけで、まとめて見たのはDVDが出てからですね。アフレコでは自分の声入れるところだけしか見てない。

 ロケには結構行きましたね。妙高高原に行ったのは山際監督じゃなくて筧(筧正典)さんの回だったですか。あと沼津とか」

白石「沼津の回(第20話「青春の星 ふたりの星」)は次回作(『ウルトラマンタロウ』〈1973〉)の篠田三郎さんがゲストなんで、そのために当て書きですね」

 山際監督の第28話(「さようなら夕子よ、月の妹よ」)で星光子は退場。

 

山際「ぼくも何で辞めるのか、熊谷健さんってプロデューサーに何でって訊いたんですけど彼もしゃべらない。一説によると役者がいじめたみたいな話もあって、それもあったかもしれないけど(一同笑)主な理由じゃなくて。北斗と南が同じ場所にいないと変身できないとか、脚本家のほうからも書きにくいって話が出てたんですね。石堂(石堂淑朗)さんがいなくなるってのを書いてくれて面白かったですけどね」

白石「石堂さんは自分が書いた作品を見てるかどうかも怪しい(笑)」

【『エース』の制作陣】

 『エース』のメイン脚本は市川森一だが、中盤以降は田口成光が多数執筆。

 

山際「田口さんは金城哲夫上原正三というふたりの円谷出身の脚本家とは別の役割を果たしたと思って、特に最近ぼくは再評価しています。彼のよさってのはね、子どもの二面性とか。『帰ってきたウルトラマン』の「次郎くん怪獣に乗る」は珍しい話で、円谷プロはSFで宇宙の話が多いですけど、田口さんのは地球の子どもから始まってぼくとはぴったり合ってやりやすかったです」

白石「金城さんと上原さんは沖縄出身ですけど田口さんは信州のりんご農家の生まれで、普通の家庭に育った感がありますね」

上野「田口ちゃんのことは一(円谷一プロデューサー)さんがすごくかわいがっていたんですね。田口ちゃんも一さんの『煙の王様』(1962)が好きだったんですって。ふたりともロマンチストなんですよ。ぼくとは同じ長野県出身で仲よくしてました。

 田口ちゃんもぼくも童話が好きで、ぼくは入社したときから山中恒さんや佐野美津男さんと仲よくて。彼も児童文学をよく読んでいたので山中さんの新刊が出ると彼に紹介したりして」

山際「TBSプロデューサーの橋本(橋本洋二)さんは子ども時代の話が必要だということで、子どもの体験でこういうのがあるんですけどって言うと「え、何? ぜひやってみてよ」っていう人でしたね」

白石「橋本さんはラジオ時代に子どもを主人公にしたものを演出なさっていて、そういう題材が好きなんですね。第2期ウルトラでは橋本色が強くて、子どもの世界とSFとが融合された感があります」

上野「橋本さん自身も児童文学の雑誌に文章を書くぐらい子どもの本に関心がありました。単に戦えばいいんじゃなくて、なぜ変身するのか必然性がいるというのをさかんに言ってました。戦いが少なくなってドラマ優勢になると視聴率は落ちてくるんだけど、そういうので作品が評価されたんだと思いますね。

 『エース』が始まるときに橋本さんが「今度は合身するんだよ」って。森一さんはその年に結婚したんですね。結婚祝いで「合体だ」って(笑)」

白石「橋本さんは難しい話は山際さんにやってもらおうというのがあったみたいです」

山際「ぼくはそういう役割。難しいかどうか(笑)。『帰ってきたウルトラマン』では参加予定の実相寺(実相寺昭雄)さんがいなくなってアートシアター(ATG)のほうへ行っちゃったんですね。実相寺の代わりに山際を入れとけばいいだろうと」

沖田「(第23話「逆転!ゾフィ只今参上」などの)真船(真船禎)監督は俯瞰が多くて長回し。筧さんなんかとはまた全然違う撮り方でね。台詞を全部頭に入れとかないと。長回しも多いし手持ちも多いし、刺激的で面白かったですね」

山際「TBSから来た人でぼくとは気が合いました」

沖田「『エース』ではそんなに何本も撮ってないですよね」

白石「お忙しくて売れっ子でしたから。真船監督や山際監督の強烈な作品で『エース』にはある種異様な世界がありますね」(つづく