私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

佐伯孚治 インタビュー “わが映画人生と組合体験” (2010)(4)

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 仕事を干されているあいだ、子供の学費が出せなくなって、印刷工場の夜勤をやったこともありました。大きな紙をそろえるのもうまくなったんですが、その現場の主任をやってくれと言われてやめました。それとTBSのラジオの構成台本も4年か5年やりました。最初は『チャターボックスS』っていう黒柳徹子がダジャレを次々飛ばしていく番組で、ダジャレが思いつかなくて苦労しました。総理府が提供した『クローズアップにっぽん』というのもやりました。

 それを何年か続けていたら、行きたい外国に出かけて番組をつくってもいいというので、1980年、連帯の運動が盛り上がっていたポーランドを希望しました。ポーランドの学生生活、ポーランドのジャズ、ポーランドの映画などのテーマで5本の番組をつくりました。

 ビザがなかなか取れなくて、やっと入ったワルシャワは困窮そのもの、店に商品は何もなく、あるのは食料や日用品を手に入れようと当てもなく並ぶ行列ばかり。そんな中でワイダ(引用者註:アンジェイ・ワイダのインタビューをしたり、ジャズマンたちの演奏を録音したりしましたが、ある朝、ホテルの食堂に降りると、従業員たちの胸に、一斉に連帯のバッジが光り、みなの顔が意気軒高と輝いているのです。彼らの運動の拡がりと力強さを感じることができました。81年1月のことです。

 

 子供番組で反戦を訴える

 5年ぶりに東映制作所で仕事ができるようになったときのことは忘れられません。後輩の助監督諸君が僕の復帰を喜んで、いろんな形で応援してくれました。子供番組で『怪盗ラレロ』というシリーズがあって、子供たちが毎回ラレロとやり合う話です。オープンセットに何かで使った戦車が放り出してあったので、それを使って反戦ものをやろうとなったのです。

 戦争を知らない子供たちが、魔法を使えると時間するラレロに「じゃあ戦車を出してみろ」と言います。ラレロの呪文で戦車は出てきますが、サイパン島で玉砕した将軍の幽霊も一緒に出てきてしまう。最初は威張りくさった将軍も実は悲しい立場だと判って同情した子供たちは彼をかくまってやります。一方戦車は、夜な夜な街を動き回ってちょっとした悪さをしていましたが、これを見つけたパチンコ屋のおやじが、これは店の宣伝に使えるとヌードモデルたちを乗せて店の前に置き、軍艦マーチをじゃんじゃん鳴らし始めます。

 これを見た将軍は、怒り狂ってモデルたちを突き落とし、自分が砲塔に乗って、この平和にたるんだ街をぶち壊せと号令を発します。戦車はぐるぐる砲塔を回しながら街を片端から壊し始めます。将軍はすっかり昔の将軍に戻って有頂天ですが、戦車の動きで砲塔から転げ落ちる。戦車はその将軍も攻撃します。こんな一部始終を見て、大慌てにあわてた子供たちは、ラレロに頼んで戦車と将軍をあちらの国に帰して貰いました。すると、とあるビルの屋上から「戦争は終わった」っていう映画の垂れ幕が降りてきて、ジ・エンドとなりました。

 この映画は、脚本の段階でテレビ局から次々とクレームがつきました。何度も議論して、サイパン島をフライパン島に変えるということで何とか納得して貰い、撮影にこぎつけたのです。 

 それからは、さっきも話が出た組合自主制作の『ザ・スーパーガール』や日曜朝9時からのフジテレビの子供向けの番組を次々やれるようになり、定年退職後もこの職場で仕事を続けました。

 そんな頃、国労が5千万、東映が5千万、制作費を出した『高原に列車が走った』っていう映画をつくりました。20年ぶりの劇場映画です。軽井沢を舞台に、高校の女教師(美保純)が生徒たちと列車の増発運動をやって、ついに実現するというストーリーです。撮影には国労が協力してくれて、先生を見送る場面では列車のスピードを落としてくれたりしました。でも作品はまったく当たらなかったです。上映もニュー東映という小さなコヤ(映画館)だけでした。最後に国鉄本社の交渉場面で組合が「労働条件については一切文句を言わない」と言うんですが、どうもそのあたりは国労にとって微妙な問題だったようですね。 

 闘う仲間たち

 つい先だって、東映労組のOB会というパーティーに出席しました。OB会ですから、一番若いのが退職したばかりの61歳、一番年長者が82歳の僕でした。ここ何年かのあいだに映画の製作状況がすっかり変わって、会社は撮影のスタッフを社員として採用していません。撮影所の組合員はいま4人だけということです。企業内組合の悲しさですね。でも、この会に出席した20数名の仲間たちは、みなそれぞれの目標を定めて生きているようです。ある者はバラバラの映画労働者を個人加盟の労働組合に組織したり、ある者は映画人九条の会で活躍したり、地方に介護施設を立ち上げて福祉事業に専念したり、派遣村の手伝いをしたり、このひどい状況に少しもめげることなく闘い続けている姿がありました。

 ここには、一緒に闘ったときの気分がそのまま続いているようで、年甲斐もなく、何か力づけられるような気がしてきました。

 以上「われらのインター」Vol.29より引用。 

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