【自作について】
今年6月のアヌシー国際アニメーション映画祭では湯浅政明監督『夜明け告げるルーのうた』(2017)が長編部門最高のクリスタル賞、片渕須直監督『この世界の片隅に』(2016)が同部門審査員賞を受賞した。
片渕「ぼくと湯浅くんは、普通はこうだってとこから外れるふたり。日本でも世界でもど真ん中にいないふたりで、アニメーションってこういうこともできるって可能性の広がりも示せているのかな。海外の人が見たら、こんなアニメ初めて見たって思うのかもしれないと。意表を突かれて、思わず賞を与えてしまった(笑)。『ちびまる子ちゃん』をやってたふたりなんだけど、芝山(芝山努)さん(チーフディレクター)のときはアヴァンギャルドな画づくりで、全くパースがついてない。いまのは奥行きがあるけど、昔は展開図で真正面と真横しかない。歩くときは真横顔で歩くとか。意外にも、表現の実験場でした」
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片渕「(日本のアニメーションは)判りやすいけど写真的ではない。抽象化されている部分もある。『この世界の片隅に』の場合は、原作マンガが俯瞰で描いてあって、正面の画がない。最近のテレビアニメは真正面の画を多用してて、ゲームの影響だって言う人もいる。ゲームキャラがプレイヤーに話しかけてくるとか。大友克洋以来だと思っていて、手塚治虫も横山光輝も正面は描いてないです。『この世界の片隅に』はちょっと昔ふうに描いてて、平面パースに近い。実写はこんな高くにカメラ据えないですね。『マイマイ新子と千年の魔法』(2009)は子どもの世界で、カメラを下げてて。意識的に切り替えて、次々パンして子ども追いかけてましたけど、『この世界の片隅に』はフィックス。やり方を変えてます。どうしてもローアングルになるときもあるけど、上から囲まれてるのが多いです」
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片渕「コスト削減はいろんなことやってますけど、がっかりさせるというか、進んで言わないですね。空襲で戦闘機がワーッと来ますけど、戦闘機は1枚ずつしか描いてないです。空襲は端折りまくってて。人間の動きでは、1ミリの間に何本線を引くか競争して。じわっと動いてる感じ、そこに人が存在してる感じが表現できるかなと、理屈を自分たちで構築してやっていました。それをやるには省力して、空襲とかは。余計な手間は、やってて自分でも厭になっちゃいますから」
【映画の見方】
片渕「どこの国もいっしょだと思いますね。ハリウッドが支配力を持っているか、エリアによって違いますね。ヨーロッパは、そうじゃない文化のところにハリウッドが入ってきて、2本立て。メキシコは、ハリウッドがバンバン入ってきて、そういうものの中で映画を見るようになって。でもメキシコのアートアニメーションは、これ(『翼と影を』〈2015〉)より敷居高いですよ。つくってる人の人生が投影されて、どこの国だからどうだってことはなくて、個人が映像にどう接しているか。。そんなに変わんない気がします。
『この世界の片隅に』は(海外では)よりによってアメリカで最初に上映されて。会場はみんなコスプレイヤーで、イェーイってやるために来て。『この世界の片隅に』でもギャグで受けて、原爆のキノコ雲でもワーッと受けて、それも映画の見方の文化なのかと?がつきました。そういう見方を普段してると、そうなる。『BLACK LAGOON』(2006)でもイエーイとなってました。この会場に来る人はそういう見方。(ハリウッド映画は)エンドロールは棄てる。最初に盛り上がる曲をやって、あとはどうでもいいBGMで、最後に向こうの映倫みたいなマーク。そういうのに慣れてると、仕掛けてあると思わない。香港映画はNG集で、見方はさまざまですね。アヌシーは、エンドロールの途中で帰る人がほとんど。ちゃんと見てる一群もいたけど。アヌシーでは上映前にみんな紙飛行機つくって、スクリーンに飛ばす。そういう文化もある。アヌシーの見方ですね」
多忙な片渕監督は「9月2日に岩手県の釜石に行って、その足でパリ行かないといけない。パリに行く荷物を持って、釜石に行かないと(笑)」という。
片渕監督がアメリカの取材に答えて、戦前の資料を集めた経緯を話して広島の写真などをスカイプなどで紹介したところ、時間をおいてインターネットニュースになったそうで「説明するのも意味があるのかな」と話しておられた。
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