私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

ジェームス三木 講演会 レポート・『片道の人生』(3)

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 日本はせっかく平和憲法があるのに、警察予備隊をつくって保安隊から自衛隊に。軍隊とは言わずに抑止力と。でもアメリカ人がピストル持つのも抑止力で、それでしょっちゅう殺人が起きて、抑止力ってあぶない。スイスやコスタリカみたいなのがいちばんいいと思ってますけど、抑止力って言葉にだまされちゃいけない。

 イスラム自爆テロをやってますが、日本も全く同じだった。神国日本は負けないと、大きな戦争を起こしてしまった。

 国家と政府がごまかす。政治家が国になりすます。「国としてはこういう判断を」と言ってるけど、国じゃなくて政府でしょって。もうちょっと言葉に厳しいほうがいい。

 安倍(安倍晋三)さんが拉致とうるさく言ってますが、秀吉は75000人(の朝鮮人)を拉致して、その人たちは妾にされたり、東南アジアに身売りされたり。結局、国には戻らなかった。もう日本に落ち着いちゃって、帰るに帰れない。

 国家のトップは自分の政権を長くしたいと考えていて、内乱がいちばん怖い。すると外敵をつくる。敵をつくると、国民は一致団結。外にあぶないことがあると言って団結させようとするのが、昔から政治家の常套手段。そういうことに惑わされちゃいけないと思いますね。

 

 次のオリンピックは、ものすごいお金をかけて国威発揚を考えてるようですけど、大昔は走る、跳ぶ、投げるだけだった。スポーツの根本的な素晴らしさは、戦争しなくて済むと言うこと。闘争本能をスポーツに向けることで、仲良くできると。でもアメリカはモスクワのオリンピックをボイコットして、ソ連アトランタをボイコット。実にばかげた話で。

 ベルリンオリンピックは50種目もなかったけど、いまはゴルフも卓球もシンクロナイズドスイミングも入って。シンクロは美しいけど、スポーツですか。ゴルフもゲームじゃないか。男子のフィギュアスケートも芸術にしたほうがいい。悪いけどスポーツと思えない。ベースボールは野球、サッカーは蹴球って言いましたけど、ゴルフは日本語ないから“接待球”ってどうかな(一同笑)。

 オリンピックは金かけないですっきりしたほうがいい。小さい国はできなくなって、でかい国しかできない。そういうことを政治家は言わない。

 

 勝手なこと言ってますが、今回書いた本(『片道の人生』〈新日本出版社〉)もそんなようなことに触れて書いたつもりです。これあんた、間違ってるってあるかもしれない。

 歳とってくると、記憶力が落ちてくる。立食パーティで会った人の名前が思い出せない。誰だったかなと思って、30分くらい出てこない。田中角栄はうまくて、「お名前なんでしたっけ?」と訊いて、「○○です」と言うと、「上の名前は判りますよ、下の名前」って(笑)。さすが苦労人。

 でも歳とったから考えられることも、それなりにたくさんあるはずで。

 

 年配の方はご存じでしょうけど、私は50過ぎて、前の家内と大喧嘩になって。テレビ番組で叩かれて、女性の敵みたいに言われたことがありまして(笑)。その前は脳腫瘍。無一文で満州から引き揚げたころから今日に至ってますが、「まあ、いいか」が私の基本的な…。忘れる!という。

 喜怒哀楽、この4つで私は生きてきたわけだけど、喜と楽はどう違うか。私の解釈では喜は達成感。「やった!」という。楽は、そこに至るまで、いまは苦しいけどもうすぐ頂上に登れるという楽しみを持ってること。その違いだと思う。

 必ず達成できるというものはなくて、私は「なせばなる」って上杉鷹山の言葉は大嫌い(一同笑)。なせばなるなら誰だって東大に入れるし、甲子園にも行ける。それより楽しみ、期待感を持つことが大事。来週デートとか、これ食べるとか。それがなくなると、人間は死にたくなる。だから楽しみを失わないでください。自分の心の畑に楽しみの種を植える。刑務所に入ってる人は出所する楽しみ、病院に入ってる人は退院する楽しみ、結婚してる人は離婚する楽しみ(一同笑)。いくら歳をとっても同じことだと思います。

 

 昔はフランク永井ディック・ミネとか低音の歌手がいたけど、いまはカラオケでも(男性ボーカルの)音程が上がっていて、男性が女性に近づいてる。

 世の中うるさくなって、セクハラの過剰禁止が。すると男は女性を口説けなくなるんですよ。ストーカー、待ちぶせは、昔は普通だった。20人口説いて、ひとり口説けたら万歳でしたよ。でもいまの男の子はプライド高くて…。

 昔、口説き文句のコンクールってのを仲間内でやって、1位が“きみに突き刺さりたい”(一同笑)。いま言ったら、捕まる。

 男性は1億の射精をする。女性の卵子はひとつで、精子は競争して、その中から出てきたみなさんは超エリート。他の動物も同じですけど、精子はやたらめったら出る。

 口説けなくなった理由のひとつは、立ち小便の禁止。昔はできたけど、いまはできなくなって、精子が減ってる理由のひとつだと思います(一同笑)。またいまは24時間明るい。盆踊りで、明るいところで踊って、暗いところへ行くのが普通でした。酒場も暗くしてた。あ、判りました。そろそろね。

 

 講演後にはサイン会もあり、わずかな時間ながらお話しして、『存在の深き眠り』(1996)のファンであることをお伝えできた。

片道の人生

片道の人生