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小原乃梨子講演会 “声に恋して” レポート(1)

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 ドラえもん』(1979〜2005)ののび太タイムボカンシリーズドロンジョ、『未来少年コナン』(1978)のコナンといったアニメーションの声や多数の洋画吹き替えで知られる声優・小原乃梨子。その小原氏が母校である跡見女子大学にて講演をされ、ドラえもんファンの筆者は何とか都合をつけて行ってきた。

 講演後には宮澤賢治よだかの星」の朗読も行われ、巧みな話術と演技で小原氏の健在ぶりが実感できた(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

 初めましてだと思うんだけど、声は初めましてじゃありませんね。みなさん、多分のび太くんで育った方じゃないでしょうか。年配の方がいると嬉しいです。スタートはアニメでなく洋画の吹き替えで、若い方はそういう話をするときょとんとしていらっしゃいますので。

 私の60年を越える仕事の中で、いろんなことがございました。最近つらかったのは、肝付(肝付兼太)さん、亡くなられましたね。あんなに難しい役、スネちゃまをやれたのは彼くらいでしょう。『ドラえもん』の(メインの)男性ふたりが欠けてしまいました。やっぱりショックだったのは、たてかべ(たてかべ和也)さんががんでおやせになって。2008年に『ヤッターマン』のスタジオでおかゆを差し上げたりして、これ食べてとか。スネちゃまに関しては体調が悪いと聞いたので励ます会をやろうってしずかちゃん(野村道子さん)と…あ、つい役名で呼ぶことが多くなって。野村さんとお食事をしようって言ってて、それが入院されてそのままに…。

【吹き替えの想い出 (1)】

 NHKしかないころから子役をやってまして、巖金四郎さんとかがいて台詞が上手な方で女湯を空っぽにするとか。そういう人といっしょに声優と呼ばれていいのかしらと。

 小学4年生に終戦で焼け野原です。その中を内幸町のNHKに通って、いろんなことを先輩たちに教わって、宿題も(笑)。変だなと思ったのは、教科書を墨汁でここからここまで消してくださいと。真っ黒けになって、いまのいままで習ってたのは何だったのかしら。子どもながらに戦争って厭だなって思いました。凜々しく見えた先生が、GHQの人が来ると卑屈に感じられて悲しかった。

 私はまだ跡見に大学がないころ、父が弁護士で法曹(ほうそう)界に入れようとして、それを振り切って放送(ほうそう)界に入りました(笑)。跡見は厳しい学校で、仕事は一切しないで演劇部におりました。高校3年で、合同演劇コンクールで8位に入りました。

 五社協定で映画の人はテレビに出られませんし、新劇の人が引っぱられましたね。吹き替えが登場して、『ソニー号空飛ぶ冒険』(1957)というシリーズに城達也さん、小林恭治さんと出ました。生放送で、マイク1本で俳優さんが10人くらいやるから大騒ぎ。緊張でお腹痛くなっちゃう人もいて「ごめん」って出て行っちゃう。本番の赤いマークがついてて、仕方なく殴られるほうと殴るほうを1人でやったり。当時はソニーという名前になったばかりのころで、ヘリコプターもかっこよかったんですが、操縦士が連絡すると私は「こちらヘレン、応答どうぞ」と言う役。(スイッチの)カチンという効果音も自分で出して「よかった、無事だったわね」って(笑)。それが生放送の吹き替えの時代でした。

 声優の仕事はハードワークで。女の人は、20代は忙しいですね。恋愛や結婚、喧嘩したりとか。男性陣はどうしても…。当時は生放送の時代で、いまはニュースはバラエティだけですけど、あれを吹き替えでもやってて、やっぱりとちりますね。レギュラーはわりととちらない。でも小さな役の方は、途中からなわとびに入るみたいでがたっととちる。生放送は終わってしまえばお疲れさま。でも録音するようになって(最初は)よかったわねってなったけど、いまのようにオンリー録りでなくて(みなで一発録り)。コマーシャルに入るまで30分、ノーとちりでいって最後にとちると、最初から録り直し。とちるのは男性陣が多かったですね。女の人はのんきでとちらない。男の人は心優しいから、円形脱毛症になったり(笑)。ディレクターもなりました。

 生放送から録音、オンリー録りになって、気分もらくですね。ご迷惑をかけない。その後、吹き替えブームにもなって。ちょっとかっこいい男性も出てきて、『0011ナポレオン・ソロ』(1964)の野沢那智。なかなかの美青年で、スタジオの前に女学生がいて、え、声だけで? 追っかけの第1号ですね。もう亡くなりましたけど。

 小さいときに『若草物語』(1949)を見て綺麗でしたよ。(次女・ジョー役の)ジューン・アリソンっていいなって。何年も経って(吹き替えの)台本に「ジューン・アリソン小原乃梨子」って書いてあって、ああ夢が叶ったな。ちょっとおてんばで、心やさしくて、素敵な役でした。TSUTAYAか何かでさがしてみてください。MGMの創業25周年でつくられた映画で、エリザベス・テイラーも綺麗で。

 ほんとにいろんな役をやりましたね、主役もゲストも。持ち役のブリジッド・バルドーは王道を行って、ジェーン・フォンダは時代がウーマンリブだとそういう役で、その前は耽美的な、男の人が好きな女性でした。バルドーはBB、CCとか、ビタミン剤みたいですけど。世界のみなさんのあこがれの女性役、私はちっとも色っぽくないんですけど。ちょっとスタイルはよかったかな。いまより10キロくらい、ウエストも細くて。いまは外反母趾です(一同笑)。イメージを損なってはいけないと思って努力しました。そのせいかいまでも、スタジオに行くとどの方が主役か、すぐ判りますね。主役の方は綺麗で、スタイルもよかったり。(つづく

 

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