【最終話の想い出 (2)】
「ぼくたちは生きている」に始まる、『ウルトラマンネクサス』(2004)の最終話ラストのモノローグは、『ネクサス』のスピリットを凝縮した素晴らしいものだった。そして孤門隊員の「あきらめるな」の台詞で物語は閉幕する。
アベ「最終回は尺がなくて、取捨選択が迫られる。で、あの憐(内山眞人)と姫矢(桐島優介)が作品全体として大事かな。人間や世界に対する思い、つくり手の考えを示して終わりたい。悲惨なことを描いてるけど、最終回でどこを強調するかでがらりと変わると思ったので。最後に孤門のモノローグが入るけど、撮影が終わった後で長谷川さんに連絡して。1、2話にモノローグがあったので、あれに決着つけないと」
長谷川「あのとき胆石で入院してて、病院で書いた。痛みをこらえて書きましたね」
川久保「ぼくがいろんな敵と戦ってるときに、胆石と戦ってたんですね。“あきらめるな”ですよ(一同笑)。
アベ「できなかったこともありましたけどね」
【『ウルトラマンX』のネクサス編】
『ウルトラマンX』(2015)では、アベ監督によるネクサス編がつくられた。
アベ「渋谷(渋谷浩康)プロデューサーから、『X』を監督してって話が(チーフプロデューサーの)北浦(北浦嗣巳)さんから行くと思いますけどって連絡が(笑)。内容も出方も決まってなくて。最終回の2個前くらいでやるとなって、(脚本の)小林(小林弘利)さんがみんな『ネクサス』の話を怖がってやりたがらないと(一同笑)、それで“じゃぼくやります”と言ったらしい。あまり見てなかったから。それで見てみたら、自分がウルトラでやりたかったことが全てやられてるとおっしゃってました。その前はもっと単純な話で、Xのピンチにネクサスが来て去ってくと。これじゃないなと思ったんで、何日か悶々として、ネクサスらしさを自民自答した。やっぱり変身する人が変わって受け継がれることだと。新しい人が変身して、それで『ネクサス』のデュナミストの話になりませんかと。ちょうど副隊長の話がないので、副隊長がデュナミストに…。長谷川さんと小中さん、勝手にやっていいのかなって思いながら」
長谷川「全然知らなかった」
アベ「渋谷プロデューサーに、長谷川さんにも話通してよって」
長谷川「(リアルタイムで)絆会で集まって、みんなでキャーキャー言いながら見た」
川久保「そんとき行けなかったー(笑)」
アベ「すいません、長谷川さん」
長谷川「いや、なかなかいいなって思いながら見てたよ(笑)」
アベ「最初、旦那さん役は顔も映さないつもりだったけど、キャスティングで岡崎(岡崎聖)プロデューサーが、川久保くんがいいと。でもちょい役で出るかなって」
川久保「友情出演でって言われて。お話もらったのが10年後で、ウルトラ関係でオファーがあれば全部受けようって思ってたんで、是非アベさんと遊びたいと。10年経って『ネクサス』と対峙するってどんな気分なのかなって。グッとくるものがありましたね。
いろいろ反応はありましたね。ぼくの周りでも。参加できてよかったな、10年ぶりに。
(『ネクサス』当時は)ほんとに孤門一輝として生きてて、驚いたり大切なリコを失ったりして。溝呂木とか憎くて仕方がない(笑)。素直に同じことを感じてやってて。メイクと衣装を取ってからは普通に接してましたけど、現場に入ると憎かった。自分か孤門か判らなくなるくらい、境界線が引けなかったですね。
『X』では撮影で目の前に見えるものしかないですけど、ネクサスが見えたんですよ。あのころ思いっきり向き合って、10歳年が上がって、アベさんといっしょにやって、それで目の前にくっきりネクサスが出てきた。泣きそうになりましたけど。自分でも好きなシーンです」
アベ「あのシーンは前後に長く(カメラを)回して、いいところを使った。全部は尺に入らないんで。大事に撮って、おれしか知らないけど。
作品に合わせて演出を変えていて、『ネクサス』はネクサス用の演出です。知恵を絞らなくても普通に撮ると『ネクサス』で、いかにおれに『ネクサス』が根づいているか」
長谷川「「テニプリ」の映画(『テニスの王子様』〈2006〉)でもリコって名前つけてたね」
アベ「『ネクサス』の血が残ってる」
【俳優陣について (1)】
長谷川「『ネクサス』の人にはその後もいろいろ出てもらって。放送短縮になっちゃったから申しわけないので(一同笑)。毎回、魅力的で」
川久保「できた作品はどんなふうに見るんですか? 役者の演技とか、こうじゃなかったとかありました?」
長谷川「あったよ(一同笑)。いや、ベストキャストでした(笑)」
『ネクサス』の面々は、終了後も頻繁に集まっているそうで、飲み会の写真がツイッターなどにアップされている。
長谷川「渋谷くんが絆会をやってますね」
アベ「最近大人数で集まったのは、新宿での10周年。あのときすごかった」
長谷川「いつも集まってるメンバーに、隊長(石橋保)、副隊長(佐藤康恵)、イラストレーター(田中伸彦)も。イラストレーターはしばらく音信不通だったけど、元気でした」
出演者についても語られた。
川久保「(姫矢役・桐島氏と憐役・内山氏)あのふたりは役柄とほんとにいっしょで、桐島さんは兄貴分で気持ち的に頼りになりました。逆に内山くんは、この子引っぱっていかなきゃって。撮影のこととか、ぼくが手助けしてやれることないかなと。時間使って、ふたりと話しましたし」(つづく)

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