地球開放機構TLTの部隊・ナイトレーダーに入隊した孤門一輝隊員(川久保拓司)。モンスターと戦い、厳しい副隊長(佐藤康恵)に叱責される孤門の前には、謎の巨人・ウルトラマンも現れた。ハードな日々を過ごす彼の心の支えは交際中のリコ(中丸シオン)だが、その彼女の正体は…。
『ウルトラマンネクサス』(2004)はウルトラシリーズには珍しく連続ドラマ形式が導入され、主人公はウルトラマンに変身しないという設定、おどろおどろしいホラータッチの演出など掟破りの異色作。リアルタイムで見ていた筆者は、過激で先の読めない展開に驚かされた。商業的に苦戦して1年の予定が10か月に短縮されたものの、大団円の最終回は評価が高く、年月を経て人気を集めている。
完結から11年を経て、横浜市にて最終話の上映と脚本・シリーズ構成の長谷川圭一、監督のアベユーイチ、主演の川久保拓司の各氏によるトークが行われた(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。
アベ「『ネクサス』でテレビのウルトラマンデビューしました」
長谷川「きょうはこんなにたくさん来ていただいて。当時を思い返すとすごくつらいこともあったんですが(一同笑)最近会う人会う人、『ネクサス』よかったって言われることが増えて。この作品をやってよかったなって」
川久保「『ネクサス』に関わって10年以上ですけど、いまだに特別な存在で、孤門なのか自分なのか判らないような時代があったのは宝物です」
【企画段階】
『ネクサス』は、映画『ULTRAMAN』(2004)や雑誌とセットになった「Nプロジェクト」のひとつ。プロジェクトを通じて登場するウルトラマンノアが『ネクサス』最終話にも出てくる。
長谷川「Nプロジェクトは、雑誌に出たギンギラギンのウルトラマンが最初で。(自分が)ノアって名前をつけました、居酒屋で(一同笑)。昼間の会議室じゃなくて、居酒屋行ってからが会議のスタート(笑)。連動して映画も、と。偶然もあって、映画・テレビがひとつになってNで統一しようと。製作委員会にも参加して、いろいろ適当なこと言って(笑)。
(前作の)『ウルトラマンコスモス』(2001)が優しいウルトラマンで、怪獣を殺さない。それは素晴らしい試みだけど、それじゃこれからずっと怪獣を倒せない。ここで1回振り戻そうと。(敵は)感情移入できない怪獣に」
川久保「第1話見て、とんでもないのが出てきたなと(一同笑)」
長谷川「『ウルトラマンティガ』(1996)から参加させてもらっていて、やり残したことを『ネクサス』でやろうと。フォーマット崩しで、そういう作品は大体うまくいかない。『水戸黄門』でも『必殺』でも大概失敗するけど、長期シリーズではやらざるを得ない。予算の面でも1話で怪獣1体倒せない」
川久保「『コスモス』って1回も倒してないんですか?」
長谷川「いや、宇宙人には容赦ない。ロボットにも(一同笑)。
(『ネクサス』は)最初は朝じゃなくて、深夜帯でやるっていうのもあったけど、それが朝になっちゃって。朝日で、画面が暗くて見えない。暗いって苦情も来て。立ち上げも混沌としてたね」
川久保「オーディションで渡された台本の第1話に長めの語りがあって、それを読ませてもらって、そのときやったなって。終わったときやれたと思いました。運命的というか」
アベ「『ウルトラマンギンガ』(2013)の主役の根岸(根岸拓哉)くんもオーディションで、おれ受かったと思ったみたい」
川久保「役がおれに寄ってくるというか」
長谷川「おれ(オーディション会場に)いたかな? いたよ?(一同笑)」
川久保「おっかない大人が並んでたオーディション室、覚えてますね。
最初から(変身しない)と言われてて、何が困ったかって友だちに言うのが難しい。「変身しない? じゃあ主役じゃないじゃん」って(一同笑)。でも人間として長くいられたのは役者としてはやりがいがあって。ぼくはみんなに委ねていて、ほぼほぼデビューでしたから、とまどったりしながらやってましたね。
【撮影の裏話】
2004年9月に放送がスタート。撮影は、その年の夏から進んでいた。
川久保「(訓練シーンは)元自衛隊の方が指導してくださって、実際の動きに則ってやって、かなり大変でした。実際に壁を登りました。朝霞基地で撮ってて、子どもたちも集まってきて「ウルトラマンやるんだー」ってワクワクしてくれて。でも当時『仮面ライダー剣』(2004)も300メートル先で撮ってて、みんなぞろぞろそっちへ。早く放送してくれと(一同笑)。
『剣』(のライダー俳優)はみんな友だちで、いっしょに盛り上げてるような雰囲気があって。『特捜戦隊デカレンジャー』(2004)も友だちでした」
アベ「(仮面ライダーや戦隊シリーズは)質が違いすぎて、ぼくはあまり意識しなかったですね。ウルトラは巨大化するから、変身してからが違うんで。目の前のことで精いっぱいでしたね」(つづく)