私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

荒井晴彦 × 成田尚哉P × 寺脇研 トークショー レポート・『残酷 黒薔薇私刑(リンチ)』(2)

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【制作の背景】

成田「原案が団鬼六さんってなってるけど、多分名前だけ。この頃の団さんはSM作家のスーパースターで、谷ナオミさんとゴールデンコンビで映画化されてました。(谷ナオミ主演の)最初の『花と蛇』(1974)は、団さんは気に入らなくて逆鱗に触れたんですけど。その後『生贄夫人』(1974)とかもやって、『黒薔薇私刑』はそのスピンオフみたいなものかな。

 1年の番組を回さなきゃいけない。夏はいま流行りの海女ものにしようとか(一同笑)先に決めて、企画会議を通ってから、脚本家を決めて内容を考える」

荒井「伊藤プロデューサーは脚本が判る人で、『Wの悲劇』(1984)のときもお世話になった。澤井さん(澤井信一郎監督)の前でライターの味方してくれたんだけど、これ見て、こんな仕事もしてたのかって」

 

 結局、失明した兄は病んだ妹と無理心中。兄のことを好きだった女中は、特高を亡き者にしようと決意する。

 

成田谷ナオミは死ぬ気じゃない?  でも最後は特高江角英明さんの死体で、ローリング(クレジットタイトル)」

荒井「ラストで特高の江角が、お前が好きな男は妹と死ぬのを選んだ、いっしょに死ぬのはお前じゃなかったって言う。あそこも、もう少しうまくやれるのに。愛と体は別だと。

 海岸で、兄妹でちょっと近親相姦してるね」

成田映倫が許さないから、近親相姦はあれが限度。それくらい映倫は厳しいんですね」

荒井「この映画はどこで撮ってるのかな。三門?」

成田「三門荘ってのはにっかつの保養所で、洋館や海岸が出てくると、ここ(一同笑)」

荒井谷ナオミ東てる美以外(の俳優)は、みんな大部屋だよね。下手だねえ、あいつら(一同笑)」

 

【藤井克彦監督】

 藤井克彦監督は、ロマンポルノがメインワークだが、一方で『四年三組のはた』(1976)、『まってました転校生』(1985)といった児童映画も手がけている。

 

寺脇「藤井さんは、ロマンポルノの人だけど児童映画も撮ってる。何でも撮る人ですね。

 この作品では特高江角英明を描きたかったのかな。(劇中で)女がダメって言ってたけど、ラストも江角だし、谷ナオミを使いつつ、江角の物語なのかな」

成田「(シナリオは)多分、ホンにうるさい伊藤さんと久保田圭司さんとでつくった。藤井さんは、ローテーションで回ってきたから。シナリオは久保田圭司さんともうひとりってなってるんで、おそらくもうひとりは藤井監督のペンネーム。

 藤井さんは、あまりスケベじゃない。エッチな感じにならない」

寺脇「だから軍人を描こうってなっちゃったんじゃない? (映画が)分裂してますね」

荒井「頭使ってないな。限られた条件の中で、頭使わないでおざなりにやってる。藤井さんはロマンポルノが好きじゃないんだなって」

 

 ただ、評価している部分がないわけではない。

 

荒井「髪を乳首に巻き付けるところはいいね」

成田「あれはちょっとフェチですね。

 そういえば小沼勝さんは(実際の)恋愛でもそうだけど、フェチで女体が好きですね。クマ(神代辰巳)さんは、フェチじゃないけど」

 

 神代辰巳小沼勝ともに、ロマンポルノで幾多の傑作を遺した巨匠監督。

 

荒井「髪のシーンを見てると、ロマンポルノを撮るって特殊技能だって判るね」 

争議あり―脚本家・荒井晴彦全映画論集

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【その他の発言】

 かつて荒井氏は、にっかつで坂口安吾原作『不連続殺人事件』(1977)の助監督を務めた。

 

成田曽根中生監督の『嗚呼!!花の応援団』(1976)がヒットしたから、当時のにっかつはお祭り騒ぎでした。でもそのヒットをよそに、曽根監督は『不連続殺人事件』を撮ってた。この現場が地獄で、荒井さんはそこから逃げ出して脚本家になったわけです(笑)」

荒井「それはちょっと違うよ(笑)。曽根さんってのは、死んだかと思ったら生きていたり、すごい人で、こうまでしないと監督になれないかと思ったよ。嘘ついたり、いちゃもんつけたり、人でなしでないと。(舗装されていない道が必要なので、スタッフに)アスファルトの上に泥を撒かせたり。(アスファルトが映らないように)カメラ上げるだけでいいのに。結局、映画におれが撒いた泥は映ってない。おれは東京育ちで、厳しいのは無理だから(笑)。地方出身者じゃないと、えげつない映画界で生き残れない」

成田「東京ったって、三多摩でしょうが(一同笑)」

荒井「東京出身の森田(森田芳光監督)は死んだし、根岸(根岸吉太郎監督)は大学の学長になって、そういう生き残り方もあるね。

 『不連続』と『戦争と一人の女』(2013)で、おれ、坂口安吾のをふたつもやってるんだな。でも読んだのはそのふたつだけ(一同笑)」

成田「企画部だから、愚作や失敗作にも思い入れがある。恥ずかしい思いもありますけどね。いまとなっては、いとおしい。

 当時のにっかつでは、オールラッシュは朝9時から。裸の出てくる映画を、朝から見るんですよ(笑)」

荒井「きょうのお客さんに女の人もいるけど、どういう人なんだろう(一同笑)。“八王子にっかつ”って映画館があって、当時つきあってたかつきあってないかみたいな女の人が」

成田「いまの奥さんでしょ(一同笑)」

荒井「おれの映画がかかるんで見に行ったんだけど、ロマンポルノに女の人が来たの初めてで、関係者ですかって訊かれたらしい。あの“八王子にっかつ”って、雪につぶされた(笑)」

成田「そう、1986年の大雪の日に雪の重みでつぶれたんです。古い建物だったから。それをニュースで見てたら、その日ポルノ見てて怪我した観客の人が実名で報道されちゃってて(一同笑)。いま、自分の若い頃を(自伝的に)シナリオに書いてるんだけど、“八王子にっかつ”が雪でつぶれるところがラストです(一同笑)」

寺脇「『黒薔薇私刑』見てるとき、雪で天井が落ちて来たら…(一同笑)」

 

 …もっと戦争について言及するかと思ったらそうでもなく、悪口三昧みたいなトークであったが、ロマンポルノに興味があれば面白い内容ではあった。 

ロマンポルノの時代 (光文社新書)

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