私の中の見えない炎

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三沢和子 × 宇多丸 トークショー “2018年の森田芳光” レポート・『39 刑法第三十九条』(3)

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【出演者について(2)】

三沢「(『39 刑法第三十九条』〈1999〉では)みなさん、オファーしたら受けてくださってすぐ決まったんですけど。樹木(樹木希林)さんは男の役だったんだけど」

宇多丸「この樹木さんはばっちりですよ。今回は監督得意のぼそぼそ喋りが炸裂していて、録音の橋本(橋本文雄)さんが苦労されたそうですが、『家族ゲーム』(1983)か『ときめきに死す』(1984)以来の炸裂っぷりじゃないですか。今回はぼそぼそな上に早口で、何かをごまかすように。樹木さんの法廷での喋り方はギャグというか笑いにつながる(笑)」 

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三沢「裁判所は見学に行ったときに、弁護士や検事はテレビだととうとうと喋るんですけどそういうの一切なくて、口ごもったり何言ってるか判らない。文章読むの面倒でとか」

宇多丸「最初のシーンの江守(江守徹)さんの感じですね(笑)。ルーティン化しすぎてる」

三沢「江守さんや樹木さんの感じ、リアリティないって言う人もいましたけどこれがほんとなんです。杉浦直樹さんは、森田が免許を取りに行った合宿場にいた若くない人が精神科医で、私も会ったんですけどああいう人で、その役」

宇多丸「目を泳がせて、この人のほうが病気に見える(一同笑)」

三沢「そういう発想は森田が好きで、誰がまともで誰がおかしいかって誰が決めるんですかと」

宇多丸「権力サイドが目を泳がせたり、ごにょごにょ言ってたり。杉浦さんはコミュ障」

三沢「犯人がいちばん堂々としてる」

宇多丸「ぼくの父も病院内でディスコ開いたんですけど、ディスコで踊ってたら“あの人がいちばん悪いんですね”って言われて(笑)。想田和弘さんのドキュメンタリー『精神』(2008)では説明がつかないので、誰が治療者か誰が患者かわかんないんですよ。父に精神病であるかどうかって類推じゃないですかって訊いたら“全くそうだよ”ということだと。必要ない人に薬やっちゃったり。

 岸部一徳さんの刑事も。岸部さん杉浦さんは『ときめきに死す』組ですね。杉浦さんは『ときめきに死す』ではゲスの極みでした。

 國村隼さんもいまは世界的な活躍ですけど、森田映画は細かい役で使った人が大成してますね」 

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三沢吉田日出子さんは私や森田の高校生くらいのころのあこがれの人ですね」

宇多丸山本未来さんの最後の表情も。ひどい男ですね、工藤は」

三沢「妹殺されたときに、ケーキくれた子でしょ。それにしてもね。置いていかれたときの“よろしくお願いします”が」

宇多丸「勝村(勝村政信)さんもうまいですね。“ここまでしてもらっちゃって”って、そういうことじゃないから(一同笑)。

 堤(堤真一)さんの表情、恋愛映画じゃないけど、あなたが最高の共犯者だったというのは三角関係的な終わり方でもありますね。杉浦さんも恋愛じゃないけど負けたっていう。全てへし折られて、堤さんと京香(鈴木京香)さん以外は全員負けた。裁判長はプロっぽいですけど」

三沢「いかにも演技にならないように、よっぽどうまい方か素人かということになり。行政側からいらしている、演劇博物館の館長の方とかですよ。まさか脱がされちゃう(一同笑)。撮影の朝、裁判長と裁判官に脱いでもらいますって」

 

【音楽について】

三沢「音楽は『キッチン』(1989)から『(ハル)』(1996)まで野力奏一さんなんですけど、『(ハル)』はテーマを書いていただいて、アレンジを佐橋(佐橋俊彦)さんにお願いしました。今回は佐橋さんですが、編集の終わりまで音楽のイメージがないと言ってて、やっぱりいるということになり、音楽打ち合わせの当日まで監督の中でイメージがはっきりしなかったです」

宇多丸「この映画は音楽をつけないイメージで全編撮ってるんですか」

三沢「メロディーがあると台無しっていう」

宇多丸「『家族ゲーム』のラストや『おいしい結婚』(1991)など音をコラージュ的に重ねるのはありましたけど、今回の最初の警察の現場検証みたいにあんなに音をぶつ切りに。神経を逆なでされるような。『セブン』(1995)のオープニングを音だけで表現したのかなと想像しました」(つづく) 

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