私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

飯島敏宏 × 小倉一郎 × 仲雅美 トークショー レポート・『冬の雲』(3)

木下惠介監督について (2)】

小倉「木下さんは強かった。飲んでも変わらない。なんかのパーティのときに“一郎!”って呼ばれて、おかわりかな、でも入ってるなと思ってたら“おしっこ”って行っちゃう(一同笑)。

 NHKの訪問対談っていうようなインタビューを再放送で見てたら、木下監督が出て“私はお金に困ったことがありませんから”って(笑)」

飯島「東の木下、西の松田(松田定次)って。

 テレビ局で飯島くんって言われるけど、映画の新東宝の撮影所で同じ女優さんに会うと、日にちも経ってないのに先生って。そのくらい世界が違う。

 つましい話になるよね。昭和46年までの売れっ子の監督は、著作権もあるし。46年以降の監督はあんまり金持ちになれない」

小倉山根成之監督から聞いたんだけど、小津さんは趣味みたいに撮っててお客さんは入らない。木下さんは入る。でも監督料は小津さんが高い。松竹は、木下さんに悪いから、木下さんに土地をあげてたと」

飯島「木下さんがお買いになってると思ってた(笑)。当時は別封というのがあって、正規には払うけども他にも出る。そういう世界」

小倉「制作主任が現金持ってた。上原謙さんはロケ行くと“ここ買っといて”って製作主任に言う。後で、上原さんのギャラから…。昔の俳優さんはすごかった」

飯島「テレビは人気番組つくっても月給上がんなくて、ボーナスの査定でランクがあって5万円くらい違う。映画監督は何故先生と呼ばれるかというと、1本当たるとボーナスがどーんと上がるんですよ。木下さんは会社を儲けさせて、1本撮りたいものを撮る。それが当たらなくても、次の1本で当てて儲けさせる。次は儲けさせるってよくおっしゃってました。世間話として。テレビはヒットしても、営業収入は同じ。

 松竹では監督に力があるから、木下さんがこの男を監督にと言ったら監督にできる。木下組で監督になった人は、川頭(川頭義郎)さんとか学歴がない。ない人の中から監督にしてました。木下惠介プロでは、助監督を京都の一流の料亭につれてって“監督というのは、将来はこういうところも知らなきゃいけない。2回も3回も来るのはバカですよ”って言ってました」

小倉「映画界でも助監督は、いろんなパートから怒られる」

飯島「ADは人のやらないことは全部やると。

 木下組の写真を見ると、末端の助監督が監督と同じ服を着てる。助監督にも買い与えていて、みんな半ズボン履く。テレビはそういうことなくてサラリーマン」

 

 木下プロでの『俄 浪華遊侠伝』(1970)では演出・プロデュースを担当。脚色は山田太一

 

飯島「『俄』は原作権を取りに行ったら(原作の)司馬遼太郎さんが映像は別物だと思ってるんで、存分におやりくださいと」

小倉山田太一さんが書いて」

飯島「台詞が関西弁だけど、やっぱりなにわの言葉じゃない。うるさい原作者だったら文句言われるけど、司馬さんは自由に書いていいと」

小倉NHKの太一さんのインタビューでも、変えたと言われてました」 

飯島「綺麗な標準語の大阪弁なんだよね。ほんとの関西弁とは違う。楷書で書き直しちゃったみたいな」

「いいところの人の大阪弁は、なまってるみたいなのがないよね」

小倉浪花千栄子さんの喋り方みたいな」

飯島「京都と大阪の人がスタッフにいると、両方頑固で困っちゃう。近いから同じかと思うでしょ。全然違う、やりにくい。東京は原っぱで、関東から登って300年経って江戸っ子になって、雑種なの。ぼくは国定教科書で育って、標準語っていう得体の知れない言葉になって。明治時代の人は違和感のあった言葉。昔はおれ、てめえだったのに学校行って、ぼくって言いなさいって言われてぼくになっちゃった。『俄』はそれと同じで、なんか標準語っぽい。

 演出の鈴木(鈴木利正)さんはTBSで楷書の時代劇やったベテラン。ぼくは浅草の映画とかのチャンバラで、違うんですよ。やくざが短い刀を片手で振り回すとか。いっしょにやるのは難しい。京都の東映で撮っても、何となく関西流の時代劇じゃない。伊丹万作や内田叶夢も京都風の時代劇は撮ってない。マキノ雅弘とは違っていて、そういう演出をぼくはやりたくて。

 (主演の)林隆三は新劇なんでチャンバラできない。ぼくはチャンバラのディレクターでしょ。後半で木下さんと太一ちゃんがお酒飲んでて、オンエア終わって電話かかってくる。“木下ですけど、きょうきみが演出したんだね。きみは上手だね!”。これで済まないな。ワンシーンだけね、東野英心のところを入れ替えてた。“入れ替わってたでしょ、あれは変ですよ!”。自分の信用してる山田太一の書いたシーンを、軽々しく入れ替えた。そこはかっとなったんじゃないの」(つづく) 

飯島敏宏 「ウルトラマン」から「金曜日の妻たちへ」

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