私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

黒沢清 × 篠崎誠 トークショー レポート・『世界最恐の映画監督 黒沢清の全貌』(2)

f:id:namerukarada:20171001234249j:plain

【過去の原作つき作品 (2)】

黒沢「粛々と取り組んだんですけど、絵があると難しい。キャスティングは絵の通りにいかないですが、蜘蛛の巣など美術はマンガに似せてつくるけど、マンガ通りではない.愛好者から見るとまがいものかな。

 よかったのは、楳図(楳図かずお)さんの絵でホラー系のものは人物がデフォルメされていますけどぎりぎり成立する気がしました。いまどきのマンガはよく知りませんが、キャスティングはうまく成立する。往年のマンガはキャスティングが…特に髪型。まず間違いなく失敗するのはブラック・ジャック(一同笑)。七三に分けたら違うし、髪型に問題があればやらない。三池(三池崇史)さんはそのままつくって、それもありかもしれませんけど、ぼくにはあまりに不自然な髪型は難しい」

 

 ここで一旦、映像化に適した原作について語られた。

 

篠崎「たくさん原作もの、翻案の依頼もあったと思うんですが、「戦国自衛隊」「GANTZ」とか。『リアル 完全なる首長竜 首長竜の日』(2013)、『岸辺の旅』(2015)、『クリーピー』(2016)などお引き受けになるものと映画にならないものとは、どこで線引きされますか?」

黒沢「明確になっていないかもしれません。自分の中でも流動的とですが。こういう小説は映画化しにくいというのは過去が重要なものですね。何て言うんでしょう。殺人事件が起きて、犯人はどうしてひどい手口を使ったか、幼いころにこんなひどい目に遭ってそれでこんな犯罪を犯したっていうのは全くつまらない。原因は映画に説明としては必要でも、観客の関心は未来、この先どうなってしまうか。このふたりの結婚を親は許すかもサスペンス。先に感心が向くようになっていれば、映画化できると思います。殺人事件があって犯人が捕まる、それでほとんどが子どものころの話になって、できなくはない。ただ、これ主役は子役? (会社側から)子役が出てもいいけど、主役は若い男でと。でも若い男出てこないよ。小説としてはありでも、映画では子役がつらい目に遭いました、終わりでは…ということで、そういうのは断りますね。

 テレビ『贖罪』(2012)は依頼されてとまどって。湊かなえさんの原作で、過去に重要なことがあって、現在に(影響が)強く残っていて。(全5話に)都合よく5つのパートに分かれてますけど、現在に問題が残ってどう解決するかもありましたが、現在は過去を悔いてるだけというのもあって、小説としては全然OKですが、現在をどう解決するかの分量をふくらませる変更をさせていただいて。湊さんは大らかに許可してくださって。過去は重要ですが、そのままというのは厳しいですね」 

篠崎「『リアル』でもそうですね」

黒沢「そうです。過去は子役が演じてるんですが、難しかったな。過去は説明でその結果の現在ということで進んでいくんですが、それが夢だった。現在だと思われていたのが昏睡状態の非現実だった。そういう映画はなくはないんですけど、すべて頭の中だったって、お客さんは納得するのかな。自分としてはチャレンジで、ひやひやしながらやっていました。寝たきりだと思ったら別の人の頭の中でしたと。複雑で、ここまで複雑ならいいか。ルイス・ブニュエルでもあったよね。イレギュラーでしたけど。そういう映画もなくはない。夢か現実か判りませんよ、というのに挑戦してみたんです」

篠崎「過去をどう描くのに腐心されたんですね。原作には首長竜は出ないですね」

黒沢「映像としては首長竜が人間を襲うシーンを撮りたいっていう欲望に支えられて。それが撮れれば、他はいらない。そうめったにあるチャンスじゃないので」

篠崎「フィロソフィカル・ゾンビは黒沢さんの世界に親和性がありますよね」

黒沢「やっている当時は原作通りでこれでいいと思っていましたけど、いまうかつにゾンビって言うと多くの人がよく知ってる時代になって。あのころはゾンビがどういう定義か、普通の人は知らなかったけど」 

篠崎「『岸辺の旅』は松田広子さんが原作を見つけたとき、黒沢さんにと思われたみたいで」

黒沢「これは読んだ瞬間、映画になると確信しました。先に進んでいく話で、回想シーンはあるけど現在化できる。時系列に組み込めると読んだ瞬間に思ったので…。サスペンスになってて、この人この先どうなっちゃうのって、ずっと持続する。それに尽きると思います」

篠崎「『クリーピー』は大胆に設定を変えられてますね。西島さんと東出さんの関係が…」

黒沢「原作ではそれがメインで、東出さんの役は死んじゃうけど、共通の問題人物を映画では全く扱っていません。そのキャラクターがびっくり仰天で、小説としてはありですが、映画にしてしまうと香川照之がどうでもよくなっちゃう」(つづく) 

岸辺の旅 [Blu-ray]
 

にほんブログ村 映画ブログへ