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私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

黒沢清 × 西島秀俊 × 役所広司 トークショー レポート・『クリーピー 偽りの隣人』(2)

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【『クリーピー』について (2)】

黒沢「西島くんにも何度も言ってるんですが、かつてだったら(『クリーピー 偽りの隣人』〈2016〉の高倉役は)役所さんで、役所さんでないと思いつつも役所さんならこうだろうなと、どこかで基準、ぼくなりのモデルがあって。

 『CURE』(1997)の役所さんの歳を上回ったくらいの西島くんならどうかなと思って今回お願いしたと。役所さんとどう違えてくるかなと思って見てました。全然違うけど、ポジションは似てますね。

 いまは、役所さんは偉くなられましたけど、一生懸命でタフ、誠実なヒーローでもろいところもある。身近な家庭、奥さんを守ろうとする。正義のためとは違うけど、おそろしいものと対決して、弱さもあって。質は違っても、ポジションは同じだな」

役所「次回作出られるかもしれない!(一同笑)」

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【『クリーピー』の現場】

 現場でどのシーンが大変だったかという質問があった。

 

黒沢「大変なのは犬でしたね。お利口な犬でしたけど、言うことしか聞かない。俳優がかまったりしてるときはいいけど、別な芝居を始めても映ってる。長く撮ってるとそわそわしてきて、横で俳優が芝居してるから何かしろって思うけど、あらぬ方向を見ては…。俳優より犬ばかり目に入って緊張しました」

西島「どのシーンも大変なんですけど、大変だったって印象はないです。香川(香川照之)さんと対決するのも大変だったですけど、疲労困憊してぐったりではなく、高揚していいシーン撮れてるなって」

 

【『ニンゲン合格』の想い出】

 役所・西島両氏は、黒沢監督『ニンゲン合格』(1999)にて共演。『ニンゲン』は西島氏の黒沢作品の初参加だった。『ニンゲン』では、黒沢氏は前作『CURE』から一転、ホームドラマに挑んだ。

 

黒沢「(雰囲気を訊かれて)現場の雰囲気は、監督は判らないもので。次のカットとか細かいところが気になってて。

 撮ったのは1998年。ぼくもまだ若くて、当時Vシネマ哀川翔さんのやくざものをたくさん撮ってて、その流れで役所さんと初めてやらせていただいた『CURE』を撮り、同じような気分で『ニンゲン合格』も撮りました。つくっただけで愉しい、その後の評価とかどこで見られるかとかほとんど考えてない。つくることだけで愉しかったという記憶があります」

西島「すごく覚えています。当時のぼくは映画の一番手をやらせていただくことはなくて、話をいただいたら、役所さんに哀川さん、麻生久美子さん、大杉漣さん、洞口依子さん、菅田俊さんと黒沢組のオールスターの方々が現場にいらっしゃって、戻れるならあのときに戻りたいです(笑)。控え室が大きな部屋で、役所さんも哀川さんもいらっしゃって、大先輩ですけどみなさんリラックスされていて、現場に行くのが愉しくてしょうがなかったですね」

役所「『ニンゲン合格』の台本を読ましてもらったとき、こういう脚本も書く人なんだと。家庭劇でしたし、素晴らしい脚本で、期待通りの出来でしたね。

 (厭がる西島氏を)引っ張るシーンが重たかった。ほんとに厭がってる感じがしました」

西島「(別のシーンで)役所さんに抱きついたのを覚えてます。暗いところに役所さんが立ってて、監督は10人中2人くらい役所さんだと判ればいい暗さと照明さんに指示されてて。役所さんは大きいなあと思いました(笑)」

黒沢「当時(西島氏)は初々しい若者で、アイドルみたいな。いまもぼくから見れば若者ですけど。10年眠って24歳で目覚めたという設定で、役所さんがその子どもっぽい若者を抱きしめる」

役所「(冷蔵庫に)挟まれて…そうそう(一同笑)。あそこで何と言ってた?」

西島「 “ちゃんと存在した?”って訊いて、役所さんが“お前はたしかに存在した”って」

役所「ああ、ラストに相応しい台詞ですね。『ニンゲン』で西島くんといっしょに仕事して、何故キャスティングしたのかよく判るし、黒沢さん好みの俳優さんだなって。あまりテレビに出ていなかったのに、最近は一生懸命出て(笑)。40〜50代でまだまだやれる作品があると思うので、一ファンとして西島さんと黒沢さんの作品を愉しみにしてます」

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【最後に】

役所「(黒沢作品では)夫婦のありようがすごくさまざまな形で表現されているなって思って、最近の監督の作品を見てます。竹内(竹内結子)さんとのも新しい夫婦像で魅力的に感じましたね」

黒沢「役所さん、ほんとにありがとうございました。久々に壇上で緊張してしまいましたけど。

 結構気持ち悪い出来ではあるんですが、興味がある方は2度見ていただけたら、違った面があると思います。

 気持ち悪いのが好きな方には、こんなに気持ち悪かったよと。好きじゃない方にはそんなに気持ち悪くなかったよ、役所さんどこかに出てたよって言っていただければ(一同笑)」

 

 マスコミ向けの写真撮影も行われたが、壇上のお三方はポスターの後ろに立たれ、前に出てくださいと言われてやっと前のほうに出て行くという…。控えめな感じが面白くて笑ってしまった。監督のサイン会もあり、パンフレットにサインしていただきました。