私の中の見えない炎

おれたちの青春も捨てたものじゃないぞ まあまあだよ サティス ファクトリー

石橋蓮司 × タナダユキ監督 トークショー レポート・『四十九日のレシピ』(2)

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【『四十九日のレシピ』をめぐって (2)】

石橋「最近は比較的、マンガ原作が多いですね。CGもふんだんに使って、自分なんかいらなくなるっていうか。自分は人間を観察して映画の表現の中でつないでいくっていうのをやってきたので、これは人間を描いているのかなっていうのはあります。幸せそうに見えても不幸の中にいるとかそういうのをえぐるっていうのがおれたちの仕事だったので、ただ怖い顔がほしいってなら、CGでやればいいんじゃないかなと。

 でもタナダ監督は、俳優にとっては命の、行間を大事にして撮ってくれる。あのシーンの背中がいいとか言ってくださって」

タナダ「背中のお芝居がよかったですね。父と娘って、母と娘とは違った距離感がありますから、そんなに顔を向かい合わなくてもいいかなと。私もあの背中にウッとなるとは思っていなくて、蓮司さんも“演じてやるぞ、この野郎”って感じでもないのに。こういうシーンが撮れると、ほんとにいいですね」

 

 石橋さんの姉役の淡路恵子さんは、公開後に逝去。この作品が遺作となった。

 

石橋「淡路さんとは、(『四十九日』以前に)NHKのドラマなどで2回くらいご一緒しました。ぼくらの世代には、あこがれの方でしたね。撮影の合間のたたずまいに男性性みたいな感じがあって、割り切りがしっかりいていらっしゃるというか。昔の話も聴かせていただいて、いい想い出ですね。お体が悪いようには見えなくて、今年亡くなられて大変びっくりしました」 

【キャリアの回想】

石橋志村喬さんが理想のお父さんでしたね。ああいうお父さんがいれば、役者じゃなくて真っ当になっていたかも。うちの親父はひどかったですから、そのおかげで役者になれたというか。

 子役をやっていて、背が伸びてきたり声変わりしたり、17くらいになると姿が変わって仕事がなくなっちゃう。品川の大井町にいたんですが、やくざがいっぱいいて、友だちもやくざになって、彼らとつるんでいるとこんなに仕事がないならやくざになるしかないかなあって。

 でもこのころに、役者をやるぞ、つづけるぞって決めて、バイトしながら劇団に入る。蜷川幸雄なんかに会って演劇活動に入っていくんですね。

 影響が大きいのは、ジェームズ・ディーンとか洋画です。ぼくらはプレスリーで育ったんで、でも鏡で自分の姿を見て、これはダメだと。脚の長さも違うし(一同笑)。日本人独特のものをつくっていかないとって。それでもVに脚組んだりとか(一同笑)」

タナダ「でも(『四十九日のレシピ』にて)石橋さんの若いときの役の中野(英樹)さんと石橋さんとがいっしょの(同じ画面に収まる)シーンで、蓮司さんのほうが、脚が長いんですよ(笑)」

石橋「チブルスキーにあこがれて、『灰とダイヤモンド』(1959)のようなあんな青春をやりたいと。何回も見て、最後に殺されるところを、敷布にくるまって真似しました。向こうは金髪なのにね(笑)。その後、チブルスキーは若くして亡くなってしまいましたけど」

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 ジャーナリストの田原総一朗と劇作家の清水邦夫が共同で脚本・監督を務めた『あらかじめ失われた恋人たちよ』(1971)と、『竜馬暗殺』(1974)が特に忘れ難いという。

 

石橋「『あらかじめ』では、(メインの)ふたりが唖(という設定)だったので、ひとりで芝居をやらなきゃいけない。『朝まで生テレビ』(1987〜)の田原さんが監督で、ドキュメントふうにどんどん撮っていく。印象に残っていますね。

 『竜馬暗殺』では、原田芳雄との出会いがあった。これも印象的ですね」

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【その他の発言】

石橋「自分の中にない役はやらない。どの役も、全部おれなんですね。やくざでも、自分の中にあるやくざみたいな部分を拡大していく。だから、強姦する人間もおれだと思ってください。最近もうできないから、倒されちゃうかな(一同笑)」

 

石橋「(やりたい役を問われて)役者というのは要望があって、初めてありうる。自分から仕掛けていくということはない。

 でももう10年、芝居(舞台)をやっていないんですが、いつか(夫人の)緑魔子を使って、自分の演出でやりたいですね(拍手)」

 

タナダ「また蓮司さんが苦しむような役でご一緒したいですね(一同笑)」

石橋「役者は目撃されてなんぼの世界。家に批評の手紙を送ってくださる方もいて、こちらが意識してないようなところまで、こういうことか?と指摘されることもあり、お客さまはおそろしいなと思って勉強させてもらっています。ゆるんできたなと思ったら、お叱りをいただければ。これからも、どんな作品でも手を抜かずにやっていく所存でございます(拍手)」

 

 石橋さんは、特に奇抜なファッションというわけでもないのに、こちらを圧倒するオーラとかっこよさを放っていた。

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