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関本郁夫監督 トークショー レポート・『天使の欲望』(1)

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 昨年の暮れ、奇天烈なテレビドラマ『天国の恋』(2013)が話題をまいた。この作品の脚本家・中島丈博は、この他にも『真珠夫人』(2002)、『牡丹と薔薇』(2004)などトンデモドラマの書き手として知られるが、もちろん中島の世界はそれだけではなく、大河ドラマ『元禄撩乱』(1999)、映画『あ、春』(1998)などテレビから映画まで多数の作品を手がけた巨匠である。

 その中島氏がかつてオリジナル脚本で発表した映画『天使の欲望』(1979)は、カルト的な傑作として名高い。いまだソフト化されていないけれども、シナリオは刊行されている(『日本カルト映画全集 天使の欲望』〈ワイズ出版〉)。

 

 田舎から出てきた容姿端麗な姉(結城しのぶ)とあか抜けない妹(有明祥子)が、ふたり力を合わせて東京で生きていこうと誓い合うも、やがてひとりの男(吉沢健)をめぐって死闘を展開する。

 中島脚本では、女 × 女 × 男あるいは男 × 男 × 女のように三角関係が描かれることが多く、この『天使の欲望』もいかにも中島作品らしい。また、大病院で勤務する真面目そうな看護師の姉が、実は男性関係が乱脈で何人もとつきあっているというあたり、中島氏の近作『赤い糸の女』(2012)における、堅い証券会社勤めの主人公(三倉茉奈)が借金の返済のために毎夜売春するというストーリーをちょっと彷彿とさせる。主役の姉妹も熱演だが、汐路章、佐々木すみ江東てる美など芸達者が脇を固めているのもいい。

 本作の関本郁夫監督は、当時東映の社員監督としてこの作品を撮った。昨2013年11月に渋谷にて、『天使の欲望』のリバイバル上映と関本郁夫監督のトークショーが行われた。この上映は、『天使の欲望』の天尾完次プロデューサー(2011年逝去)の作品特集であるので、天尾プロデューサーにまつわる話が多かった。聞き手は映画評論家の磯田勉氏(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや、整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

関本「高卒で東映に就職して、製作主任の天尾さんと知り合いました。汚い人でしたね。当時は、結婚してないから着たきり雀(笑)。そんな服着てると足元見られるぞって、言われてました。製作主任は、進行の責任者としてスタッフやキャストの面倒を見なきゃいけない。だから寮にも帰らず、よく働いていたという印象でした。

 (自分が)助監督になったころ、天尾さんはもうプロデューサーでした。いい作品をつくるけど当たらないプロデューサーという評価だと、天尾さんは私に言っていましたね。その後、石井輝男監督と出会って、天尾さんはヒットメーカーになっていくわけです。当てないと発言力もない。石井さんのおかげで当てなきゃいけないと目ざめた、目から鱗が落ちたそうです」

 

 天尾プロデューサーは、石井輝男監督『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969)、鈴木則文監督『エロ将軍と二十一人の愛妾』(1972)、『トラック野郎』シリーズ(1975~1979)などをヒットさせた。

 

関本「私は7年間、サード助監督をやって、(やがて)チーフ(助監督)になってました。

 このころ、有名な“石井輝男ボイコット事件”がありました。石井さんに対する反撥は東映京都に強烈にあって」

 

 過激なエログロ作品を撮る石井輝男監督は、東映京都撮影所の助監督たちからボイコットにあった。

 

関本「天尾さんは、“映画は戦争”だと。戦争に勝つために仲間がいなければならない。それで鈴木則文さんや私みたいな若いスタッフに声がかかったんです」

 

 同じ日に上映された天尾プロデュース × 鈴木則文監督『恐怖女子高校 女暴力教室』(1972)では、関本監督は掛札昌裕氏、鈴木監督と三人で脚本を執筆している。

 

関本「まずワンシーンからラストまでハコをつくる。則文(ソクブン)さんは忙しいから、『恐怖女子高校』はハコをみんなでつくって、前半後半で分担して書きました。後で掛札さんが、自分流に直す。

 天尾さんは大変な人で、自分が気に入るまで、“うん”とは絶対言わない。何度となく逃げ出したいと思いましたね。ハコの段階でOKが出ないと、先を書かせてもくれない。ほんとに厳しかったです。

 私はまだ28くらい。まだ素人で、(いま見直すのは)ちょっとはずかしいなって気がしますけどね。何とか見せきったのは、則文さんの力です」(つづく)

 

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