【小説版】
『河童のクゥ 6年目の夏休み』(2007)の公開から6年後の今年、脚本家の丸尾みほ氏と原監督の共作で、小説『河童のクゥ 6年目の夏休み』(双葉社)が刊行された。この小説版は、双葉社からオファーがあったという。
映画の小説化が約3分の2、残りが登場人物たちの後日談となっていて、後日談はやや辛口な内容になっている(もとの映画もシビアではあるのだが)。
原「続編では驚かせたい。山田太一さんの『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(1983~1997)でも、“おれはこの女(妻)じゃないとだめなんだ”って(1作目で)言ってた兄貴(小林薫)が、パート2で浮気してるとか、そういう感じを出したいと。(小説は)そんなに悲惨な状況じゃないと思うけどね。あの夫婦が離婚する可能性も考えましたからね。
もしアニメでこの続編やっても、前ほど悠長につくれないな~(笑)」

- 作者: 原恵一:丸尾みほ,木暮正夫
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【原監督の新作『はじまりのみち』】
原監督は、2013年に生誕100年を迎える木下惠介監督の作品を愛好していて、さまざまなインタビューで木下作品の影響について発言している。
今年、青年時代の木下惠介を描いた映画『はじまりのみち』にて、初めて実写映画の監督を務めた。
原「木下監督は、旧作も見られてないし、語られることも少ない。
今回の映画では、最初は脚本だけって依頼だったんですけど、監督もやりたいって自分で言い出したんです」
アニメの世界では巨匠である原監督も、実写映画の制作はいろいろと勝手が違ったようであった。
原「あまり準備しないで現場に臨みました。絵コンテを描いてる時間もないんで、まっさらな状態でした。目の前の演技に違和感があったときは修正すると。カット割りもカメラマンの方におまかせだったんですが、相談はちゃんとしてくれた。普段われわれは時間をかけて絵コンテを描いてるんですが、だから(現場で)バーッと言われてもね…。
木下映画は素晴らしい移動撮影、横移動がたくさんあるんで、それを意識しました。でも(横移動のための)レールを敷くってだけでも大変で。大騒ぎなんで、あちゃーって。でもおれから言い出したからな(一同笑)。(実写映画では)ちょっとしたことを実現するために、みんながわーって動く。それがしんどいね。
絵コンテは何シーンかは描いたけど、雨のシーンとか、現場からの要求があったからですね。アニメでは雨って現場に負荷がかからない。でも実写だと、みんなすごく大変。工事車両みたいなのが必要で。
カット割りなんかにしても、自分がいつもアニメでやってるつもりでやるのはやめようと」
中村「何の前知識もなく、原さんの作品を見るのは初めて。やっぱり空気が同じです」
末広「実写でも原さんの個性をちゃんと出してるね」
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木下惠介の代表作というと、『二十四の瞳』(1954)が挙げられることが多いが…。
原「見てない人にいつも薦めるのは、『永遠の人』(1961)です。高峰秀子さんと仲代達矢さんが出てる。木下監督ってこんな(ハードな)の撮ってるんだって衝撃を受けました」
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終了後のサイン会では、木下惠介監督に師事した脚本家の山田太一氏と原監督が木下監督について対談した記事(「For everyman」vol.1)にサインしていただいた。以前の講演会にて山田氏にサインしてもらった際に、「原さんに会ったら、横にサインしてもらったら?」と言われたのだが、それが実現した(笑)。他の参加者はやはりクゥの絵を描いてもらっていたけれど、筆者には『はじまりのみち』に登場するリヤカーを描いてくださった。
原監督、末吉さん、中村さんともに、なんとなく人柄の伝わってくるサインであった。
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