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篠崎誠 × 黒沢清 トークショー レポート・『共想』(1)

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 幼なじみの女性ふたり(矢崎初音、柗下仁美)。東日本大震災を境にすれ違うふたりだが、互いに思い合っていた。

 東日本大震災に材をとった篠崎誠監督『共想』(2018)は、不思議な感触を持つ異色作。篠崎監督は『あれから』(2013)、『SHARING』(2014)につづいて震災を描いている。

 昨年12月、池袋にて『共想』のリバイバル上映と篠崎・黒沢清両氏のトークショーが行われた(おふたりは盟友で共著『恐怖の映画史』〈青土社〉もある)。上映前に主演の矢崎初音・柗下仁美両氏の舞台挨拶もあった(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます。ご了承ください)。

 

黒沢「こんな映画撮る人、世界に誰もいないんじゃないかな」

篠崎「誉め殺し(笑)」

黒沢「『SHARING』からここに来たのか、という。精密でストイックであると同時に自由奔放。がんがん音楽が流れて、階段の上に赤い服を着た女性がいて主人公と出会う。これが共想か。提示された感じで気持ちよかったです。ゲルマン系の映画みたいな。ラース・フォン・トリアーを上回って、ハンス=ユルゲン・ジーバーベルクの域に達しているな。

 共想という言葉は造語ですか」

篠崎「ぼくがつくった言葉じゃないんですが。いま世の中が競争社会だから共想へ向おうみたいなことを、書かれてる人もいますね。このタイトルつけたときは知らなかったですが。英語のタイトルも考えようとしてて、ピンク・フロイドのアルバムの「炎」に「Wish You Were Here(あなたがここにいてほしい)」という曲があるのをweに変えて(副題にした)。題名はほんとにいいのかと思いながら、これでよかったのか判らないままなんとなく馴染んできています」  

黒沢「漢字のニュアンスから、ふたりがともに相手のことを思ってるんだなと。それで突如出会う。わけも判らず感動いたしました。

Wish You Were Here

Wish You Were Here

  • アーティスト:Pink Floyd
  • 発売日: 2016/01/29
  • メディア: CD

【『共想』のスタート 】

篠崎「『SHARING』は商業映画で成立しづらいもので撮ってよかったと思いますけど、今度はもう少し若い20代前半くらいの人を主人公にしようと。できれば大学でやれないかなと。主演の柗下(柗下仁美)さんや矢崎(矢崎初音)さんは『SHARING』の冒頭に女子高生役で出てもらっていて、あのときのふたりが大学に入ってきたらどうなるだろうと後づけでちょっと考えました」

黒沢「脚本はなかったわけですよね」

篠崎「ないですけど、話し合いはしました。撮影の最初はふたりのインタビューから始めました。本編には使ってないですけど。矢崎さんと柗下さんが3.11のときに何をしていたか。それを踏まえて、いくつかの要素を入れ替えたり。矢崎さんは演劇を見に行く途中でJRが止まって、子どもたちが不安そうにしていたのを目撃したということで、子どもに関することを矢崎さんでなく柗下さんにやってもらったり。柗下さんは東急百貨店でバイトしてて、ひと晩そこにいることになって。ご本人たちの話だから当然いきいきしてて、それが台詞を書いちゃうと消える気がして。シーンのブロックごとに話し合って

黒沢「『SHARING』は時制として3.11のそのときのことを描いていて、こちらでは過去だという前提で描かれているわけですけども。主役のふたりもあの日何してたとか、離人症だったとか過去について語りますね。途中で若い男性も過去について語っています。過去は映像としては1回も出てこないんですけれども。映画表現で過去をどうするのかはなかなか問題なんですが、もちろん回想シーンを入れることは可能ですけども果たしてそれでいいのか。今回は、過去がさまざまに語られるという形式です」

篠崎「黒沢さんもそうだし、万田(万田邦敏)さんや青山真治もそうですが、ぼくらはあんまり回想シーンを撮らないですよね」

黒沢「やらなくはないんですが覚悟がいる。」

篠崎「過去はどこかで言葉に頼らざるを得ない。この映画は回想シーンを入れるのは考えていなくて、過去を語っているのは現在です」(つづく 

 

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