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鎌田敏夫 × 中村雅俊 トークショー “脚本で振り返る「平成」という時代” レポート (2)

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【バブルと崩壊の時代 (2)】

鎌田「日本の経済ドラマって、主人公が組織にぶつかって負けることで、自分の潔白さを証明するみたいな。

 ぼくは引っかかってて、アメリカのドラマだったら最後に勝つんですよ。アメリカ人は、勝たないと承知しないところがある。『ローマの休日』(1953)は日本ですごく当たったんですけど、アメリカではあまり当たらなかった。最後にお姫さまを連れて逃げないから。それが日本ではすごくいいんだけど、アメリカでは何でハッピーエンドにならないんだと。

 (『バブル』〈2001〉では)そんなことを考えて、お兄ちゃんが何十億という金を貯めてホテルつくれないかって経済に詳しい人に訊いたら、この時代なら大丈夫ですって言われてやった記憶があります。

 ゴルフ場がいっぱいできたからくりとか、教えていただいてつくりました」 

ローマの休日(字幕版)

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 バブル崩壊のころに、中村雅俊氏は映画『夜逃げ屋本舗』(1992)やそのテレビ版(1999)に主演した。

 

中村「当時は映画が先にあって、3本やって。何年か経ってテレビをやりました。ドラマをやりながら考えるところがあって、夜逃げという行為を助けるというのはどういうことなんだろう。正しい行動なのか、自分では判断できない。夜逃げは世の中の責任でなく、最終的には自分の責任で。その逃げるのを補助する。どうしようもない状態からある場所へ連れていって、新しい環境を提供する。そこには束縛もない。いろいろ考えると、自己破産とかあまりいい手段じゃないんじゃないかとか。あのバブルの崩壊時代は…。夜逃げ屋本舗なんて職業が存在するのかと思ったら、関西にちゃんとあったりして。すごく考えさせられる作品でした」

鎌田「ぼく経済学部だったんで、バブルってのは資本主義にはつきものです。ないと経済が成り立っていかない。また必ず起きると思います」

夜逃げ屋本舗

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大夜逃~夜逃げ屋本舗3~

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東日本大震災

中村「(2011年)3月11日に地震が起きたんですけど、仕事をしていて行けたのが4月で時間が経ってたんですけど。故郷は宮城県の女川ってところで、車で行って、岩場を登って、道が開けるんです。山のてっぺんに登ったとき、がれきだらけで壊滅的でした。戦争経験はないんですけど、空襲を受けたような。自分が18年間育った家も、どこにあるか判らない。見たことのない景色で、ショックでした。いろんな話を聞くと、すべてが悲劇です。家とか道路、建築物は復元もできるけど、精神的な面は根が深い。メンタル的なケアはほど遠いなあと行く度に思います。

 鎌田先生も毎年いっしょに、女川に行ってくれてるんですけど。お土産買ったりレストラン行って食べたりするだけなんですけど。

 被災地は、復興のスピードなどにも格差がある。女川はその中では活気があって、若者もいい歳の人も頑張っています」

鎌田「『われら青春』(1974)の生徒さんが集まって、慰問に行ってるんです。あのとき10代でもう還暦、いまだに集まって行ってる。これが雅俊のキャラクターなんです」

中村「自分はどう生きるかというメンタル的なバックボーン、生き方を持ってる人が震災後は増えましたし、一日一日の意味合いをわきまえてる人は被災地には多いと思います。悲劇があると生きる上でのバックボーンが必要になってくる」

鎌田「女川行ったときに、家の屋根に乗って流された本人がいらしたんですよ。奥さんが見えていても流されて、悲愴な顔したら奥さん心配するからにこにこして、笑顔でそのまま沖まで流された。その話はぼくにとって、津波のリアルな話でした」

 

【『MAGI 天正遣欧少年使節』】

 鎌田敏夫氏は『MAGI 天正遣欧少年使節』(2019)にてネットドラマに挑戦した。

 

鎌田「『世界遺産』をやってたTBSの会社からやってくれないかと来たんですが。自慢したいんだけど、アメリカのAmazonの制作会社の人が日本でいちばん偉い脚本家にしてくれと言ったらしいんですよ。どういう英語を使ったか判らないんだけど(笑)。そのとき嬉しかったんだけど、そのふたりの人はセクハラでいなくなってしまいました(一同笑)。「Newsweek」に、何をしたか写真つきで出て。続編もやろうって言ってたんですが、どうなるか。

 ロケはスペインです。イタリアは高いらしくて、アメリカ映画はよくスペインでやっている。

 人が命かけて守らなきゃいけないのは何かというのがテーマです。それがキリストだったり、プライドだったり、別のものだったり。今年の1月から配信になったんで、10本全部見られます」

 

 鎌田氏は別の作品にも取り組んでいるという。

 

鎌田「日本人の死んだ人の見送り方に最近すごく興味があって、柳田國男の『遠野物語』とかにあるんですが、独特で日本にしかない。ラフカディオ・ハーンもよく見て書いていて、お盆の手つきは迎えた霊を返すとか、そこまで見てくれている人がいる。どういうふうにやろうか、いちばん苦労しているところで。きゃりーぱみゅぱみゅのコーディネーターの方が、ファッションをやってくれています。まだこれからなんですけども、それで苦労していて振り返る余裕がない(笑)」

 

【今後について】

 最後に今後の展望について語られた。

 

鎌田「いまやってるのが、先週やっと目途がつきかけてて。ぼくのやってることがプロデューサーに面白いって言ってくれてるところまで来てるんで。何か話すと溶けちゃう(笑)。いままでやったことないことを彼(中村氏)とやりたいですね」

中村「いままででない、いい人じゃない感じをやりたいですね。そろそろ大丈夫じゃないですか。メリハリあったほうが。ドラマってのは、悪い人が話をつくっていくんですよ。主役は受け芝居というか、リアクションしかしてない。刑事ものでは、人殺しのほうが役者としては愉しい。46年間やってて、そういう経験はしていない。そっちへ行きたいってこともないですが(笑)、たまにはいいかなと」 

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