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野木亜紀子 × 磯山晶 トークショー レポート・『空飛ぶ広報室』『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』(1)

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 昨2016年に大ヒットしたテレビ『逃げるは恥だが役に立つ』。5月に早稲田大学小野記念講堂にて、『逃げ恥』の脚本・野木亜紀子磯山晶プロデューサーとのトークショーが行われた(予約は20分で埋まったという)。司会は岡室美奈子早大演劇博物館館長が務める。

 演劇博物館では「大テレビドラマ展」が開催中で、野木・磯山両氏はまず展示をご覧になったという(以下のレポはメモと怪しい記憶頼りですので、実際と異なる言い回しや整理してしまっている部分もございます)。

 

磯山「(テレビドラマ展で)ブラウン管のテレビを久しぶりに見ました。いまはカメラの性能がよすぎて、セットの奥まで見える。このころはよかったです」

野木「『岸辺のアルバム』(1977)のポスターがあんなに刺激的だったとはちょっとびっくり」

 

【『空飛ぶ広報室』『重版出来!』】

 岡室氏が「おふたりのなれそめは?」と水を向ける。

 

磯山「おつき合いは、『空飛ぶ広報室』(2013)という日曜劇場の作品でごいっしょしてからで。有川浩さんの原作で、震災を描くのにいろいろあったし、航空自衛隊が舞台で扱うのにいろいろあって、想い出深くて。信頼できるパートナーとして今日に至ると」

野木「結婚式みたい(笑)。視聴者時代に磯山 × クドカン宮藤官九郎)コンビは見ていて。『空飛ぶ広報室』のときにプロデューサーが磯山さんだったので、えっあの磯山プロデューサーかと小躍りして。それがいまは普通に話してます」

磯山「ダメだしされます」

野木「磯山さんもするじゃないですか(笑)」

 

 『空飛ぶ広報室』と『重版出来』(2016)、『逃げ恥』の野木脚本の3本には那須田淳プロデューサーが携わっている。東日本大震災の発生直後と3か月後(6月)のシーンがある。

 

磯山「3本とも那須田さんという人が、これやろうと」

野木「『空飛ぶ広報室』はお仕事ドラマで、お仕事プラス恋愛。最終話のひとつ前が震災で、最後はその2年後で展開するんですけど、震災をちゃんとやろうと。劇中に震災自体の映像は使えない。悲惨な映像であおるのではなく、いまもですけど仮設住宅があって、でも都会はいろんなことをあっという間に忘れてしまう。3か月でも東北と東京とで時間の流れがずれているというのがやりたかったところで。

 原作はこれから単行本という段で震災が起こってしまって、出版にあたって最後の章に震災後をつけ加えたということです」

磯山自衛隊が有事になると行かなきゃいけない。領空侵犯とか。有事になったら(撮影に)協力してる場合じゃない。国民として判りますけど。戦闘機をお貸しいただけると言っても、本当にその日にあるか判らない。震災何周年とかなら成立するけど、恋愛プラスお仕事ドラマの中でお前らそれできるのって圧があって、重かったですけど手応えもあって、見直すとちょっと感動してしまう」

野木「泣きながら書いてました(笑)」

磯山「ロケ先でも実際起こってることとつくってるものとのリンクをヴィヴィッドに感じました」

 

 主演は新垣結衣綾野剛

 

磯山「綾野くんが“2秒ください”って言ってキスする。こんなはずかしいの大丈夫?って思ったけど、そこがいいと言われて。すごくうまいなと。照れがちょうどいい」

野木「(岡室館長に)綾野さんがお好き?(一同笑)

 基本は那須田さんがガッキーファンで、脳内で常にガッキーで次は何やろうと。新垣さんも的確に読んで、お芝居してくださって。『空飛ぶ』は『逃げ恥』のガッキーより大人っぽいですね。役によって本当に…」 

空飛ぶ広報室 DVD-BOX

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 野木氏と新垣氏は、『掟上今日子の事件簿』(2015)でもつづいて組んでいる。

 

野木「『掟上』は日本テレビで違うところからお話いただきました。偶然もあって、いろんなめぐり合わせで、ガッキー主演作をひとり占めして申しわけない」

 

 つづいて野木氏は『重版出来!』の脚本を担当。磯山氏は編成とクレジットされている(『逃げ恥』も同様)。

 

野木「磯山さんがやるということで引き受けたのですが、ある日電話がかかってきて“大変、私異動になった”と。編成で出世なんですけど、えっ聞いてないよ、それは困ると。とりあえず本打ちには最後まで出てくださるということで。結局、磯山さんの名前(のクレジット)は1話と最終話くらいですけど」

磯山「頑張りました、私、いろいろ(笑)」

野木「毎回主役が違う話で。2話は原作も泣けるところで、(演出の)土井(土井裕泰)さんもお上手で」

磯山「私はキャスティングと台本打ち合わせを…。キャスティングは頑張りました。原作のイメージもあるし、そんなに苦労しなかったですね」

野木「やってみるとぴったりだと思いましたけど、編集長などはビジュアル的に違う。でもみなさんお上手なので、だんだんそう見えてくる。ドラマだとひとりひとりの話があるので、オダギリ(オダギリジョー)さんは原作だとあの役はミステリアスだけど、ドラマだとクールだけど走らせたり、変えてますね」

磯山「オダギリさんの五百旗頭さんに“大好きだ”と言わせようとか」

野木「原作に熱があると思うので、それをいかに盛り上げるか。ものづくりの話なので、実際に関わってる人たちをリスペクトしていかないといけない。

 苦労は毎回…。準備が大変で、マンガ原稿を描いてもらわなきゃいけなくて、キャスティングも大変で準備が1年以上…」

磯山「同じカット(マンガの絵)を色を変えて何度も。有名な方に描いていただいているので、増やしていただくわけには…」

野木「ほぼ完全に当て書きですね。『重版出来!』では最上もがちゃん。ベストキャスティングで、磯山さんが言ってて。撮り出す1年前に最上もがちゃんだと、ググったら、ああそうか。俳優さんじゃないので、お芝居をしたことがない。いかに(台詞の)センテンスを短くするとか考えて。でも想像以上に頑張ってくださって。

 後半になると、オリジナル展開が増えてくる。原作では校閲さんとか雑誌の付録を設計する人とかひとつひとつの職業に寄っていくので、ドラマではそこに寄っていけない。「バイブス」編集部の中でつくっていこうと」(つづく) 

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